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三国破産清算人:官渡の泥濘から這い上がる、猛将文醜と戦場不良債権の処理記録  作者: 倦犬Kenken


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牢房の暗闇のなかに放置されている男の「頭脳」

私が彼の薬の交換を終え、まさに営帳(テント)を離れようとしたその刹那、彼の無骨な大きな手が突如として伸びてきた。どこから削り残してきたのかも分からぬ、一小袋の精米(白米)と一塊の干し肉を、いささか不器用な手つきで私の手の中へと押し込んできたのである。

「軍医が言っていたぞ。お前の施したあの細かな法(やり方)が、俺のこの七、八千の弟兄たちのなかから、少なくとも五百人もの重傷兵を鬼門関(死の淵)から引き戻してくれた、とな」文丑(ぶんしゅう)の声は沙啞(嗄れて)おり、その眼光の中には高傲(誇り)などなく、ただ素朴な感激と関切(労い)だけが宿っていた。「龍(りゅう)よ、お前自身もめっきり痩せたな。もっと食え。この営(陣営)の中にあって、飢えるような真似はするなよ」

文丑は高位の大将であったが、この官渡(かんと)の戦場において精米は極めて希少であり、肉にいたってはほぼ見かけることすら叶わない貴重品だった。私はその精米と肉乾(干し肉)を手に持ち、歴史の記録においてただの一筆で「魯莽(無鉄砲)な猛将」と片付けられていたこの男が、今まさに曝け出している真実の一面を見つめながら、胸の奥が僅かに一震(激しく揺れ動く)のを感じていた。前世の職場にあって、用済みになれば部下を切り捨て、口先だけで中身のない絵餅(ビジョン)を語るだけの虚偽に満ちた高層(上層部)を嫌というほど見届けてきた私にとって、文丑のこの何らの心機(計算)も含まぬ素朴さは、むしろ私に対して久しく忘れていた本物の踏実(安心感)を抱かせてくれたのだ。

「――将軍、手厚き御配慮、感謝いたします」私は干し肉と精米を受け取ると、文丑の視線を真っ向から受け止め、冷徹な声で静かに語りかけた。「最前線の斥候(スカウト)がもたらしたデータに拠れば、曹操(そうそう)はすでに大後方において暗中に兵を調達し、動かしております。それに対して袁本初(えんほんしょ)の上層部(経営陣)は、未だに内輪で権力闘争と利権の奪い合いを繰り返している始末だ。この『大会社(袁紹軍)』は、遅かれ早かれ曹操の放つ一撃の火光によって、一物も残さず灰燼に帰せしめられる(焼き尽くされる)ことになるでしょう。官渡ののちには、恐らくさらに倉亭(そうてい)の戦いが待ち受けています。私がここで一人でも多くの兵を救っておけば、その清算の刻が訪れたとき、私たちの手元に残される『原始股份(創業時の株式)』を一分でも多く防衛(確保)することに繋がるのです」

文丑には「会社」や「株式」という現代の単語の意味など理解できるはずもなかったが、「袁紹は必ず敗れる」という私の冷徹な結論だけは完全に聞き取っていた。彼は怒ることもなく、また反論を試みることもせず、ただ黙って大幕の外に広がる漆黒の夜闇を見つめ、声を沈めて私に言った。「龍よ。もしも本当にその日が訪れたなら……、この七、八千の弟兄たちの活路(生き残る道)は、すべてお前と俺のこの両肩の上に圧しかかってくることになるな」

「将軍」私は僅かに頭を縦に振った。「袁本初が優れた大老板(経営者)になれぬというのであれば、彼が自らの手で数百刀もの傷を負って自滅し、完全に破産(崩壊)するその日を待ち、私たちはこの身辺に集めた数千の人間を、自立门户(独立して割拠する)のための真の本銭(軍資金)へと変えるまでですわ」

私は薬箱を収め、営帳の帳を押し開けた。外から刺すような寒風が一気に吹き込んさり(吹き込み)、私は思わず数度激しく咳き込んだ。夜幕(夜の闇)の下に連綿と数十里にわたって広がりながらも、その実、すでに隠微たる絶望の死気を漂わせ始めている袁紹の大営を望み、私は自身の右手を力任せに、ぎゅっと握り締めずにはいられなかった。

私は、ある一人の男の存在を思い出していた。

まさに今日の傍晩(夕暮れ)、顧墨(こぼく)が後方の鄴城(ぎょうじょう)から送られてきたばかりの、最も目立たぬ隅に置かれていた秘密の糧草調達の名簿を整理(監査)していた際、一処の奇妙な名前に眼を留めたのだ。それは、袁紹の逆鱗に触れたがゆえに、現在は鄴城の天牢(大監獄)の最底層へと幽閉され、生死すら定かではない一人の傲骨たる文人の名であった。

前世における、倒産や破産清算の泥沼の中で幾度となく「核心資産(最も価値ある人材)」をディグり(発掘し)続けてきた私の経験が、冷徹に告げていた。

あのみんなから忘れ去られ、牢房の暗闇のなかに放置されている男の「頭脳」こそが、私たちが今まさに徐々に組織化(インフラ化)しつつあるこの独自の特務機関(清算中隊)にとって、未来において最も欠落している、天下へ向けて通天の号令を敷くための「最高の大印(印章)」になるに違いない、と。

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