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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二七四話、逆襲のカサルティリオ


 ムンドゥス帝国軍総司令部は、夜のうちに戦力の掌握が済ませた。

 カサルティリオ総参謀長は、不満げな表情を崩さなかった。我らが皇帝座乗艦である『ウルブス・ムンドゥス』を大きく傷つけられた。栄華を誇る都市が消し炭に変わってしまったのだ。


 これはあってはならないことだった。

 しかし現実に起きてしまった。地球人は皇帝の町を破壊したのだ。ただちに報復しなければならない。


 皇帝のものを傷つけた罪は、万死に値する。そうカサルティリオの心の奥底が囁くのである。

 彼女は司令部を離れ、直接指揮を執るべく、司令部直属である紅蓮艦隊に移乗した。


「こんなところにいらしてよろしかったのですか、総参謀長閣下?」


 紅蓮艦隊司令長官、プレボス・メラン中将は皮肉げな微笑を浮かべた。端正な顔立ちの若者、貴族特有の不敵さが滲み出る。

 普段は冷静さの塊と評されるカサルティリオは、しかし苛立ちを露わにしていた。


「状況が状況である。許しは得ている」

「そうですか。……『ウルブス・ムンドゥス』の方はどうなんですか?」

「皇帝陛下は健在である」


 カサルティリオはきっぱりと告げた。


「『ウルブス・ムンドゥス』も表層はやられたが、所詮はそこまでだ。大事はない」

「一度引くというのも手ではありませんか?」


 メラン中将は、きっぱりと言った。


「本営艦隊も三割を失ったのでしょう? さらに皇帝親衛軍も、ササ大将、テシス大将の両名を失ったとか……」

「皇帝旗艦に撤退はない」


 カサルティリオは鉄面皮さながら淡々と告げた。


「あれが前線に出るということはそういうことなのだ。わかるな?」

「そうですか」


 どこか他人事のように振る舞うメラン。カサルティリオは鼻で笑う。


「拗ねるな、メラン。貴様が優秀であればこそ、私はここにきた」

「指揮権は貴女にあるのでしょう?」

「総司令部が移乗してきたと思えばよい。艦隊指揮は貴様の領分だ。何も代わりはしない」

「それは結構」


 メランは背筋を伸ばした。


「それで貴女がここに来られたということは、我が艦隊を『ウルブス・ムンドゥス』の護衛に貼りつけるというつもりはないのでしょう?」

「無論だ。我々は、これよりマリアナ諸島に電撃的に進撃し、地球艦隊残党を撃滅する!」


 カサルティリオは力強く言い切った。メランはわずかに目を細め、彼の参謀長であるミィ・ルナサ少将は驚きに目を見開いた。


「敵は一日戦い、今は補給の真っ最中だ」


 偵察機の情報で、地球艦隊がマリアナ諸島に後退し、補給と整備を受けているのが確認された。


「紫光艦隊は、海氷飛行場を攻撃したが、おそらく半分も沈めていないだろう。明日――正確には今日、朝日が昇ると同時に、再度、ウルブス・ムンドゥスへ攻撃を仕掛けてくると予想される」


 カサルティリオは冷静であった。


「わざわざそれを待つ必要はない。我が軍は、補給中の敵を叩くのだ」

「お言葉ですが、総参謀長。敵も我が方の襲撃を警戒しているのではありませんか?」

「しているだろう。当然だ」


 当たり前のことを言うなとばかりに、カサルティリオは鼻をならす。


「だがそれでも、補給しなければ敵は戦えない。昨日一日の戦いで連中も砲弾を最後の一発まで絞り出した。わかっていても補給せねばならないのだ」


 地球人は警戒しているだろうが、そこを勢いで押し通る。

 確かに昨日の激闘を考えれば、補給にかかる時間も相当なものだろう。しかし朝に再攻勢に出ようというのであれば、可能な限りの補給を行おうとしようと必死になってやっているに違いない。


 つまり補給にかかりっきりで、警戒部隊さえ突破してしまえば、敵が反撃態勢を整える余裕もなく、大崩れになる、と。

 だが果たしてそう上手くいくのか――メランは不安をいだくのである。何故、そう感じたのかと言えば、すでに紫光艦隊が夜襲を仕掛けたからだ。

 夜間の奇襲があった直後だ。警戒しているのは当然だが、実際に攻め込まれた場合の具体的な防御策を講じているのではないか?


「何か思うところがあるという顔をしているな」


 カサルティリオは、じっとメランを観察していた。メランは苦笑する。


「顔にでていましたか?」

「貴様はわかるやすいからな。言ってみろ」

「突入するのは、我が艦隊だけですか?」


 紅蓮艦隊は、航空戦艦16、戦艦15、大型空母15、重巡洋艦20、軽巡洋艦30、駆逐艦60で構成される。他に潜水艦10隻があるが、これは偵察ユニットと、転移ゲート機能のある特務艦を兼ねている。


「先頭は我々だが、本営艦隊も後に続く」

「どれくらいですか?」


 投入戦力によっては、単なる奇襲ではなく、そのまま本格的な戦闘になるのではないか。


「まずは戦闘第5群――」


 本営艦隊には8つの戦闘群がある。そのうち、北方の守りについていた第4戦闘群は海氷島の体当たりで半壊。地球艦隊の一点突破の矢面に立った第3戦闘群、そしてオクルス・ムンドゥス中将の第7戦闘群は壊滅した。


 敵無人艦隊が突っ込んできた第2戦闘群は、多少の被害はあれど、戦力としてはまだ残っている。

 ほぼ無傷で残っているのは、第1、第5、第6、第8戦闘群である。

 カサルティリオはニヤリとした。


「後は可能な限り全て、だ」

「なるほど」


 これは奇襲では終わらないとメランは確信した。夜が明ける前に、本格的な決戦を始めるつもりなのだ、総参謀長は。

 地球人の航空戦力が本格的に稼働する前に、全てに決着をつけるのだ。

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