隷属の首輪
ついにアジミール王国だ。
早く町にいこうぜ。馬車は寝心地が悪くていけないぜ。
あれ、ベイルってそんなデリケートだったっけ。
どこでも寝れる人でしょ。
私はタマがいますので、モフモフですわ。
レイラもクルーシも一緒に寝ましょう。気持ちいいですわよ。
流石お姉様。わーい。
うれしいわ。モフモフね。
俺も、もふりたいぞ。
国境の砦を出発して、だいぶ離れた場所で馬車を止める。
「もう樽から出て頂いても大丈夫でございます」
樽の蓋を開けると、アルテシアの満面の笑みが飛び込んで来た。
「さぁ、アリスト様。お手を」
アルテシアに引っ張られ、樽から脱出。
身体を伸ばす。
「痛い」
節々が固まっている様だ。
ベイル達も身体を伸ばし、痛がっている。
タマは伸びをするアリューシュの肩でくつろいでいる。
あの雷獣は何処にいたのだ。
「皆さま、父エマルドからお話があります」
そう言うアルテシアの後ろで、真剣な表情で立つエマルド。
「何か、問題でも起きましたか」
エマルドが重い口調で話す。
「はい、アリストさん。今、アジミール王国で重大な問題が起こっています」
「問題って、何だいエマルドさん」
ベイルの問いにエマルドは答える。
「信頼出来る情報が国境で入りました。エルフの方々が王国に強制連行されている様なのです」
「何ですの。強制連行とは」
アリューシュが激高する。
「落ち着け、アリューシュ」
「ですが、アリスト様」
「まずは、エマルドさんの話を聞こう」
「そうですわね」
アリューシュは落ち着きを取り戻す。
「王国は、エルフの皆さんを戦争に利用しようとしています」
アリューシュの顔色が変わる。
「10年前の敗戦。最大の原因が、魔法技術の差です。それを埋める為でしょう」
「たとえ拷問されても、エルフの民が協力するとは限りませんわ」
「アリューシュさんの言う通りです。そこで使われるのが隷属の首輪です」
「そんな物を」
アリューシュは衝撃を受けている。
隷属の首輪。これを付けられた者は主の命令に逆らえない。
主の命令を拒否や敵意を持てば、首輪から全身を蝕む様な耐えがたい苦痛が与えられる。
逆らい続ければ、苦痛は続く。最後は身体が崩壊し、虫けらに再構成される。
そして、死ぬまで虫けらとして生き続ける。
古代の呪詛魔道具。負の遺産だ。
「大量の隷属の首輪が王宮に収められたと報告を受けました」
アリューシュは怒りに震えている。
「そんな、古代の遺物を大量とは。何処から入手したのですか」
「アリストさん。それが分からないのです。入手ルートも扱った商人も」
「そうですか」
あんな遺物を誰が、しかも大量に。この時代に作れる者がいるのか。
「確認は取れていませんが、前後の内容から確実に使用されているでしょう」
エマルドの言葉にアリューシュは目を伏せた。
「エマルドさん。何故、この国にエルフが多いのですか」
単純な疑問を聞いてみた。
「敗戦を期に、エルフの民を優遇し始めたのです。この王国に移住や冒険者登録をすると、金銭の支給、住居を無償提供、地位の向上など。中には爵位を賜った者もいる様です」
「人族と共に暮らすエルフ達には魅力的、甘いエサですわ」
アリューシュの言葉は冷気を含んでいる。
「私は、他種族と共存を望んでいる王だと思っていました」
エマルドは騙されたという顔をしている。
「しかも、この10年の間エルフのミルガルド王国への入国を禁止していた様です」
「逆らった者は」
アリストの問いに、エマルドは不快感のある表情で答える。
「命令を聞かずミルガルド王国に行こうとする者は、捕縛され収監されたそうです」
「そんな事を・・・」
アリューシュは同胞の処遇に心を痛めている。
「アリューシュ・・・」
クルーシがアリューシュの肩を抱く。
ミルガルド王国にエルフが少ない原因の一つがこれか。
しかし、10年もの間情報が漏れないとは。
「申し訳御座いません。私の情報網をもってしても、事が起きるまで気が付きませんでした」
エマルドは深々と頭を下げた。
商人にとって情報は命だ。しかも、他国の王から通行手形を貰い、支店まで持つ大商人だ。
エマルドの情報網はかなりの物だろう。
他国の事とは言え、行動が起きるまでエマルドが知らないとは。
よほどの上位者か一部の者だけが知っていた可能性が高い。
しかし、エルフは人族より力のある種族だ。そう簡単に拘束されるのだろうか。
疑問が残る。
「アリューシュさんは危険です。エルフの特徴でもある耳を、お隠し出来ますでしょうか」
「出来ますわ。でも・・」
エマルドの提案に、アリューシュは抵抗がある様だ。
「エマルドさんに余計な迷惑はかけられない。しばらく我慢してくれ」
「アリスト様。分かりましたわ」
アリューシュはイリューションの魔法で耳を人族の見た目に変える。
「これで大丈夫でしょうか」
「ああ。問題無いよ。エマルドさん、先を急ごう」
「そうですね。先ずは町に行きましょう」
一行は先に進んだ。
アザードまでの道中、軍の駐屯地が2か所設置されていた。
戦争の準備を進めているのだろう。
まぁ、そのおかげで魔物と遭遇する事は無かったが。
3日後、最初の町アザードに着いた。
皆様、アリューシュですわ。
作品を読んで下さいまして、ありがとうございますわ。
投稿が少し、空いてしまう事もあるかもしれませんの。
皆さま、ご容赦して下さいましね。
応援して下さると嬉しいですわ。
今後も皆様に楽しんで貰えるよう、頑張りますわ。
次回また、お会い出来る事を私も楽しみにしていますわ。




