名將于禁
中央の戦場が天崩地裂(天崩れ地裂ける)の如く激しく揺れ動き、文丑が左翼で夏侯惇と血戦を繰り広げていたその時、私は三百人余りの部下を引き連れ、戦場で最も惨烈な絞肉機(肉挽き器)の周縁において、真の生死の劫殺(災厄)に直面していた。
戦争が勃発したその刹那、十万の大軍が激突する洪流は、あらゆる建制(組織)を一瞬にして粉砕した。大潰敗が起きたまさにその刻、戦闘力など一分も持たぬ私たちの回収隊は、何の予告もなく、精鋼の重鎧を身に纏った魏軍の騎兵の一隊に死物狂いで尾を噛み合わされた(追撃された)のである。その将旗の上に刻まれていたのは、氷のように冷徹な【于】の一文字――それこそは、曹操軍の中で最も軍律に厳格であり、最も容赦なく人を殺める名将、于禁の先鋒部隊であった。
「包囲せよ! 生かして帰すな、一人残らず叩き斬れ!」
于禁の麾下にある一人の凶悍な牙将(隊長)が、私たちの存在を看取(察知)した。刹那の間に重盾による合囲(包囲)が完成し、鋒利な長槍が風を切る鋭い音を立てて、狂ったように攢刺(一斉突き)を繰り出してくる。私はもとより功夫(武芸)など半分すら心得ておらず、前世の太平の世の中で養尊処優(不自由なく)に生きてきたこの身体は、この瞬間、ただ死への極限の恐怖だけを頼りにして、血水と残肢(千切れた手足)の転がる泥濘の中を連滾帯爬(這う這うの体)で逃げ惑うしかなかった。
「頭(お頭)! 伏せてくだせえ!」
鉄牛が怒吼をあげ、六十二斤の長鉄戟を狂ったように振り回し、私の心口(胸)へと突き出された二柄の鋼槍を死に物狂いで弾き飛ばした。私の顔面、そして全身には、四散して飛び散る滾る(たぎる)ような熱血がべっとりと付着し、衣服は砕石と灌木叢(低木林)に引き裂かれてボロ布のようになっていた。もし私たちが最初から戦場の最も外囲(外側)に位置しており、戦闘の密度がさほど大きくはなかったならば、そしてもし老陳がその危険に対する鋭い嗅覚を以て私を死体の山の底へと引き摺り込んで(隠れて)いなかったならば、私のこの命は、開戦の最初の半時(約一時間)の内に完全に消滅(破産)していたに違いなかった。
死者の山の底でどれほどの時間を隠れ潜んでいたかも分からぬ頃、頭頂から響いていた凄まじい殺戮の響きがようやく平息していった。私は満身に泥と血を浴びた姿のまま、這い上がってきた。




