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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二六三話、第九艦隊、参戦す


 海氷飛行場群が、攻撃を受けている。その通報を受けた時、後方部隊での猟犬として待機していたのは特務護衛隊こと、日本海軍第九艦隊だった。


「まったくもう。悪い予感というものは当たるものじゃのう」


 武本 権三郎中将は戦艦『薩摩』の司令塔にいて、ぼやきを漏らした。


「こちとら予備の予備。本当にどうしようもなくなった時の戦力だというのに」

「そのどうしようもなくなった時が、今まさにそれでは?」


 長年の付き合いである阿畑参謀長は、苦笑まじりに告げた。


「都市戦艦への艦砲射撃の助っ人、数合わせを考えておったんだがな……」


 口調とは裏腹に武本の視線は鋭い。


「しかも選りに選って、紫の艦隊の片割れっぽいじゃないか」

「まあ、やるしかありませんな」


 阿畑は言った。


「後方戦力の護衛部隊という役割なんですから」

「……相手は選べんな」


 ボソリと呟く武本。老将は髭を撫でつけた。

 第九艦隊はの編成は以下の通り。



●第九艦隊:司令長官、武本 権三郎中将


 戦艦:「薩摩」「長門」「陸奥」「扶桑」

 空母:「真鶴」「松帆」

 軽巡洋艦:「飛鳥」「生田」「天満」「千種」「興津」「国場」

 駆逐艦:「竹」「梅」「桃」「松」「桑」「桐」「榧」「杉」

    :「楓」「欅」「柿」「樺」「槇」「樅」「樫」「楢」

 海防戦艦:「鷹巣」「亀岡」「山形」「伊那」「米沢」「佐久」

     :「上川」「横手」「三次」「大野」「上野」「富士」

     :「名寄」「高山」

 その他:「氷山空母」



「敵は複数の隊に分かれているようです。まずは手近なやつから片付けますか?」


 阿畑の言葉に、武本は渋い顔をする。


「選り好みできる立場ではない。見敵必戦、先手必勝。攻撃せよ」


 まず目についたのは海氷飛行場を溶かし、護衛のイギリスのハント型護衛駆逐艦を破壊する紫光艦隊の一部隊に突撃する。

『薩摩』『長門』『陸奥』の三戦艦が、41センチ連装砲を、敵戦艦に指向する。『扶桑』は潜水機能を活用し、すでに潜行している。


「……なんというか、クロンシュタット級とかいうソ連の巡洋戦艦に見えますな」

「わしには見えん」


 爆発の光が瞬いているが、夜間である。阿畑などはどこからか搭乗員用の暗視ゴーグルをはめていて、夜の戦場を見回していた。

 見張り員が叫ぶ。


「敵艦、こちらに気づいた模様、砲を向けてきます!」

「転移砲だと厄介だ。先手必勝。撃て」


 短く武本は命じた。

 そして戦艦『薩摩』の41センチ砲が瞬いた。転移砲である。

 第九艦隊は後方部隊である一方、魔技研の実験部隊であるため、転移砲身の換装はもちろん、その他様々な実験装備が盛り込まれていた。


 砲弾は、たちまち戦艦――ゲラーン部隊のマッキンリー級巡洋戦艦――クロンシュタット級モデル艦に突き刺さり、そして爆発した。


 基準排水量3万5000トン級でありながら、武装は50口径30.5センチ三連装砲三基九門という軽武装。当然、装甲もそれに準じたものであり、41センチ砲弾、それもほぼ最高初速の高威力状態の直撃には耐えられるはずがなかった。

 速度が33ノット発揮可能という巡洋艦キラーであるマッキンリー級は、その快速を活かすことなく、大爆発を起こして轟沈した。


「敵二番艦、取り舵! 変針します!」


 吹き飛んだ前の艦を避けようというのだろう。武本は淡々と命じる。


「狙い撃て」


 自艦『薩摩』、そして『長門』『陸奥』もまた主砲を撃った。反航戦だ。全八門が瞬き、三隻二十四発が、二番艦のマッキンリー級に吸い込まれた。結果は、一番艦と同じ運命を辿った。


「過剰攻撃では?」

「そうか? わしにはアレが戦艦っぽいことしかわからんからな」


 三連装砲三基九門の主砲配置の戦艦など、珍しくもない。アメリカ戦艦のスタンダードであるし、ドイツのシャルンホルスト級をはじめ、イタリアのリットリオ級も、ソ連のクロンシュタット、ソビエツキー・ソユーズも同様なのである。


「右舷方向より、発砲光!」


 見張り員の報告に、視線がそちらに向く。


「海氷飛行場がまた一つやられました! その向こうから大型戦艦4隻、出現! 速度、さ、35ノット――!」

「速いな」


 武本はボソリと呟いた。


「阿畑、見えるか?」

「大和型試案の型に似ています」

「わかるように説明せい。大和型は設計案がたくさんあるじゃろうが」

「軍令部案の超戦艦です。ネルソン級のような艦首に主砲三基を配置。20インチ四連装砲だったかと記憶しています。速度は確か計画35ノット」

「速度は合致するな」


 武本は頷いた。しかし、と阿畑は首を横に振る。


「ですが、あれは妄想の類いで、たとえ作っても想定スペックを出せるか怪しい代物ですよ」

「じゃが、目の前に出てきておる。異世界人の技術力でどうにかしたんじゃろ」


 向かってきている以上、次はあれが相手だ。20インチ――50.8センチ砲搭載戦艦ということは、装甲もおそらくそれに対応しているだろう。普通であれば、薩摩の16インチ、41センチ砲では太刀打ちできないが、眼前から直撃すれば500ミリを超える厚みの装甲板とて貫通できる可能性はある。

 夜戦における近距離砲戦が、時に格上の相手を撃破するという下克上を起こす要因とも言える。


「目標、敵大型戦艦!」


 主砲が旋回、滑らかな動きは、素早く狙いを敵戦艦――ゴッドウィン・オースティン級超戦艦に定める。


「敵艦発砲!」


 見張り員の声と共に、『薩摩』の艦首を光が突き抜けるのは同時だった。


「うああああぁっ!」


 阿畑が目の前をよぎった光に悲鳴を上げた。暗視ゴーグルが徒になったのだ。


「今のは、一体……?」


 武本が目を瞬かせる間に、艦長が叫んだ。


「長官! 艦首の砲が、な、なくなっております!」

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