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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第三章~アジミール王国編~

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アザードの悪魔

アザードの悪魔とか、物騒な名前だな。

  早く解決して、次行こうぜ。


私もエルフの民が心配ですわ。

  キモイ相手でなければ良いのですが。


でも、悪魔ですよ。見た目はキモそうね。


辞めた下さいまし。クルーシは意地悪ですわ。

   もうタマに触らせてあげませんわ。


あ~それだけわやめて~

          タマ~~~


がう

(人気者はつらいぜ)

夜になり、町には静寂が訪れる。

 神殿には明かりが灯り、何人かの出入りがある。

{アリスト様。教団に目立った動きは有りませんわ。ただ、施設内に結界が張ってありますの。魔力感知が通りませんわ}

アザードの悪魔は教団と関係していると目星を付けたが、動きはないか。

{そうか。しかし、施設内に結界を張るなど、やはり怪しいな}

{はい。かなり怪しいですわね}

{町に出たベイル達からも、目立った連絡はない。もうしばらく監視を続けよう}

{了解ですわ}

 俺は上空から町を見下ろしている。

 町の中での魔力感知は、全ての人に反応してしまう。

 そこで感知能力を、より大きい力だけに反応するように調整する。

 この調整が難しい。かなりの鍛錬が必要だ。

 その魔力感知にも怪しい反応はない。

 町全体を、感知出来るわけでは無いが。

 これまでアザードの悪魔が出没したのは、日没から日を越すまでの間だ。

 カミール商会の支店はクレイズ達、護衛団が警備をしている。

 町の人々も警戒して、夜の外出は控えている。

 そんな中、教団の者は普通に出歩いていた。

 神の加護があるそうだ。

 偽りの神に、加護などある訳がない。


しばらくしてアリューシュから念話が入る。

{アリスト様。今日は動きが無い様ですわ}

{そうだな。今日は撤収しよう}

{了解ですわ}

{クルーシ。撤収しよう}

{はい。戻りますね}

 毎晩、アザードの悪魔が出る訳でもないか。

 そう思い帰路に着く。

 魔力感知の一番端に、一瞬大きい反応が走知った。

 くそっ。直ぐに反応が消えた。アザードの悪魔か。

 全員に念話を送る。

{南だ。アザードの悪魔だ、急げ}

{私が一番近いですわ} 

 アリューシュが近いか。間に合うか。

 アリストは、飛行魔法を加速させた。


前方で雷撃が放たれた。あそこか。

 そこは下層民の住居区画。

 黒煙が上がる中、アリューシュを見つけた。

「アリューシュ無事か」

「アリスト様」

「アザードの悪魔は」

「逃げられましたわ」

 辺りには血が飛び散っている。だが、遺体は無い。

「2人殺られましたわ」

「姿を見たのか」

「黒い影しか見えませんでしたわ。ですが、大人2人を軽々と抱えていましたわ」

「アザードの悪魔か。逃げ足は速い様だ」

「とっさに雷撃を放ちましたが、黒煙に紛れて消えてしまいましたの」

「そうか。魔力感知にも反応はない、か」

 ベイル達も駆けつけて来た。

「アリスト。捕まえたのか」

「ベイル、逃げられたよ」

「逃げたのか。兵士達がもう直ぐ来るぜ」

「兵士に見つかると面倒だよ。明日、調べに来よう」

 確かに、レイラの言う通りだな。

 それに、兵士の中にイザール教徒がいるかも知れない。

 イザール教徒は警戒しないといけない。

「そうだな」

 一瞬の反応は大きいものだった。その後、魔力感知に反応が無くなった。

 どういうからくりだ。

 兵士が来る前に、俺達はエマルドの店に戻る事にした。



翌日、エマルド達が帰郷する日だ。

「皆さん。何かあればカミール商会にお越し下さい。商人は横のつながりもあります。お助け出来ることもあるでしょう」

「はい。ありがとう御座います」

 ベイルが代表して礼を述べた。

 彼らに何も無くて良かった。無事、自国に戻れそうだ。

「アリスト様、しばしのお別れで御座います。ご無事でお戻り下さいませ」

 アルテシアがアリストの手を握り締め、別れを惜しんでいる。

「ほら、アルテシア。時間だ。離れなさい」

 エマルドに無理やり馬車に乗せられる、アルテシア。

「アリスト、俺達も行かなくてはならん。力になれず、すまない」

「クレイズさん。ありがとう。帰路の無事を祈っているよ」

「ああ。お互いに、な」

 2人はしっかりと握手を交わす。

 クレイズはベイル達とも握手を交わし、別れを惜しんだ。

 それを、優しく見守るアリスト。

 そんなアリストを見つめる女剣士。

「くぅ~私、向こうに行きたいわ」

 そんな女剣士を見つめるアルテシア。

「あの女狐は、要注意人物確定ね」

 全てを見ていたエマルド。

「はぁ~我が娘ながら、困ったものだ」


馬車は出発し、アルテシアは身を乗り出して手を振っている。

 侍女が落ちない様に支えているのは言うまでもない。


昨夜の現場に来ている 。

 路面の血痕は洗い流されている。

 下層民の区画のせいか、昼間なのに人通りがない。

 家の中からは反応がある。弱弱しい反応だが。

 今は考えている場合ではないか。

 エルフの件もある。早く片付けなければ、戦争が始まってしまうかも知れない。

 一瞬反応した、大きな力。

 必ず魔力残滓が残っているはずだ。

 あの歪んだ殺気の反応は魔族の物だ。

 アリューシュが放った雷撃の跡。

 そこに、アリューシュとは別の魔力残滓を感じた。

 それは、路地裏へと流れている。

 路地に入るとゴミや害虫の死骸などで異臭が漂っている。

 やせ細り粗末な服を着た人が、時折座り込んでいる。

 動ない。生きているのだろうか。

 これが300年前より平和だというのか。

 複雑な心境だ。


進に連れ、魔力残滓は薄れていく。

「これ以上は感じられない」

「どうするよ、アリスト。何か手はないのか」

「ベイル、心配ご無用ですわ。タマがいるではありませんの」

 アリューシュは得意満面だ。

「タマちゃんはそんな事も出来るのね」

 クルーシはチビタマにスリスリしている。

「ちょっと、ズルいわよ。私も」

 レイラまでスリルリだ。

「はいはい、先に行くぞ。アリューシュ、頼む」

「アリストがヤキモチ焼いているよ。ぷーくすくす」

 レイラ・・・・相変わらず煽るのが得意だな。

「タマ、魔力残滓を追うのですよ」

「がう」

一声鳴くと、タマが元の姿に戻った。

「大きくなっても可愛いわ」

 クルーシが抱き着く。

 続いて、女性2人が抱き着いた。

 気のせいか、タマ照れている様に見える。雷獣なのに。

 タマが魔力残滓を追っていく。

 朽ちかけた家屋にたどり着いた。

 タマが家屋の中に入っていく。

「ここに、隠し通路でもあるのか」

 タマがこちらを向いて、フッサフッサのシッポを立てた。

 チィ、なぜか生意気な顔に見える。タマのくせに。

 家屋の中は荒れ果てている。

 タマが床の一か所で止まった。

「がう」

 ここだ、感謝しろ。と聞こえるのは俺だけか。

 アリューシュが床を調べる。

「アリスト様、扉が」


床に扉があり、地下通路へと繋がっていた。



あ~アリスト様とお別れだわ。

      私も一緒に行きたいわ。


お嬢様では足手まといですよ。ふふ


きぃー。この女狐は、少し胸が大きいと思って。

    あと2年もすれば追い抜いてあげますのに。


ふふ、私の剣であの方のハートを貫いてみせます。


負けませんわ。オバサン。


ムッキー。まだ24才よ。


やれやれ、困ったものだ。

 さ、商売、商売。

 

ため息を付く、父だった。

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