貴様の手際(死傷処理の管理)については、老子(俺)も他の人間の口から二、三度耳にしているぞ。実によくやっている
「ほう、貴様のような死体回収の雑兵に、学問を授けた授業の先生がおったとはな。一体、その者の名は誰というのだ?」
「我が恩師の名は……、田豊にございます。先ほど大牢のなかに先生のお姿を拝見いたしましたが、先生はただただ『書生、国を誤る(口先だけの文人が国を滅ぼした)』と自らを激しく責め立て、主公の大業を最前線で補佐できなかった己の無知を、胸の内で深く深く懊悔(後悔)されておりました」
その一言が放たれた刹那、袁紹のあの傲慢に強張っていた顔面が、明らかに一変(驚きに変貌)した。
「……何だと。あの頑固者が、真にそのように申したというのか」
「はい。先生はそのように自省されるばかりか、私たち弟子(部下たち)に対しても、これからは死力を尽くして主公に服仕(忠誠を誓い)し、その令行禁止(軍律)を厳格に守り抜いて初めて、乱世の本物の英雄と呼び得るのだ、と涙を流して語り聞かせてくださいましたわ」
袁紹はそれを聞くや、その胸の内にある凄まじい虚栄心を完全に満たされ、満面に大喜(激しい歓喜)の色彩を爆発させた。
「ハハハ! まさかあの田豊が、獄中のなかにあって真の長進(成長)を遂げていようとはな!」彼は言い終えると、満足そうに私に向かって何度も首を縦に振った。「貴様の手際(死傷処理の管理)については、老子(俺)も他の人間の口から二、三度耳にしているぞ。実によくやっている」
そう言い捨てるや、彼はそれ以上私に対して一言の詮索も加えず、ただ鷹揚に手を一振りすると、その華貴な中軍の隊列を引き連れて、一途に前方向へと去っていった。
袁紹とのこの一場たる対話(緊迫の心理戦)を終えたのち、私は泥のついた軍服を払いながら、深く沈思した。
形勢のセーブデータが、今の一瞬で完全に書き換わった、と私は弾き出した。私は審配の邸宅へ向かうのを止め、老陳と顧墨を伴って、即座にあの薄暗い大牢(天牢)の内部へと引き返した。
再び牢内の最底層へと潜り込み、田豊の前に至ると、私は先ほど街道のうえで袁紹との間に交わされた会話の全体を、一文字も漏らさずに実直に彼へと語り聞かせた。
「先生。ここから数日の後、もしも中軍の側から何者かが先生の元を訪れ、その心境の如何を盤問(下調べ)しにやってきたならば……、先生はただ『長年の牢獄のせいで身体を壊し(身体不好)、これからは故郷へ戻って静かに老後を養いたい(回郷養老)』とだけ、虚弱な声で応じてください。その時が訪れたなら、この学生が、直々に大軍を率いて先生をこの地獄から正式にお迎えに上がりますわ」
田豊は私の言葉を、その鋭い一双の瞳に深い知性を宿らせたまま、一言一言を極めて真面目(真剣)に聞き入っていた。私の提示したこの完璧な生存の脱出ロジックを耳にしたのち、彼は長きにわたって沈吟し、静かに首を横に振ったが、最後にはついに、その頭を重々しく、深く縦に振って同意の黙契を交わしたのである。




