第4話 幼なじみは心配症?
「ミレイちゃんは、あんたが寝ている間、毎日お見舞いに来てくれたんだよ。あんたも隅に置けないねぇ」
「ちょっと、おばさま……!」
ミレイの顔が、ばっと赤くなった。
「ミレイ、そうだったのか?」
「お、幼なじみとして、ナギのお見舞いに行くのは当然の義務なんだよ……!」
……どうやら、元の身体の持ち主は両親にも幼なじみにも愛されていたらしい。
「私だけじゃないよ。ルークだって、村の人たちだって、みんなナギが目を覚ますのを待ってたんだから」
「ルーク?」
「ナギ、覚えてないの? ルークが川に落ちて溺れていたのを助けようとして、ナギが川に飛び込んだんだよ」
そういえば、少しずつ戻ってきた記憶の中に、そんな光景があった気がする。
ルークは村の子どもだ。
自分が危険な目に遭うかもしれないのに、迷わず助けに行ったのか。
……元のナギは、ずいぶん勇敢なやつだったんだな。
ミレイは少し怒ったように、俺を見つめた。
「ナギは昔からそうなんだから。困っている人を見たら、すぐに助けようとするんだもん」
「……そうなのか?」
「そうだよ。だから、いつかこんなことになるんじゃないかって、ずっと心配してたんだから」
ミレイがまっすぐに俺を見つめていた。
潤んだ瞳に、ほんのりと赤くなった頬。
思わず、ドキッとしてしまった。
「そ、それはすまなかった……」
なんとか声を絞り出す。
ミレイは少しだけ表情を和らげると、照れくさそうに視線をそらした。
……なんだか、調子が狂うな。
その晩、俺はなかなか寝付けずにいた。
今日一日で起こったことを、頭の中で振り返る。
元のナギの記憶。
心配してくれた家族。
毎日お見舞いに来てくれた幼なじみ。
俺はまだ、この人たちとの距離感がよくわからない。
それに、この家はお世辞にも裕福とはいえないようだった。
「女神様も、意地悪をするなぁ……」
思わず、ため息が漏れる。
そういえば、リリアーヌ・ヴァレンシュタインを探さないといけないんだった。
名前からして、きっと貴族のお嬢様だろう。
こんな村で暮らしている俺が、どうやってそんな人に会えばいいんだ?
そもそも、会えたとして何をすればいいのかも、よくわかっていない。
「……先が思いやられるなぁ」
考えても答えは出そうにない。
明日からのことは、明日考えよう。
そう自分に言い聞かせているうちに、いつしか俺は深い眠りに落ちていた。




