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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二七三話、二日目に備えて


 この日の夜戦は終了した。地球艦隊はマリアナ諸島まで転移で撤退。しかし夜が明ければ、残存するムンドゥス帝国軍を撃滅する。


 第五艦隊司令長官の神明 龍造少将は、連合艦隊旗艦『出雲』を訪れた。長官公室には、疲労の濃い小沢 治三郎連合艦隊司令長官が席に座っていた。

 草鹿 龍之介連合艦隊参謀長や司令部幕僚たちの姿はなかった。


「長官」

「座ってくれ。今日は……もう昨日なのか。よくやってくれた」

「いえ」


 第五艦隊は、敵潜水艦隊を叩き、紫星艦隊を撃滅。地球艦隊の後背を衝こうとした敵主力級艦隊を壊滅させ、友軍の都市戦艦突入の邪魔する要素を叩いた。遊撃部隊として主力を援護する意味において、その任を十二分にこなしたと言える。


「さっきまで、ハルゼー大将と会談をしていたのだがな」


 小沢は、疲れたように眉間を指で押さえた。


「地球艦隊は夜明けと共に、都市戦艦への上陸作戦を敢行。護衛に張りついている敵艦隊を撃滅する。第五艦隊にもこれに加わってもらう」

「はっ!」


 神明は頷いた。小沢は問うた。


「実際、どうだ? 第五艦隊は?」

「重巡以上はほぼ半分に減りました」


 神明は答えた。

 戦艦級は18隻から10隻に。大型巡洋艦は8隻から3隻、重巡洋艦は8隻から5隻に減っている。


「空母、水上機母艦、潜水艦はほぼ無傷で残っています。軽巡、駆逐艦は3割減といったところです」

「戦艦と大巡の減りが気になるが、割と残っているほうか」


 小沢は嘆息した。連合艦隊を始め、地球艦隊の残存戦力が厳しいものであることを暗に物語る。


「第一艦隊は半壊。第二艦隊とおれの第三艦隊は残っているから今日の主力といったところになるだろう。第四艦隊はほぼ壊滅。……佐々山も戦死した」

「はい。聞いております」


 魔技研では、頼れる先輩であった。率先して動き、皆をよく引っ張っていた。


「しかし、奴の犠牲も無駄ではあるまい。懸念材料だった皇帝親衛軍の大戦艦を第九艦隊と共同で撃沈せしめた。今日の戦いにおける不安要素が一つ減ったことは間違いない」


 小沢は目を伏せた。


「都市戦艦は焼き払ったが、敵は相変わらずこちらと話し合う気はないようだ」


 休戦や交渉の申し合わせがない時点で、まだムンドゥス皇帝は生きていて、残存勢力を以て徹底抗戦の構えかもしれない。


「我々は、異世界人の帝国にトドメを刺さねばならない。昨日の戦いで戦死した将兵らの犠牲を、本当の意味で無駄にしないためにも」


 アメリカ、イギリス、ドイツの各艦隊も戦力は半減しているが、あと一歩と思えばこそ、ここで消極的な案――つまり撤退を口にする者はいなかったという。地球軍は、艦隊、基地航空隊、そして陸軍を総動員して、今日こそこの戦争に終止符を打つ。


「こちらも苦しいが、向こうも苦しいだろう。敵の艦隊は相変わらず数が多いが、これを叩かないことには陸軍による都市戦艦制圧も上手くいかない。まさに正念場だ」


 敵の艦艇を沈めて、沈めて、沈めまくるのである。海空一体の猛攻で、異世界帝国艦隊を徹底的に叩く。


「夜が明けるまで、さほど時間はないだろうが、休めるうちに休んでおけ。補給要員はそうも言っていられないだろうが」


 おそらく徹夜で、艦隊の補給、損傷の修理などにかかっている。朝がくれば、地球軍の全戦力を以て進撃する。それに可能な限り、間に合わせるために後方支援要員の奮闘は続くのである。


 地球艦隊は、後方の護衛戦力を抜けば、戦艦81隻、空母216隻、大型巡洋艦24、重巡洋艦67、軽巡洋艦145、駆逐艦371。潜水艦214。これが地球艦隊として、敵本陣へ殴り込みに使える戦力である。


 損傷の大きいな艦については、魔核による強制再生を使うという算段で、この数である。やはり前線に突入しただけあって戦艦、重巡洋艦の損耗が激しい。軽巡洋艦や駆逐艦が割と残っている印象だが、これらは第二艦隊と第三艦隊がほぼ戦力を温存していたこともある。軽巡洋艦の四割は、防空巡洋艦であり、艦隊戦で殴り合う艦ではないのが、それを暗に語っている。


 対して空母の隻数はかなりの残っていた。これは壊滅した第四艦隊も含め、後方にいたために助かったという面が強い。前線に出た空母はきっちり沈められているので、間違いない。


 これに基地航空隊と加えて、敵艦隊を攻撃し、残りを艦隊で叩く――というのが地球艦隊の作戦となる。

 なお潜水艦214隻あるが、第五艦隊以外の米英独潜水艦部隊は、今のところ警戒待機しかしておらず、使いどころさえあれば大量投入もできなくはない。


「第三艦隊の護衛についている戦艦、重巡洋艦も前衛の第二艦隊に回す」


 小沢は告げた。


「前線の攻撃力の足しになればよいが」

「空母の護衛が減りますが、やむを得ないと」


 神明が確認すれば、小沢は頷いた。


「防空艦で凌ぐか、転移で逃げ回るさ。……そう考えるなら、防空巡洋艦も前線部隊の防空に出してしまってもいいのかもしれない」


 敵の空襲に対して、前衛艦隊は、敵艦隊との交戦もあるから退避は難しいが、空母部隊は転移退避を繰り返して、敵攻撃隊の空振りを誘う戦法に終始するのも悪くない。


「第五艦隊には、敵の空母戦力の排除を優先して行ってもらいたい。神出鬼没な戦い方は、得意だろう? 貴様は」

「はい。承知しました」


 敵航空戦力を減らせれば、基地航空隊、空母航空隊ともに、敵艦艇への攻撃に火力を集中できる。数で劣勢の地球艦隊が、敵本営艦隊を撃滅することも決して不可能ではないだろう。


「そうなると、第五艦隊は先行することになりそうですね」


 地球艦隊は夜明けと共に動く予定である。敵も日が昇れば、その航空戦力を活発に活用して地球艦隊を叩こうとするだろう。

 夜明け前に、どれだけ敵空母戦力を叩けるかが、今日の戦いの鍵となる。


「休めと言っておいて矛盾しているがな。まあ可能な限り、休め。そして素早く敵を叩け」


 小沢はそう締めくくった。

 結局、この連合艦隊司令長官も、ほとんど休む余裕はなかった。

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