OL時代 その2
初めて雑居ビル内にある、優ちゃんの作った会社、「司馬SSSカンパニー」のオフィスに行った時、愛子ちゃんは、びっくりしました。
ちなみに司馬というのは、優ちゃんの名字です。
なんと、そのオフィスには、優ちゃんだけではなく、あの良夫くんもいたからです。
そう、高校時代に愛子ちゃんが、手ひどく振った、あの良夫くんです。
良夫くんは大学時代、優ちゃんと一緒にサークル活動をしており、その縁で、この会社に入ったのでした。
愛子ちゃんと良夫くんの間に、気まずい空気が流れます。
「や、やあ・・・。久しぶり・・・」
「う・・・うん・・・」
そんな二人の様子を優ちゃんは、少し離れたデスクに座り、ニヤニヤ笑いながら見ていました。
愛子ちゃんは優ちゃんに、主に商品開発と、営業回りの仕事を任されました。
元々、優ちゃんは、愛子ちゃんのセンスの良さに目をつけており、特に若い女の子向けの商品開発に、それを生かしてもらいたいと思っていたのです。
愛子ちゃんは、優ちゃんの期待に応えて、色々な商品を作りました。
小学生や、中学生の女の子向けの、文房具やファンシーグッズなどです。
どれも低額商品で、しかもその利益の一部が、途上国の恵まれない子供達のために使われるので、正直あまり儲かりません。
でも愛子ちゃんは、営業で行ったお店で、自分の考えた商品が売られ、小さな女の子達が乏しいお小遣いの中から、それを買っていくのを見ると、何故かとても嬉しく、誇らしく感じるのでした。
そして、鉛筆や消しゴムもまともに買えない、貧しい国の女の子達の、日々の暮らしに思いを馳せました。
こうして愛子ちゃんは、優ちゃんの作った会社「司馬SSSカンパニー」で、一生懸命働いていたのですが、最初はお互い気まずかった良夫くんとも、徐々に打ち解けていきました。
営業担当の良夫くんは、愛子ちゃんと一緒にお店を廻る事も多く、彼の誠実な人柄に、愛子ちゃんは、次第に好意を抱くようになっていたのです。
高校時代は、見向きもしなかったのに、勝手なものですね。
彼のもっさりとした、全体的にクマを思わせる素朴な風貌も、今では好ましく思えました。
彼がまだ、自分の事を好きなんだと感じた事もあって、愛子ちゃんは、いつしか、良夫くんと結婚を前提として、付き合いたいと思うようになっていました。
そこで愛子ちゃんは、良夫くんに対して、積極的にアピールをし始めました。
一緒に歩いている時に、いきなり腕を絡めたり、二人で話している最中に、腰をくねらせたり、上目遣いで、じっと見つめたりしました。
優ちゃんは、そんな愛子ちゃんの様子を、呆れ顔で見ていました。
そして、会社の風紀が悪くなるのを心配して、とうとう愛子ちゃんの頭を、ペシリと、書類のバインダーではたきました。
「何やってんのよ!!この痴女っ!!」
さんざんな、言われようです。
しかし、こんなにも努力したのに、良夫くんは顔を赤くするばかりで、中々、愛子ちゃんの誘いには乗ってくれません。
怒った愛子ちゃんは、優ちゃんと二人で飲みに行った時、ビールジョッキを片手に、親友に不満をぶつけます。
「全くなんなの!?良夫くんはっ!わたしの事、好きなくせにっ!あの臆病者っ!!ホントに、チ○ポついてんのかっ!?」
優ちゃんは、焼き鳥を食べながら、なんて下品なんだろうと思いました。
そして、たぶん良夫くんが、恋愛に消極的なのは、昔、愛子ちゃんが手酷く振ったのが、トラウマになっているのだと考えました。
つまり、愛子ちゃんの、自業自得というわけです。
しかし、二人をひき会わせた以上、自分にも、ある程度の責任はあると優ちゃんは思い、結局、2人をくっつけるキューピッド役を、引き受ける事にしました。
もちろん、愛子ちゃんは大喜びです。
優ちゃんの優秀な頭脳が、高速回転を始めます。
ポクッ・・・
ポクッ・・・
ポクッ・・・
ポクッ・・・
チーン!!!
シーン3
優ちゃんの考えた作戦とは、結局、2人が素直にお互いの気持ちを打ち明けられる場所を、設ける事でした。
すでに、お互いに相手に好意を抱いているのはわかっているので、あとひと押しすれば、この恋愛はうまくいくはずです。
優ちゃんは、近場のレストランを予約して、愛子ちゃんと良夫くんを誘って、3人で食事をする事にしました。
そして、3人で一つのテーブルに座り、食事をしている最中に、優ちゃんは、いきなり良夫くんに言いました。
「ねぇ、良夫くん。愛子ってば、あなたの事好きなんだって。付き合ってあげたら?」
その言葉を聞いた、良夫くんと愛子ちゃんは、耳まで真っ赤になりました。
さらに優ちゃんは、今度は、愛子ちゃんに聞きました。
「愛子、良夫くんと付き合いたいのよね。結婚を前提として」
顔を真っ赤にした愛子ちゃんは、その言葉を耳にすると、両手で顔を覆い、激しく首を横に振って、いやいやをしました。
優ちゃんは、もう一度、愛子ちゃんに聞きました。
「昔の事は、水に流して欲しいのよね?」
愛子ちゃんは、両手で顔を覆ったまま、さらに激しく首を振り、いやいやをします。
優ちゃんは、ちょっとイラッとしながらも、再び、愛子ちゃんに聞きます。
「良夫くんと、結婚したいんでしょ?」
またまた、いやいやと、首を左右に振る愛子ちゃん。
さながら、風車の如しです。
何を、今更、カマトトぶってるんだ、このバカはと、優ちゃんは思いましたが、このままでは、ラチがあきません。
仕方なく優ちゃんは、今度は良夫くんの方へ、話を振ります。
「良夫くんは、どう?このバ・・・いや、愛子の事をどう思ってるの?」
その言葉を聞いた良夫くんは、顔を赤くしながらも、意を決して、愛子ちゃんに言いました。
「僕は、やっぱり君の事が好きだ。あらためて、僕と付き合って欲しい。結婚を前提として」
そしてー。
愛子ちゃんは、相変わらず両手で顔を隠しながらも、初めてコクリと頷きました。
こうして、色々あった2人ですが、ようやく互いの思惑は一致して、結婚を前提に、付き合う事になったのです。
それから暫くして、良夫くんは、愛子ちゃんに指輪を贈り、プロポーズをしました。
愛子ちゃんは、それを受け入れて、とうとう2人は、正式に結婚する事になったのでした。
優ちゃんも、その話を知らされると、すごく喜んで、お祝いに、2人のお給料を上げてくれました。
めでたし、めでたし・・・。
[続く]




