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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第三章~アジミール王国編~

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イザール教団

タマは東の空を見上げていた。


黙って出てきちゃったな。アリュシア、怒ってるかな。

 怒ると怖いからな。どうしよう。

 アリューシュが100年も帰ってこないのが悪い。

 

でも、久しぶりの外界だ。しばらく楽しんじゃうか。

    一緒にいる人族も、悪い人族では無さそうだしな。


タマ、そんな所で何をしてますの。

          もう、行きますわよ。


がう。


馬車に乗り込んだアリューシュの膝の上。

      すっぽりと収まるタマであった。


 

アザードの町は殺伐としていた。

 兵士が多いので、そう感じるのだろうか。

 町の人々が、何か怯えている様に見える。

 建物や街並みなどはミルガルド王国と大差はない。

 建築技術は同等くらいか。

 兵士の装備品もほぼ同じだ。

 違うのは、神官らしい者の姿が目立つ。

 それに、大きい神殿が建っている。

 ミルガルド王国にも教会はあったが、大きな神殿は無い。

 女神マルス・マテナ教の教会だ。

 しかし、この教団の神は違う。

 幸福の神クレス・イザールを信仰する、イザール教団。


300年前、主だった信仰は無かった。

 この世界が誕生した神話。

 その後、人族に知恵や知識、愛や悲しみ、技術、自然の恵みなどを与えてくれたのが神や女神だとされている。

 その中で、皆が祈りを捧げたのは、女神マルス・マテナ。

 慈愛と豊穣の女神だ。

200年以上前に、マルス・マテナの信仰は教団として成立した。

 そこに、10年程前から急速に勢力を伸ばし始めた新興宗教イザール教団。

 神殿も10年前に建ったそうだ。

 だが、幸福の神もクレス・イザールの名も聞いたことが無い。

 かなり怪しい教団だ。

 

しばらく街中を行くと、カミール商会の支店に到着した。

 今回の商品は食材以外、全て東の隣国キルディア帝国に届ける物だ。

 ここから先の輸送は、護衛も含めこの店の使用人が行う。

 本来はこの隊に同行する予定だったが、ここに残る事にした。

 エルフが不遇を受けている。

 アリューシュは見逃せないだろう。

 イザール教団も怪しさ満点だ。

 それに、隷属の首輪の入手先は何処だ。

 さらにこの町の人々が怯えている理由を、店の支配人から聞いた。

 この町で連続殺人事件が起きている。

 夜の外出は危険らしい。

 エマルド達を巻き込む事は出来ない。

 エマルド達は事前に買い集めていた商品を持って明日には帰郷する。

 今この町は、かなり危険だ。無事に送り出さなくては。

  

情報を集める必要がありそうだ。

 見知らぬ国で頼れるのは、冒険者ギルドしかないか。

「ベイル、冒険者ギルドに行ってみよう。何か情報があるかもしれない」

「冒険者カードで所属がバレるぞ」

 そうか。冒険者カードには王国名と所属ギルドが記載されていた。

 仕方がない。グライムさんに手を貸して貰おう。

「グライムさんに頼んでみるか」

「どうやって、連絡取るんだ」

「念話さ」

「おお、念話か。でもよ、大丈夫か」

「何がだ」

「密入国の共犯になるんだぜ。グライムさんはともかく、ここのギルドマスターが承諾するかな」

「ギルドは国にかかわらない組織だ。ダメ元で聞いてみるさ」


{グライムさん}

{うお!驚いた。その声はアリストか}

{はい。今、大丈夫ですか。頼みがあるのですが}

{なんだ、いきなり頼み事か。今は執務室で誰もいないぞ}

{すみません。急ぎなもので}

「で、なんだ」

{アジミール王国のアザードに居るのですが}

{はぁ。何でアジミールにいるのだ。公爵と王都に行ってから見ないと思えば。良く入国出来たな。まさか密入国か}

{色々事情がありまして。それでですね、実は・・・・}

 ・・・・

 ・・・・

{なるほど。事情は分かった。だが、バレたら犯罪者の仲間入りだ}

{そこを何とか}

{アザードのギルドマスターにそんな危険な事を頼め、と言うのか}

{そうですか。ふ~ん。頼めませんか。へ~}

{なんだよ。何が言いたいのだ}

{いえね、グライムさんには貸しがありましたよね}

{なんだ、貸しって。お前俺を脅すつもりか}

{いえいえ、脅すなんてとんでもない。ただ・・・}

{ただ、なんだ}

{ゴブリン・ロード討伐は誰でしたかね。その時あなたの命を救ったのは、誰でしたか}

{ぐぬぬ}

{辺境伯。いや、マクレース公爵に恩を売れたのは、誰のおかげで・す・か}

「お前・・・・」

{最近、冒険者ギルドの立場が随分と優遇されているとか。グライムさんの名声も高まったでしょうね。ふ~ん。そうですか。お願いできませんか}

{だー!分かったよ。そこのマスターは俺の旧友だ。連絡を入れておく}

{それは助かります。ありがとう御座います}

{チィ。白々しいく。礼など言いやがって}

{それでは、また}

{ちょっと待て。この際だ、極秘情報を教えてやる}

{極秘情報ですか。ありがたい}

{アジミールの王宮に不審な者達が出入りしている。アジミールが急速に戦争に傾いたのは、それからだ}

{不信な者ですか}

{ああ、お前もアザードにいるなら、見たと思うがイザール教団。そこの司祭と神官。それと、異常に魔力の高い者達だ}

 異常に魔力の高い者か。魔族が人に擬態している可能性があるな。

{イザール教団は冒険者ギルドの方でも調査を進めている。あの教団は危険だ。それに、いつ戦争になってもおかしくない。王都には近づくな}

{はい。分かっています。グライムさん、では}

 念話は切れた。


グライムは大きくため息を付く。

 あれは、分かっていない。ぜったい首を突っ込む。

「全く。強者と言う者は、言う事を聞かない」


もう一つため息を付き、アザードのギルドマスターに連絡を入れるグライムだった。


なんだか、怪しい集団がいる町だな。


宗教かい。なんだか怪しい雰囲気だよ。


いかにも怪しそうだわ。勧誘とかもしつこそうね。

         タマちゃんも気を付けるのですよ。


がう。

(いや、雷獣ですけど・・・)




 

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