久々の依頼
帝国が戦争に参戦するらしいな。
東の国とも揉めているらしいな。
大陸はどうなっちまうんだろうな。
そうね、魔族も動き出しているものね。
戦争なんてしている場合じゃないのに。
アジミールでも魔物が活性化しているらしいわよ。
あらあら、大丈夫ですわ。
アジミールにはルミローネ達エルフの戦士がいますもの。
ルミローネ・・・何となく不安だが、他のエルフがしっかりしていた。
大丈夫だろう。きっと・・・・
早くエルフの国に行って、俺の秘密と魔族対策をしなければ。
帝国は野心むき出しだ。他国と連携するつもりはないらしい。
ミルガルド王国だけでは魔族は防げないからな。
魔族の思い通りにはさせん。
みんな、気合を入れて行くぞ!
おおー
先に来た男に続き、血だらけの男を抱えた者達が入って来た。
「誰か、早く治癒魔法を頼む」
数人の冒険者が駆け寄り、治癒魔法を施した。
傷が酷い。片足も失っている。
あれでは上級治癒魔法では無いと助からないだろう。
「さっきレイラが言っていた、討伐隊の方かしら。酷い怪我」
「そうみたいね。あの傷では、クルーシでも難しいだろうね」
「そうね。残念だけど私が加わっても、助けられないわ」
「討伐隊は全滅ね。依頼を受けた本人の責任だし、仕方の無い事よ」
「もう、レイラはそう言う所が冷たいのよね」
「いいや、クルーシ。レイラの言う通りだよ。悲しい事だが、俺達は危険の対価として報酬を貰っている。誰もが納得して冒険者になったのだから」
「そうね。レイラ、ごめんね」
「いいのよ。それでも、冒険者が命を落とすのは悲しい事だからね」
「そうだな」
そこに、奥から体格の良い男が数人を伴い慌て出て来た。
「マイラス、戻った者は何処だ」
「マスター。ケイズが、酷い怪我だ」
あの男がグランドマスターか。戦士の様に見えるが、魔力量も多いな。
「そこをおどきなさい」
グランドマスターの隣にいた女性が人垣をかき分けて、怪我人の横に屈んだ。
白金の長い髪にエルフの様な白い肌。青い瞳が印象に残る女性だ。
神官の様な服装だ。治癒魔導士か。
倒れているケイズに手を掲げ、目を閉じる。
魔力が上昇し、掲げた手に集約されていく。
「パーフェクト・ヒーリング」
眩く温かみのある光が生じ、深い傷が塞がっていく。
欠損していた足が再生された。
最上級治癒魔法。数人しかいないと言う治癒魔導士か。
あの若さで最上級を使えるとは。エルフには見えないが、人族だろうか。
人魔大戦時の友達に匹敵する魔導士が、この時代でも出会えるとは。
「アリューシュ、あの女性は何者だ」
「彼女はSランク冒険者のマリュシェ・レイース。神の使い、と呼ばれる人族ですわ」
神の使い・・・か。
「我がエルフの英雄エルリース様と同じ二つ名ですわ」
そう、エルリース。彼女の治癒魔法は人類最高だった。
エルフ特有の精霊魔法と治癒魔法。彼女を超える者はいなかった。
最強の魔導士ヨシュアでさえ、舌を巻いていた。
まぁ、ヨシュアも規格外の魔導士だったが。
「彼女の後ろにいるのがSランクパーティー、エンジェル・ウィングですわ」
天使の翼などと、たいそうな名のパーティー名だ。
剣士、戦士、魔法使い、神の使いと呼ばれる治癒魔導士の4人か。
「アリスト様、彼らよりも気になる物がありますわ」
「戻った冒険者に付いている糸か」
「はい。魔族領の奥、北の山脈に生息する魔物」
「それが帝国領内に出現したか」
300年前に、見た事があったな。魔族すら襲う、魔物だった。
マリュシェの治癒魔法でケイズは回復した。意識もはっきりしている様だ。
「ケイズ、何があった」
「グランドマスター、あれはヤバイ。あんなの見た事が無い」
ケイズの顔は怯え切っている。
「蜘蛛の魔物が・・・あんな魔物は初めてだ」
「何だと、蜘蛛の魔物だと」
グランドマスターは驚愕した。
「ああ、スパイダーやアラクネがいたんだ。他の魔物まで食い散らかしていた。そこに、現れた・・・」
「何が出たのだ。他の奴らはどうした」
「バケモノが現れた。巨大な蜘蛛、あれは伝説のクイーン・タランティーノだ」
「ばかな、そんな魔物がいるはずが・・・」
グランドマスターは言葉を詰まらせる。
周囲の冒険者達は静まり返る。
「うそじゃねぇよ。ヤツは突然現れた。気が付いたら何百と言うスパイダーやアラクネに囲まれて、仲間達は次々に・・・・」
ケイズは「うわぁぁぁぁ」と叫び声を上げ、頭を抱えうずくまってしまった。
「誰か、ケイズを別室で休ませてやれ」
グランドマスターの指示で、ケイズは運ばれていった。
「ジェザイス。こんな事は初めてね。3つのAランクパーティーが全滅よ」
「ああ、信じられん。アイツ等が全滅するなんて。済まない事をした」
「仕方がないわよ。想定外の魔物、伝説の、上位魔族級のバケモノだわ」
「クソ!バカな権力者が戦争など始めるからだ。騎士団がいれば!」
ジェサイスは悔しさを滲ませ、拳を床に叩き付けた。
「魔物討伐は私達の仕事。泣き言を言っても始まらないわ」
「すまんな、マリュシェ。やはり、お前達のパーティーが戻るのを待てばよかったか」
「話が本当なら、倒せたとしても死人は出ているでしょうね」
栗毛色の髪に、鋭い目を持つ男が頷いた。
「マリュシェの言う事は正しい。これから俺達が向かっても、流石に伝説級の魔物と手下が数百も居たら厳しいだろう」
冷静な判断だ。この男がリーダーか。レイラと互角位の実力だな。
「そうだな。奴らは集団で襲うと聞いたことがある。やはり人数が必要か」
次に発言したのは、緑がかった短髪で、体格の良い男だ。
戦士か、ベイルといい勝負だな。
「だけど、村や町に被害が出る前に何とかしないとね」
最後に、金色の巻き髪で、貴族令嬢の様な魔法使いが会話に加わった。
中々の魔力量だ。
魔力量ならクルーシが上だ。
・・・・・
・・・・・んっ。
こいつ等,Sランク冒険者だよな。ベイル達はBランク冒険者。
おかしい。実力が拮抗している。
もしかして、ベイル達はSランクに匹敵するくらい成長したのか。
確かに、ここ数ヶ月で急激に強くは、なった。
ゴブリン・ロードを倒して以来、昇級依頼は受けていない。
もしかして、このSランク達は大して強く無い。とか・・・
いやいや、それはないだろう。
ベイル。お前達も規格外だったな。
グランドマスターのジェザイスが周りの冒険者を見渡す。
「しかし、お前達と同行出来る者が・・・」
ジェザイスに見られ、目を背ける冒険者達。
俺と目が合った。合ってしまった。
嫌な予感が・・・
「黒い髪とエルフ・・・だと」
そう呟いて、歩み寄って来た。
アリストの前に仁王立ちするジェザイス。
「黒い髪の貴様。名は」
「アリスト」
ジェザイスの鋭い眼光が光る。
「俺はグランドマスターのジェザイスだ。隣にいるのがSランクのアリューシュだな」
「あら、私も有名になりましたのね」
「貴様達・・・良い所に来たではないか。ウワッハハハハッ」
ジェサイスは大声で笑いだした。
「オルニオスから聞いているぞ。上位魔族を単独で倒した英雄だな」
ギルド内がざわつき始めた。
「お、後ろにいるのは、お前のパーティー仲間だな。全員強者だと聞いている」
「おい・・・」
ベイルを見る。
「アリスト。面倒な事になりそうだ」
ベイルも見るからに嫌そうな顔をしている。
そんな俺達をよそに、ジェサイスは満面の笑みだ。
「クイード!同行パーティーが見つかったぞ」
クイードと呼ばれた剣士と仲間が俺達を見る。
あからさまに不満顔だ。随分と、反感的な視線を向けて来る。
ジェサイスは意に介さず、言い放つ。
「おい、貴様等。ギルドからの依頼だ。エンジェル・ウィングと共に、クイーン・タランティーノ討伐に行け」
こいつ等とか!本当に間が悪い。
新章が始まり、早々に依頼かよ。
魔族の動向も気になるし、エルフの国に急いでいるのにな。
でも、魔物も放置出来ないわよ。
そうだよな。
俺達は強者らしいしな。むふふふふ。
あら、ベイル。調子に乗ってはいけませんのよ。
私に勝てる様になるまでは、ね。
それは、ムリだろうよ~




