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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二七八話、夜明け前の戦い


 ムンドゥス帝国紅蓮艦隊から指揮をするカサルティリオ総参謀長は、第6戦闘群に敵海氷飛行場の攻撃を命令した。

 さらにサイパンに第5戦闘群、グアムを第8戦闘群で砲撃するように命じた。


 紅蓮艦隊の司令長官であるプレボス・メラン中将は、カサルティリオの行き当たりばったり感丸出しの指揮に、大いに不満を抱いた。


 目的の地球艦隊がいないのだから、さっさと『ウルブス・ムンドゥス』のもとまで戻ればいいのに、宛が外れたのがお気に召さないのか、ここでひと暴れするつもりらしい。


 ここに留まれば、補給を終えた敵艦隊が戻ってくるのに違いない。予定ではないが、予想はできる。

 そしてそうなったところで、やってきた地球艦隊を叩けばいいとカサルティリオは考えているようだった。


 現状、紅蓮艦隊の他、本営艦隊の戦闘群が三つ随伴しており、これだけで地球の残存艦隊を数で上回っていると本気で考えていた。

 確かに、数の差が戦力差であるというのであれば、ムンドゥス帝国側に負ける要素はない。カサルティリオの言い分ももっともらしく聞こえるが、相手は地球艦隊。数の差などひっくり返してきた歴戦の軍隊だ。


 ――これは痛い目に遭うぞ……。


 メラン中将は思ったが、改めてカサルティリオに言うことはなかった。カサルティリオは総参謀長、メランは総司令部付きとはいえ一個艦隊の指揮官だ。どちらが上かなどわかりきっている。

 そしてメランの予想は、ある程度現実のものとなる。海氷飛行場やサイパン、グアムの飛行場へ動いた本営艦隊の戦闘群は、地球軍の反撃を受けたのである。


 特殊潜航艇、乙標的こと『電龍』のシールド貫通魚雷攻撃が、対象に近づくムンドゥス帝国艦を攻撃。搭載魚雷を発射した後、電龍自体も無人誘導魚雷として突撃した。


 最初の雷撃で、警戒の水雷戦隊が次々に血祭りにあげられた後、大型誘導魚雷となった電龍が、戦艦や重巡洋艦に突撃し、船腹に大穴を開けた。

 5万トン級のオリクトⅢ級戦艦でさえも、一撃で船脚が止まり、大破。最悪、一気に海に引きずり込まれて沈没した。


 相手は艦隊ではなく、潜水艦や小型潜航艇だったにもかかわらず、想定外の被害を受けた。

 さらに地球艦隊側は、マリアナ航空要塞を構築するにあたり、海中にも仕掛けを施していた。


 マダガスカル島の防衛にムンドゥス帝国が仕掛けた海中魚雷発射管オクトパス。それの鹵獲回収品を、飛行場への艦砲射撃圏内に複数設置していたのである。

 これらはマリアナ方面防衛隊の電龍の迎撃を抜けてさらに距離を詰めてきたムンドゥス帝国艦隊に襲いかかった。


 海中より、艦底部へ突き上げてくる魚雷によって、またも大型艦を中心に被害が出る。必殺の艦砲射撃圏内に飛び込むこと、これすなわち雷撃の必中範囲。誘導される魚雷を躱すこともままならず、戦艦、大型巡洋艦が砲撃範囲の手前で足が止まってしまう。


 さらにマリアナ航空要塞の防衛用に設置された対艦誘導弾や、無人突撃機『桜花』が発進。敵艦隊に次々に突撃した。

 カサルティリオ総参謀長は軽く見ていたマリアナ方面の防衛網だが、それは彼女が想定していたより遥かに強固だった。


 むしろ、マリアナ諸島で補給していたのは、こちらの艦隊を誘い込む罠だったのではないか――メラン中将などは、それを疑うほどであった。



   ・  ・  ・



 間もなく夜が明ける。マリアナ諸島を離れ、トラック諸島東部に差し掛かる『ウルブス・ムンドゥス』とその護衛の本営艦隊。


 その位置、配置は、地球艦隊と支援の哨戒空母戦隊の偵察機により、ほぼ把握されていた。

 主力を離れて、襲撃をかけるべく移動していた第五艦隊にも、その敵情は知らされている。


 旗艦『大和』。神明 龍造少将は海図台の上の彼我の艦隊配置を見下ろしていた。樋端 久利雄首席参謀は告げた。


「敵は、マリアナ諸島の我が方に対して、先手を打って移動をしました」

「考えることは同じということだ」


 日が登ったところで始まる航空戦。その優位を得るために、相手の航空戦力の母艦を叩く。


「昨日の艦隊戦以上に、今日は航空戦力が戦いの鍵を握っている」


 地球軍としては、比較的残っている空母とその艦載機を主力に据える。敵にはない基地航空隊と共同し、残存する敵艦隊を痛打。残っている水上打撃部隊でトドメを刺す。


 当然、ムンドゥス帝国軍も、そんな地球軍の思い通りには進ませないと、補給中の艦隊を襲撃し、可能ならば基地航空隊を潰しておこうとする。

 そして表面上廃墟となった『ウルブス・ムンドゥス』の護衛についている艦隊のおよそ半分が、マリアナ諸島へ襲撃をかけた。

 第五艦隊としては、敵が動く前に仕掛けられればよかったのだが――


「それでもまだ半分は残っています」


 神 重徳参謀長はニヤリとした。


「しかも敵は夜戦のために戦艦、巡洋艦を動員する一方で、空母は置いていった。我々としては、これらを叩ければいいわけですから、やることは変わりません」

「そうだ。だが、敵もこちらが襲撃を仕掛けてきたとみれば、空母をマリアナの艦隊と合流させるべく転移退避するだろう」

「直に日が登ります」


 樋端は淡々と告げた。


「そろそろ艦載機も使えるでしょうから。……むしろ、早く合流したくてウズウズしているかもしれません」

「飛行甲板に戦闘機と爆撃機を並べて」

「はい」


 転移後、即時展開できるように。


「手順としましては、真っ先に転移ゲート艦を叩き、間髪入れず、空母を叩く」


 敵に転移退避をさせず、飛行甲板に可燃物が載った状態のところに一撃を叩き込んで、空母を火だるまにしてしまおうというのである。

 言うは易く行うは難し。敵の規模は大きく、対遮蔽対策をされている中、そうそう都合よく敵艦隊の中央にいるゲート艦を叩けるか、という問題もある。


「最初から全部を叩けるとは思っていない」


 だがら、やれるところからやって、極力敵を減らしていく。そう考えれば、幾分か重圧は軽くなるのである。

 第五艦隊は、攻撃位置につくのであった。

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