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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第三章~アジミール王国編~

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王宮への侵入

私はタマ。

 気高き雷獣だ。


だが、誘惑は不意にやって来る。

  今度の谷間も居心地の良い場所だ。

               出たくない。

しかし、仕事の時間が来てしまった。

  もう少し、この谷間でゴロニャーンしていたいのだが。


あの男が睨む。

   羨ましいのか。

       魔王より恐ろしい。


タ~マ~


がるぅぅぅぅ

(ひぃ~)


は・や・く・しろ。


がう

(敬礼)


日が落ち、辺りが暗闇に包まれる。

「そろそろ、行くか」

「お、待っていたぜ」

 ベイルがやる気満々だ。

「タマ、お願いね」

「がう」

 レイラの胸の谷間からするすると出て来るタマ。

 元の大きさに戻った。

 魔力封じの手枷を噛み砕く。

「ん~すっきりしたぜ」

「ふぅ~肩凝ったよ}

「手が痛いわ~」

 3人は腕を回したり伸びをした後、空間収納袋から武器を取り出した。


牢番は4人。交代したばかりだ。

 キャンセルの魔法で牢のカギを開る。

「クルーシ、牢番には寝て貰おう」

「了解よ」

 クルーシはスリープの魔法で牢番を眠らせた。

 4人を眠らせ、牢の鍵を取る。

「全部の牢を開けていく間は、ないな」

 牢の中からは「出せ」だの「鍵を渡せ」などの叫びが聞こえる。

 うるさい。

 幼子を抱えた若い女性を見つける。

 牢から出し、鍵を渡した。

「牢番は朝まで起きない。貴方が良いと思う者を牢から出してあげて下さい」

「私が・・・」

「思いのままにして下さい。犯罪者を逃がしてしまっても、それは私のせいにすればいい」

「そんな・・・」

 アリストは優しい笑顔を向ける。

「大丈夫。これから、王宮が騒がしくなります。離れる様に」

「分かりました。やって見ます」

 女性は力強く答える。

「お願いします」

 アリスト達は王宮へ向かった。


王宮の西門。

「オルオニス」

「お、来たな」

 門兵は小さな入り口を開けた。

「エルフは右奥の建物だ。早く行け」

「あなたは、どうする」

「俺か、俺は大金貰ったからな。とんずらするよ。首が危ない」

「そうか。ご武運を」

 王宮内は思いの他、警備兵が少ない。

 戦争の為にアザード方面に兵士を送ったのだろうか。

 それとも、魔族が邪魔な者を消したか。


暗がりに紛れ進んでいく。

 警備が厳重な、高い塔が行く手に現れた。

 物陰から、様子を見る。

「あそこだけ、警備が厳重だな」

「塔の上の方、明かりが漏れているわ」

 クルーシが指を指した。

「誰か、いるな」

 遠視の魔法で確認する。

「若い男、王族か。これは幽閉か?」

 レオトスが言っていたな。まともなのは第一王子だけだ、と。

「なぁ、ベイル。あの男、助けてみるか」

「アリューシュを救い出す前に、騒ぎを起こす価値があるのか」

「あるかも知れないぞ」

「ま、ついでだしな。助けるか」

 兵士が8人。

 スリープの魔法では、魔族に感知されてしまうだろう。

 タマの弱雷撃。よほど魔力感知に優れている者以外は気付かれない。

「タマ」

「がう」

「兵士全員を一度に気絶させられるか」

「がう」

「殺すなよ」

「がるる」

 こいつ、絶対人語を理解しているよな。

 もしかしたら、会話も出来るのでは。

 などと考えている間にタマが動いた。

 暗闇の中、音も立てずに疾走。

 兵士達の目前で雷撃を放つ。

 バリバリと青白い光を放ち、兵士達は沈黙した。

「タマ、上出来だ」

「がうがう」

 2人と1匹に見張りを任せ、俺とレイラは塔を駈け上がる。

 最上階、扉の向こうにいたのは高価な服を着た若い男。

 栗色に髪に利発な顔立ちをしている。

「そなた達は何者だ」

「アリストと申します。第一王子殿下で御座いますか」

 レイラは驚いている。

「ちょっと、王子様なの。聞いてないわよ」

「言ってないからな」

 尻を蹴られた。痛い。

「私は第一王子のクセルセスです」

 オルオニスに恩でも売っておくか。

「冒険者ギルドマスター、オルオニスの指示で助けに参りました」

「オルオニス殿に、感謝致します」

「では、行きましょう。殿下」

「はい」


塔を降り、2人と1匹に合流する。

「王子様だったとはな」

「ええ、驚きました」

 2人は驚いたが、王子はもっと驚いている。

「これは魔物・・・・」

 クルーシが笑顔で答える。

「この子はタマです」

「タマ?」

「はい。タマですよ。大切な仲間です」

「そ、そうですか。仲間でしたか。はははは」

「殿下、先を急ぎます。お付き合いを」

「アリスト殿。王と弟を救い出して下さるのか」

 弟も居るのか。魔族を引き入れたのは弟の方か。

「先に、囚われたエルフの仲間を」

「エルフ。そうか、エルフを戦争に利用する。噂は本当だったのだな」

「はい」

「仲間は大切でしょう。そちらが優先ですね」

 良い王子だな。

「殿下はなぜ、幽閉されていたのですか」

「ミルガルド王国を占領した後、私を戦争犯罪人として責任を取らせる為だ」

「それは・・・」

「宰相のナディアだ。あの者が父を狂わせたのだ」

「殿下。兵士の大半は敵でしょう。容赦はしません」

「そうか。兵士達まで。致し方ない、承諾する」

「では、クセルセス殿下。古い倉庫はご存じでしょうか」

「古い倉庫か。こっちだ」


王宮内。宰相ナディア自室。

「バリーゼ様。先ほど、魔力の放出を感知致しました。微弱でしたが」

「ロシタム公爵。今は人族。人族の名で呼びなさい」

「失礼致しました。ナディア様」

「貴方の監視を通りぬけた者がいると」

「はい。侵入者かと」

「魔力感知は兵士全てが反応してしまいます。そこを、つかれましたね」

「はい。申し訳御座いません」

「何処に向かっているのかしら」

「クセルセス王子を解放した様で御座います」

「狙いは王子殿ですか」

「いいえ、エルフの元の向かっている模様で御座います」

「狙いはエルフですか」

「ちょうど将軍が今宵の相手を求め、向かっております」

「フン。あの男も、懲りぬ者だ」

「いかが致しましょう。例の黒髪かも知れませぬ」

 ナディアは葡萄酒を一口で飲み干した。

「人族のお酒は美味しいわね」

 ナディアはグラスを叩き割り、苦々しい表情を浮かべた。

 あの男一人の為に・・・・クッ。

「ミルガルドでも邪魔をし、ここでも邪魔をするのね。計画は中止します」

「では」

「この国の支配は放棄致します。王族は全て処分致しましょう」

「お任せを」

「今更、戦争は止められないでしょう。私は。次の計画に移ります。王子は任せました」

「王子だけでは無く、黒髪も私が始末致します。そうなれば、計画は元のままに」

「貴方が。無茶はおやめなさい。王子を殺す位は、貴方でも出来るでしょう」

「心外です。私では王子を殺す事で精一杯だと申されますか」

「お前、私に意見するのですか。殺しますよ」

「も、申し訳御座いません。決してその様な事は」

「いいでしょう。ですがエルフが解放せれれば、下位の者では勝てません」

「魔人の種を頂ければ、成し遂げて見せましょう」

 頭の悪い部下は使えないわね。時間稼ぎにはなるかしら。

「良いでしょう。成果を期待していますよ」

 ナディアは小さな黒い球を数粒渡した。

「必ずや」

 ロシタム公爵は、一礼する。

 この女、偉そうに。

 黒髪を殺し、私は更なる高みへ行くのだ。そして、魔族の頂点に立つ。

 部屋を出ていくナディアを、欲望に歪んだ眼差しで見送るロシタム。


ナディアはそんな男の内心を読み取っていた。

 この男、魔王にでもなるつもりでしょうか。愚か者は使い捨てに限りますね。

 今の私が加わっても、真正面からでは勝てませんよ。

 あの男にはね。愚かなストラーダ。

 ナディアは振り向き、最後の別れを告げる。

「魔人も下位魔族も好きに使うが良いでしょう。さようなら」


王宮内って迷路みたいだな。

    王子様が居て良かったぜ。


中々、イケメンだしね。


でも、少し頼りなさそうよ。

  男はもっと頼りがいが無いと。


俺の事だな。

 クルーシ、良い事言うじゃねえか。


何を言っているの。早く、アリューシュを助けないとね

(ちょっと恥ずかしいくて赤面状態)

      貴方、リーダーなのだから、しっかりしてよ。


おう。任せておけ。


何か、いい感じですね。


王子様もそう思うかい。 

 私達は最強パーティーになるのさ。

 

次、行くぞー。

 


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