名馬は袁公の中軍大幕へ
私はその堆積如山(山のごとく積み上がった)軍需物資の前に立ち、日頃は死体を弄りながらも、今や数千人の人間の生死を握るその両手を伸ばし、氷のように冷たい鎧の肌触りを静かに確かめていた。
曹操の恐怖の回収スピードの前にわずか一成の残渣を掠め取ったに過ぎなかったが、この一成の資産があれば、私の麾下にある百人余りの嫡系(腹心)、ひいては文丑の率いる七、八千の残兵の全体を、間もなく訪れる倉亭の大崩壊の前に、その歯に至るまで完璧に武装(防衛)させるには十分すぎるほどの軍資金であった。
しかしながら、にわか成金(暴発戸)というものは常に飢えた悪狼を呼び寄せるものであり、苦難にまみれた成金であればなおさらであった。
老陳や鉄牛たちが全身に汗を流しながら、その精良な銅甲や強弓を馬車に積み込み、西北の隅にある文丑の営区へと搬送していたその半路、トラブルは何の予告もなく、彼らの行く手を遮るようにして立ちはだかったのである。
「立ち止まれ! 誰の許しを得て、それらの物資を西北の隅へと運んでいるのだ?!」
尖鋭な呵斥(怒声)が一瞬にして車輪の軋む音を叩き潰した。私が頭を跳ね上げて見れば、あろうことか、そこにはかつて私を鞭打っていたあの犬仗人勢(権力を笠に着る)の旧小隊長、黄皮の姿があった。彼は知らぬ間に死体回収隊を脱退(離脱)しており、いまや丢盔棄甲(ボロボロに敗走する)の惨状が広がる軍営の中で、一際異彩を放つ華貴な錦の袍服を身に纏った、一人の中年参謀の傍らにへりくだって直立していた。
老陳が密かに周囲から情報を探り当て、私の耳元へ口を寄せて囁いた。あの腰をきつく据え、私たちをさながら奴隷でも見つめるかのような冷酷な眼光で蔑んでいる中年の男は、中軍の大幕に座す大謀士・郭図の甥であり、名を郭応という男であった。
この兵荒馬乱(戦火に追われる)の撤退の大潮のなかにあって、これら背景(後ろ盾)を持つ豪門の血族どもは、いかにして防衛線を組織するかなどというロジックにはただの一ミリも思考を割かず、ただ泥舟が沈む前に敗軍の中から富を毟り取ること(資産回収)だけに目を血走らせていた。
「これほど精良な魏軍の重鎧と名馬は、直ちに袁公の中軍大幕の前へと搬送し、主公(袁紹)の直許の下で分配(管理)させるべきものである!」その郭応と名乗る総管は、手にした馬鞭で私たちの独輪車を力任せに打ち据え、乾いた鋭い音を響かせると、その面に満面の貪欲な色彩を浮かべて冷笑した。「一介の賤しき回収隊の分際で、これほどの軍需物資を私蔵(隠匿)しようとは不届きな。すべて中軍へと押し戻せ! 一つでも数が足りなければ、お前たち雑兵どもの犬命で帳尻を合わせる(命を貰う)からな!」
黄皮はその傍らでさながらハバ犬の如くに調子を合わせ、挑発の眼光を私へとぶつけてきた。




