囚われの英雄
牢屋は気が滅入るな。
そうね、イヤよね。
私は魔力操作の修業をするわ。
もっとたくさんの魔力を操って、町ぐらいは吹き飛ばせる様になります。
何処を目指しているのだ。クルーシ。
ベイルもレイれも、良いぞ、みたいな顔をしているが。
魔王級になるのか。いや、魔王になるのだな。そうなのだな。
落ち着け俺。そんな事がある訳がない。
強くなることは良い事だ。頑張れ。
がるるるがう。 バリバリ
お前も魔力操作の修業か。やめておけ。
電撃が漏れて、みんな感電しているから。
( ゜д゜)ハッ!
がう・・
俺達はアザードの悪魔として捕まった。
今は牢の中だ。
「お前達に面会だ」
不意に兵士が現れた。面会、誰だ。
「手短にしろ」
兵士が去り、残ったのは年配の剣士風の男だ。
「お前達がアザードの悪魔の代わりか」
「誰だ」
アリストに見据えられ、慌てる剣士風の男。
「おい、睨むなよ。俺はこの町の冒険者ギルドマスターのオルオニスだ」
ギルドマスターか。
「レオトスから連絡を受けて、な」
おお、脳筋マスター。やる時はやる男だ。
「よく面会が通りましたね」
「それは、金貨の力だ。後で請求するからな」
くっ、このオッサンもクセが強そうだ。
「で、何をして欲しい」
「俺達の武器を取り返したくれ」
ベイルが身を乗り出す。
「武器か。どこにある」
クルーシがベイルに乗りかかる。潰れるベイル。
「私達を護送した兵士が持って行ってしまいました」
「ふ~ん。護送兵か」
「お姉様はどこに」
レイラは不安な顔をしている。
まぁ、心配するよな。
「エルフの集められている場所の情報を」
「エルフねぇ」
「王宮の何処かだと思いますよ」
「よし、任せて置け。武器も情報も、直ぐに持ってきてやる」
自身満々に答えるオルオニス。
「あ、ばら撒く金貨の請求なら、レオトスさんにして下さい」
「レオトスに、か」
「はい。依頼の報酬を貰っていませんので」
俺は、にっこりと愛想笑いを浮かべた。
アリューシュは王の前に引き出される。
「国王様。エルフで御座います」
貫禄のある顎髭を蓄えた王は、ゆっくりと頷いた。
「うむ。将軍」
「はっ」
武骨な風貌の将軍が近づいて来る。
この将軍は人族ですわね。王は遠すぎて分かりませんわ。
魔法封じの手枷が邪魔ですわね。
将軍はアリューシュの前に立つ。
アゴを掴み、無理やり顔を上げる。
「クッ」
「ほう。中々よい女だ。今宵は可愛がってやろう。ふふふっ」
「ご冗談を。私は面食いなのですわ」
「クックックッ。気の強い女だ」
将軍は隷属の首輪を取り出した。
「これでお前は、俺の言いなりだ」
アリューシュに隷属の首輪をはめた。
「今宵が楽しみだ。倉庫に連れて行け」
「はっ」
アリューシュは兵士に連れられ謁見の間を後にした。
王宮の奥、使われていない古びた建物。
ここは倉庫かしら。
「大人しくしていろよ」
兵士がアリューシュを建物内に押し込んだ。
扉が閉まる。
小さい窓から、微かに光が届いている。
薄暗い中、多くの人の気配を感じた。
目がなれ、多くのエルフが浮かび上がる。
「あなたは、王女様では」
一人のエルフが声を上げた。
「なに、王女様だと」
「王女様、アリューシュ様か」
次々に声が上がった。
「あなた達。ご無事でしたか」
アリューシュの瞳が潤んだ。
「アリューシュさ~ま~」
一人の女エルフが抱き着いて来る。
「あなた、ルミローネなの」
「ご無事でよかった~」
魔法剣士ルミローネ。アリューシュお付きの侍女兼戦友だ。
「アリューシュ様がなぜ、こんな場所に」
「皆を助けに来ましたわ」
皆が驚く。
「なんと、しかし王女様まで捕まってしまっては」
「この首輪は外せない」
「いくら王女様でも無理だ」
不安の声が上がる。
アリューシュは自信をもって言い放つ。
「大丈夫ですわ。英雄が来てくれますから」
夕暮れ前に、オルオニスが牢に戻って来た。
周りに兵士がいないか確認する。
「ロクサーナ、見張っていてくれ」
「はい」
「彼女は」
「副ギルドマスターだ」
「信用出来るのですか」
「問題ない」
信頼は厚い様だ。
「武器はこの袋に入っている。この空間収納袋、お前の物だろう」
「ああ、そうだ。助かった。この袋、高かったんだ」
おい、ベイル。喜ぶ所が違うぞ。
「で、エルフだけどな。王宮の奥深くにある、古びた倉庫に集められている」
「よく情報が手に入りましたね」
「ふん。ギルドの力ならば、造作もない。金貨は大量に使ったが」
結局、金貨が物を言うのだな。
「まぁ、以前から王宮は怪しいのでな。探っていたのさ」
このマスターは脳筋では無さそうだ。
「西門から入れ。そこが一番近い。門兵は手懐けておいた」
「手回しが良いですね。助かります」
「俺の名を言え。それとな、数日中に開戦に踏み切るらしいぞ」
「そうですか。余り時間もなさそうだ」
「そんな悠長な事を言っている場合ではないぞ。お前達、明日処刑だろう」
「あ、そうでしたね」
「大丈夫か、お前」
「大丈夫ですよ、今夜ここを出ます」
「そんな簡単に言うか。脱獄を」
「はい。そのまま王宮に向かいます」
「乗り込むのか」
「王宮には魔族がいます。間違いなく。騒がしくなるでしょう」
「なに!魔族」
「声が大きいですよ」
「す、すまん。つい・・・」
「なので、町中が混乱しない様、お願い致します」
「それは構わんが、王宮に魔族が居るのは本当か」
アリストは、満面の笑みで答える。
「はい。いますよ」
ベイル達も「いたら、どうした」みたいな顔をしている。
「なんだ。そのちょっとそこに虫がいますよ、的な軽い返事は」
「まぁそんな感じなので、王宮は大混乱でしょう」
「魔族に勝てるのか。出来る事はあるか」
「教団が怪しいですね」
「教団には見張りをつけている」
「さすがですね。それと、街中に魔族が紛れているかも」
「それはマズいな。高ランク冒険者を集めておくか」
「気を付けて下さい。魔族に与する人族がいるようです。冒険者にも警戒を」
「人族にそんな者が」
「いるでしょう。欲は尽きない物です」
「残念ながらいるな、それは。うむ、承知した」
ロクサーナが顔を覗かせた。
「マスター。兵士がきます」
「わかった。では、私はこれで。武運を祈る」
「王宮を壊しても怒らないで下さいね」
「伯爵邸での事は聞いた。やりすぎるなよ」
ちょっと、あきれ顔でルオニスは戻って行った。
早くアリューシュを助けて、暴れようぜ。
お姉様が心配だよ。
アリューシュはキレイだから、余計心配よ。
タマも心配よね。
がう。
アイツは気高く強い。(性格も)
大丈夫だとは思うぞ。
今夜、助けるけどな。
アイツの姉の方が性格が凄いぞ。
何かいいましたか、アリスト。
ドキ!
なぜ、ここにいる。女王なのだからウロウロするな。
私もここに出たかったのです。
妹ばかりズルいのです。
そんな、性格だったっけ、お前。
がう。




