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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第三章~アジミール王国編~

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王都イスファンへ

捕まったな。

 これじゃ、王都観光も出来ないな。


なに、のんきな事を言っているのよ。


本当に、危機感の無い人ね。


この国は、それほど見るところは無いですわ。

 文化水準も低いですのよ。

ただ、名物のサンド・スコーピオンの香草黒コショウ焼きは美味でしたわ。

 ここ、60年程食べていませんの。


黒コショウは旨いよな。

 なにか、こうパンチが効いているよな。


料理のうまみが増すよ。


私も好きよ。


なんだ、黒コショウとは。

 300年前には無かった物だ。

 食ってみたいな、タマ。


がうがう

王都に護送する馬車の隊列が荒野を進んでいく。

 この国の大半の土地は余り肥沃では無い様だ。

 ミルガルドには、美しい渓谷や目を奪われる滝など、美しい景観があった。

 この国では、まだ見ていない。

 南の方は大きな森林や山々がある様だが。

 王都まで4日程かかる様だ。


「なぁ、アリスト、途中で殺されるとかあるかな」

「ベイル。アザードの悪魔は、王都まで噂になっているらしい。公開処刑にしたいのだろう」

「そうなのか」

「殺すつもりなら、もう殺されている」

 今の所、殺すそぶりはない。

 200人以上殺された事件だ。犯人も複数人、欲しいのだろう。

 アリューシュはエルフだから軍事利用か。

「じゃぁよ。王都に着いて速処刑、何て事は無いよな」

 クルーシも不安そうにしている。

「それは無いだろう。一応、法治国家だしな」

「そうか、まずは一安心だな」

 ベイルは胸をなでおろし、クルーシは安堵の表情を浮かべる。

 裁判など無いだろが、1日くらいは猶予があるだろう。

 レイラは何とかなるでしょ、みたいな顔をしている。

 度胸が据わっている女だ。

「王宮に潜り込む手間が省けた、と言うものだ」

「アリストはやはり、英雄なんだね」

「なんだ、レイラ。急にどうした」

「アンタがいるとさ、どんな窮地でも何とかなると思える」

「そうですわ。魔王を倒した最強の英雄なのですから」

 アリューシュは得意満面だ。

「そ、そうか・・」

 照れるアリスト。

「アリスト、どうしたのよ。顔が赤いよ」

「赤くない。人の顔をジロジロ見るな」

 皆が大爆笑をすると、兵士が近づいて来た。

「何を笑っている。バカか、貴様らは捕まった重罪人なのだぞ」

 兵士は呆れ顔だ。


タマは思う。

 この者達は、何なのであろうか。

 窮地にも関わらず、全く動揺しておらぬ。

 特にこの男。

 遥か昔、父に聞いた事がある。

 この世には人外を超越した英雄がいると。

 だが、今は考えが及ばない・・・居心地が良すぎる。

 このプヨプヨ感、スベスベ感。何と心地の良い谷間だ。

 このままでは、ダメ雷獣になってしまう。

 しかし、時折感じる殺気。

 うらやましいのか。そうなのか。

 私は、ごろにゃ~んの気分なのだぞ。

 キサマは小さくなれんだろうが。

 こんな心の狭い者が英雄なのか。なぁ、アリスト。

 そんな、ダメ雷獣のタマなのであった。


犯罪人の食事は粗末な物だ。硬いパンと干し肉。味の無いスープ。

 スープでは無いな、あれはただの湯だろう。

 300年前の非常食と同じだ。

 食事には文明の発展を感じたい。そう思う今日この頃だ。

「おい。もっと、ましな食事をよこせ」

 兵士が怒りだす。

「うるさい。我らの食事とて、たいして変わらんのだ。我慢しろ」

 う~ん。この国は貧しいのだな。

 この荒野が示しているか。


2日目の夜は慌ただしい。

 夜行性の魔物と遭遇。

 大型の獣型の魔物。

 4つ目で、大きな1本角。2本の尾を持つ、4つ足の魔物。

 サウザント・ナイト・シール

 アジミールの兵は20人。

 あの魔物は風の魔法を操る。

 魔物の魔法が吹き荒れ、牙が唸る。

 兵士に大きな被害をもたらした。

 初級魔法使いが1人では、この魔物はきついだろう。

 そんな中、隊長ルキオスが奮戦。魔物を仕留めた。

 まぁまぁの強さだ。クレイズと同等位か。

「おい、3人死んだぞ。大丈夫か、この兵士達は」

 ベイルは不安な顔、全開だ。

「アリスト、こんな低レベルじゃ、王都にたどり着けないよ」

 レイラは呆れている。

「死んだ兵士が可哀そう」

 クルーシはやさしい女性だ。

 サウザント・ナイト・シールはたしか、Aランクの魔物だった。

 普通、あんな感じではないのだろうか。

 ベイル達は強くなった。自分たちの強さを理解していないのだろう。

「いざとなったら、タマがいるだろう」

「そうですわ。タマは頼りになりますのよ」

「お~」

 全員は納得。

 タマは任せろと言う顔で谷間から顔を出す。

 くっ、タマから目が逸れてしまう。不覚。

 俺の煩悩が、邪魔をする。

 しかし、これは健全な男の本能。致し方ない、事にしておこう。


兵士達の混乱も収まり、負傷兵はポーションで回復している。

 一団は移動し、その場を離れた。

 日が暮れ始めた頃、岩場の影で野営の準備を始めた。

 馬車に繫がれての睡眠は、中々つらい物だ。

 宿のベッドが恋しくなる。


3日目は低ランク魔物数体と遭遇したが、無事討伐した。

 タマの出番は無さそうだ。


4日目、立派な城門が見えて来た。

 王都イスファン。アジミール王国の首都だ。

 町に入ると、王都とは思えぬ閑散とした状態だった。

 街並みは王都にふさわしい物だが、人がいない。

 建物内からは人の息遣いを感じる。

 戦争が近いからか、それとも圧政のせいか。民は怯えている。

 アザードでは、魔族が圧政を敷いていた。

 すでに、王宮も魔族の支配下にあるかもしれない。

 魔族は、王国を乗っ取るつもりなのか。


馬車は町を過ぎ、豪華な造りの王宮が見えて来る。

 王宮内に入り止まった。

「重犯罪者を王宮の牢屋に入れるのか」

 兵士長ルキオスが笑う。

「エルフだけだ。女、ここで降りろ」

 アリューシュが馬車を降ろされる。

「アリスト様」

「ああ、心配するな」

 アリューシュはニコリと笑い、連行れて行かれた。

「お前達は収容所行きだ。明日は処刑場だがな。アハハハハッ」

 ルキオスは高笑いだ。

「連れて行け」

「おい、アリスト。明日処刑だぞ。どうしよう」

 オロオロするベイル。

「大丈夫だ、皆」

 レイラの胸に視線を向ける。

(決して、やましい視線ではない)

 ベイルとクルーシが見る。

 タマが谷間に埋まっていた。

 安堵する2人。

「そんなに見ないでよ」

 顔を赤らめるレイラ。

 居心地の良さそうなタマ。

 無性に、イラっとする。いかん、邪念が。


町の犯罪者収容所。

 牢の中は薄暗く、辛気臭い。

「そこで大人しくしていろ」

 牢番は、定番の言葉を残し、去って行く。

 多くの牢があり、たくさんの者が収容されている。

 極悪人も居るのだろうが、どう見ても罪なき者も捕らえられている。

「ここは地下か。ひでぇ匂いだ。環境最悪だぜ」

 ベイルは鼻をつまんでいる。

「お姉様の魔法、臭いのイヤがあれば」

 レイラがしみじみに言った。

 アリューシュが今頃、くしゃみをしているぞ。

「この牢屋には、女子供も多いのは何故かしら」

 クルーシは辺りを見回し、疑問を感じた様だ。

「魔族の食事用に、罪を着せて捕まえたのだろう」

 俺の言葉に、皆が凍り付く。

「女子供の方が旨いらしい」

 クルーシが青ざめた顔で言った。

「鬼、悪魔、魔族。なんてひどい事を」

 はぁ。

 レイラが続く。

「食ったのね。食べたのね。しかも旨いだなんて、変態」

 なぜ、そうなる。

「何を言っている。さて、どうするか」

 急に真面目な顔をする3人。

「取られた武器は何処かしら」

「護送した兵士がくすねたっぽいよ」

「まずは武器を取り返さないとな。アリスト、何かいい方法ないか」

 3人で真面目に話し始めた。

 先ほどの会話は何だったのだろうか。

「ここの人達も逃がしてあげないと」

 クルーシが俺の顔を見て言う。

「そうだよな。放っておいたら食われるからな」

 ベイルも俺の顔を見て言った。

 レイラも俺の顔を見て頷く。

「何だよ。食う訳ないだろ」

「なに、当たり前のことを言っているの」

 クルーシはニコっと笑った。


冗談の区別が分からん。


 

明日は死刑台だな。

  今夜中に牢を出るか。


そんな簡単に出れるのか。


ベイル、タマがいるだろう。

 雷獣の牙は、ミスリルより硬く鋭い。


凄いな、タマ。


がる

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