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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二六一話、引き継ぎのタイミング


 日本海軍第一艦隊と米太平洋艦隊が、都市戦艦への艦砲射撃を行おうと突進をかける。

 それを支援する日本海軍第三艦隊の夜間攻撃隊。ムンドゥス帝国の夜間戦闘機部隊の迎撃を受けつつも、突撃する艦隊のための道を切り開く。


 第一艦隊にしろ、アメリカ艦隊にしろ、ここまでの戦いで蓄積した被害は大きい。片舷からのムンドゥス帝国本営艦隊艦艇の砲撃。転移砲を用いて返り討ちにしつつも、砲弾の消費、そして疲労は確実に蓄積していった。

 だが――


「すでに目の前だ!」


 ブル・ハルゼーは、旗艦『ニュージャージー』の司令塔から兵たちを叱咤する。


「ようやくここまで漕ぎ着けたんだ! 異世界野郎どもに真っ赤な砲弾の雨を振らせてやるぞ! 突撃だ!」


 艦隊の前に立ち塞がるレマルゴス級超大型戦艦が、日本軍の爆撃で爆発する。そこを超えれば、砲戦距離だ。

 しかしその後一息というところで、本営艦隊も容易く地球艦隊の接近を許さない。


「正面に転移ゲート!」

「what!?」


 中規模の魔法陣型転移ゲートが現れ、そこから本営艦隊の一部隊が出現する。全体の後方に位置していた東方の隊が、最後の防波堤とばかりに、地球艦隊の前に現れたのだ。


「畜生め。敵も必死ってことか――うおっ!?」


 ハルゼーは足元から来た揺れを何とか堪えた。ガーニー参謀長は不意打ちにすっころんでしまう。

 戦艦『ニュージャージー』に至近弾。その攻撃を放ってきたのは、米艦隊の進行方向左舷側にいる敵艦隊。


 砲戦が始まって以来、ずっと米海軍が相手をしている方向の敵。転移砲により多くの敵艦を沈め、また北から突撃した海氷島によって巻き添えを食らい、その戦力はかなり減少していた艦隊である。だが、北東部隊の増援が合流し、勢いを増してきた。


 しょせんは追加部隊なのだが、ここまでの連戦ですり減っている米艦隊にとっては、それでも充分な脅威と言える。

 ハルゼーは逡巡する。


 都市戦艦は目の前だが、さすがにここは一度態勢を整える必要があるか。敵艦隊に飛び込み、ワーム砲を回避した時から、太平洋艦隊に陣形や隊形などないも同然。今の突撃もてんでバラバラ。そのまま勢いで突撃している有様だ。

 もちろん、ハルゼーの司令部は、隊列こそ組んでいないが、どれだけの艦艇がついてきているかは確認している。


 だが敵は正面と左舷側の二方向から、激しい攻撃を仕掛けてきている。このままでなし崩し的な格好での戦い方でいいのか悩むのである。


「イギリス艦隊は? 後ろにいるのだろう?」


 側面防御の英国艦隊が前に出てくれば、再編の余裕もできるかもしれない。そう考えたハルゼーだったが――


「イギリス艦隊は、現在半数が補給中。残り半分が戦線を支えているとのことです。急行は無理ですが、いずれ後方から追いつくものと思われます」

「チッ、先に補給か……」


 ハルゼーは苦い顔をしているが、それをもって非難するつもりはない。

 アメリカ艦隊が補給に回った際に戦線を支える者が必要である。一足先に補給に回ったイギリス艦隊は、アメリカ艦隊の番になった時、最前線に突入してカバーすることになるのだ。


 だからこれは必要なことだ。日本人にしてもイギリス人にしても、ドイツ人にしてもずっと戦い続けている。決して楽をしてここまできたわけではないのだ。


「仕方ない。ここは敢えて前進だ!」


 正面の敵を潰せば、引き継いだイギリス艦隊が都市戦艦への艦砲射撃が仕掛けられるかもしれない。ジョンブルたちに美味しいところを譲ってやるのは癪だが、この戦いを勝つことが優先である。


「提督! 日本艦隊より通信。正面の敵艦隊に攻撃をかけるとのこと!」

「おう、さすがだ。こちらも攻撃に加わるぞ」


 日本軍第一艦隊も、アメリカ艦隊と同様、ずっと最前線を張っている。数が減っているのは、向こうも激戦を潜り抜けていてきたことの証明だ。消耗しているとはいえ、この二個艦隊で当たれば、正面の敵を踏み潰して、今度こそ都市戦艦を砲撃できる射程にまで踏み込める!



  ・  ・  ・



「補給を急げ! 前衛艦隊は、都市戦艦の手前で新たな敵艦隊に阻まれているとのことだ!」


 英国海軍、フィリップ・リンドン少将は部下たちを急がせた。

 第一海氷飛行場群と、それに隣接する補給船団で、イギリス艦隊の戦艦8、重巡洋艦9、軽巡洋艦11、駆逐艦15が補給と、必要な艦の応急修理作業が行われていた。


 突入する前衛艦隊の側面援護が任務だった英艦隊だが、現在のところ戦艦5、空母2、重巡洋艦6、軽巡洋艦5、駆逐艦20を失った。

 もっとも前線の米艦隊や日本艦隊に比べれば被害は少ないが、被弾、損傷した艦艇は少なくない。


 分散した艦隊は側面援護を続けているが、その分、前を行く艦隊を直接援護できる位置には辿り着いていない。だがこのまま前進すれば、後方と前衛の間が詰まり合流はできる。その時に、今補給を受けている艦隊が、前衛に加われば米艦隊の援護ができるだろう。


 こことは別にある第二海氷飛行場群では、同じようにドイツ艦隊が補給を受けており、こちらも間もなく戦線復帰の予定である。

 本来の援護部隊であった日本軍第四艦隊が、都市戦艦のワーム砲破壊のために前倒しで突撃したことで順序が狂ってしまったが、その分のカバーもしなければならない。


 聞けば、第四艦隊は水上打撃部隊の大半を失い、空母群主体の戦力が中心らしいので、これが本格的に戦闘に加わるのは、夜が明けてからとなるだろう。

 こちらの海氷飛行場群も、夜間攻撃隊はあまり多くないので、本格的な攻撃は朝を迎えてからとなる。つまり、夜の間、艦隊で戦線を支えねばならないのだ。


「どうだ? カーター中佐」


 リンドンが、幕僚に確認すれば戦線の情報を集めていた情報士官のジョン・カーターは答えた。


「主力艦隊の後方から追い上げていた艦隊は、日本軍が壊滅させたようです。いま援軍が必要なのは前線のようです」

「そうか。包囲の危機を脱したのは結構」


 補給完了次第、戦線復帰するイギリス艦隊だが、戦況によってはどこで戦うかが変わる。場合によっては、全艦隊が転移離脱して、仕切り直しというあまり考えたくない事態もあり得た。


「このまま前線に――」


 カーターがしゃべっている最中、遠くから爆発音のようなくぐもった音が聞こえた。周りの兵たちもドキリとして音の正体を探ろうとする。


「今のは何だ?」

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