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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二六八話、老兵の逆襲


 戦艦『扶桑』は、第九艦隊にあって、海氷飛行場群の防衛のために旗艦『薩摩』、『長門』『陸奥』に続く四番艦として戦場にあった。


 この中で、唯一、潜水可能戦艦である『扶桑』は、戦艦の中で一番主砲口径が小さいものの、海中砲撃が可能な艦として、半ば切り札として使われた。

 戦闘開始早々に潜水航行を行った『扶桑』は、海中からの砲撃で、味方を支援しつつ敵艦を攻撃した。


 そんな中、旗艦である『薩摩』が、ゴッドウィン・オースティン級戦艦の砲撃で戦闘・航行能力を喪失。司令長官の武本 権三郎中将は旗艦を『扶桑』に移し、転移室経由で移動。ゴッドウィン・オースティン級戦艦へ復讐するために追跡を開始した。


 武本にとっては、第七艦隊司令長官時代、『扶桑』に将旗を掲げ、セイロン島を拠点にインド洋の防衛を担っていただけに懐かしくもあった。

 35.6センチ連装砲六基十二門を搭載した日本海軍初の超弩級戦艦である『扶桑』は、開戦時にはすでに旧式戦艦であったが、魔技研の改修で潜水型戦艦となり、主砲が五基十門となったものの速度が向上し、現代戦にも対応できる艦となった。


 二千艦隊との戦いで、姉妹艦『山城』を失い、扶桑もまた大破しつつも生還。その後は、修理のあと、魔技研による改装を受けて、転移砲や水中対応砲塔への改造などグレードアップし今に至る。


 戦艦『扶桑』は、敵ゴッドウィン・オースティン級戦艦を追尾し、佐々山 久雄中将の第四艦隊を退けた直後、手傷を負ったかの超戦艦に追いついた。


「主砲全門、撃ち方始め!」


 味方艦隊や海氷飛行場群の仇討ちとばかりに、水中からの転移砲攻撃を行った。それらは超戦艦の艦底部――多少の装甲はあれど、それを上回る威力の砲弾がぶつかり貫通、爆発。大量の海水が艦内のバランスを著しく崩した。


 ゴッドウィン・オースティン級戦艦の1隻を攻撃した後、『扶桑』はもう1隻に素早く照準をつけ、発砲。それが紫光艦隊旗艦の『ゴッドウィン・オースティン』であった。佐々山艦隊の戦艦『かが』からの砲撃で艦尾側にすでに大きな痛手を受けていたところに、10発の35.6センチ砲弾が転移、突き刺さった。


 その砲弾がもたらした効果は劇的であった。機関部の内張りシールドは機関へのダメージを防いだが、それ以外の部分で爆発、艦内を滅茶苦茶にし、さらに衝撃で艦が持ち上げられた結果、艦体が真っ二つに折れたのだった。


 艦首側に50センチ四連装砲が三基、さらに弾薬庫を守る超重装甲で囲われていた結果、艦体の前半分に重量が偏りがあって、衝撃で境が揺らぎ、そして断裂させたのだ。

 艦首は無傷だった。しかし艦中央から艦尾にかけてが炎に包まれ、海へと引きずり込まれた。


 紫光艦隊旗艦『ゴッドウィン・オースティン』の司令塔内は内張りシールドの影響で爆発で内部が焼かれることはなかった。

 が、司令塔が千切れ飛び、中にいた者たちを定位置から落下させ、壁や天井に打ち付けて死傷した。仮面の司令長官、ササ大将もまた仮面が砕け、しかし頭を打ち付けた衝撃で息絶えていた。


 紫光艦隊の旗艦は艦首がなお浮いていたが、後部は沈み、吹っ飛んだ艦橋もまた逆さまになって海に落下した。


『敵戦艦、撃沈!』


 戦艦『扶桑』の艦橋での報告に、武本は目を伏せ、阿畑参謀長が口を開いた。


「やりましたな。『陸奥』と味方の仇は討てました」

「うむ。……しかし、皮肉なものだ」


 武本は呟くように言った。


「まさか旧式である『扶桑』が、敵の最強格の新鋭戦艦を仕留める日が来るとはな」

「確かに」


 阿畑は首をひねった。


「駆逐艦が戦艦を仕留めるような大物食いですな。とはいえ、この『扶桑』は何だかんだ武勲艦ですから」


 潜水戦艦に改装された初陣――九頭島防衛戦で、まだ試作とはいえ格上のプロトボロス級航空戦艦に超近接砲撃戦を仕掛け、これを仕留めている。


「イギリス流に言えば、ジャイアントキリングですな」


 巨人殺しのジャックが語源説と言われる、いわゆる番狂わせ、大物食い。


「こちらも戦艦を失ったが、敵も最大戦力を失った。これ以上の進撃は困難だろう――」


 武本が振り返った時、佐賀首席参謀がやってきた。


「長官、いま上からの情報なのですが……佐々山中将が戦死されました」

「な――」


 息が詰まる武本。阿畑が声をあげる。


「どういうことだ?」

「海氷飛行場群の救援に駆けつけて、敵超戦艦の砲撃で第四艦隊もろとも……。おそらく――」


 先の戦艦8隻か――海中にいたため、艦がいるのはわかっていたが、それが何だったかはわからなかった。イギリスかドイツの艦隊かと思っていたが、まさか第四艦隊の水上打撃部隊だったとは。


「……そうか」


 武本は軍帽を深く被り直した。また一人、自分より若い者が逝ってしまった。魔技研に関わり、転移実験で行方不明になるまで佐々山とは活発に意見を交わした仲であった。あと少しで戦争も終わるかもしれないというところで。


「……貴様は、わしらを導いてくれたんだな」


 戦艦『扶桑』の足では、高速のゴッドウィン・オースティン級に追いつけなかった。射撃可能な地点につけたのは、かの戦艦が艦尾にダメージを食らい、速度を大幅に落としたおかげだった。



  ・  ・  ・



「なに? 『ゴッドウィン・オースティン』が!?」


 紫光艦隊、第二戦艦戦隊指揮官であるゲラーン・サタナス中将は愕然とした。

 地球側海氷飛行場群の破壊のために夜間敵地突撃を行っていた紫光艦隊。その一隊を任されていたゲラーンだが、そこに司令長官戦死の知らせが届いた。


「冗談だろう……? あの『ゴッドウィン・オースティン』だぞ……」


 あの超戦艦4隻を沈められるほどの有力な戦力が、こんな後方にいるわけがない。ゲラーン隊も、相手は海防艦や護衛駆逐艦などの小型艦が主で、修理中の戦艦や巡洋艦を少し見かける程度であった。もちろん、これらはきっちり沈めている。


「閣下、次席の指揮官はあなたです。ご命令を」


 参謀長が作戦の継続を確認してくる。艦隊旗艦を失ったが――


「作戦は継続する!」


 敵海氷飛行場群の撃滅は、明日以降の戦いに影響する。ここまで踏み込んで、中途半端に逃しては、ここまでやってきた意味がなくなるのだ。

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