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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第三章~アジミール王国編~

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アジミール王国へ

やっと、アジミール王国だな。

   でもよ、今は情勢が悪いらしいぜ。


どうせ通過するだけでしょう。

   さっさと次に行けばいいじゃない。


そうね、ゆっくり買い物も出来ない国なんて用はないですよ。


あら、そんな国だから、トラブルに巻き込まれそうですわね。うふ


お前、トラブル期待してるな。

        面倒事はごめんだぞ。


何かないと、つまらないですわ。


それは分かるが、どうせなら楽しい事がいいな。

行く手に、大きな城壁が見えて来た。

「あれがアジミールの国境か」

 アリストは馬車から、強固な城壁を眺めていた。

 大きく高い城壁が、山と山の間を遮っている。

「近年、アジミール王国は軍事国家になりましたわ」

 アリューシュは不機嫌な顔をしている。

 軍事国家か。

 遠視の魔法で城砦を観察する。

 城壁の上には槍を弓の様に飛ばす兵器が並んでいる。

 兵士の数も多い様に見える。

「ただ、魔法技術はミルガルド王国には及びませんの。戦争の敗因ですわね」

「今回は、それに勝てると言う事か」

「どうでしょうか。ですが、何らかの策が無ければ10年前と同じ結果ですわね」

 この国には、エルフが多いとエマルドが言っていた。

 だが、人族同士の戦争には加担しないハズだ。

 急に使える魔法使いが増える事もないだろう。

 それなのに、アジミールの方が好戦的に見える。

 何かきな臭さを感じるが、王国間の争いには関わりたくはない。


城砦から見えぬ岩陰に入った場所で、馬車を止めた。

 エマルドがやって来る。

「皆さん、そろそろ樽の中へお願いします」

 そうだった。樽の試練が待っていた。

「本当に大丈夫なんだよな、エマルドさん」

「大丈夫ですよ、ベイルさん。検閲官とは親密な仲ですから」

「それなら、大丈夫だよな」

 ちょっと不安そうなベイルちゃん。

「武器は一旦、馬車の床下に隠して下さい。二重になっております」

 床が二重底なのか。それなりに悪だな、エマルドさんも。

 自身満々だったエマルドが、困った顔になった。

「アリューシュさん」

「あら、どうされました」

「その~雷獣なのですが」

「あら、可愛いでしょう。タマとお呼び下さいまし」

「あ、はい。そのタマさんですが、そのままでは入国出来ません」

「何故ですの。こんなに大人しくて可愛いですのに」

 タマはアリューシュの横でゴロゴロして甘えている。

「いや~可愛いですけれど、雷獣は魔物でして討伐対象なのです」

 エマルドは困り果てている。

「お姉様の親愛なるペットですのよ。この子を討伐などと、私が排除致しますわ」

 アリューシュの目が本気モードだ。

「アリューシュさん、落ち着いて下さい」

 エマルドは大慌てだ。

「おーい。アリューシュ。タマを連れて行ったら大混乱だぞ。何とかならないのか」

「アリスト様まで」

 エマルドは「助かった」という顔をした。

 今までを見ていれば、当然か。

「仕方ないさ。雷獣1体で町が壊滅する程の脅威だ。アリュシアの元に帰せはいいだろう」

 考え込むアリューシュ。

「致し方ありませんわ。タマ、帰りたくなければ小さくなるのですわ」

 タマは「ガウッ」と吠えると、身体が小さくなった。

手のひらサイズだ。

「これなら宜しいでしょうか。アリスト様」

 こんな事も出来るのか。ちび雷獣・・・・カワイイ。

 クッ。スリスリ、モフモフしたい。いや、我慢しろ。俺のイメージが。

「あ、ああ。それなら良いだろう。ねぇ、エマルドさん」

 エマルドは強く頷いた。

 レイラもクルーシもスリスリ、モフモフしていやがる。

 もちろん、アルテシアもだ。

 アリューシュはニコニコ顔だ。

 うらやましい。いつか、バレない様にモフモフしてやる。


エマルドにせかされ、俺達は樽の中へ。

 初体験。何となく不快だ。

 カミール商会一行は無事検閲を通過するのだった。



アジミール王国に入ると、多くの兵士が詰めていた。

 戦争への気運が上がっているせいだろう。

 兵士達と会話が聞こえてきたが、エマルド達をよく思わない者も多い様だ。

 そんな中でもエマルドは平然としている。

 大商人ともなれば胆力が違うのであろう。

 樽の隙間から覗いてみた。

 砦内には、小さな街並みがある。

 宿、飲食、武具などの店と、治癒院に家屋が並んでいる。

 通常より多い兵士の為か、急造した兵舎も多い様だ。

 治癒院により、重傷者の治療を頼む。

 

治癒魔法は連続して施しても効果は変わらない。

 治癒魔法は等級によって、一定の効果を見せた後それ以上の効果は出ない。

 例えば剣で大きく斬られた場合、中級治癒魔法では損傷した筋肉や内臓はある程度修復できる。

 魔力を注ぎ込む大きさにより効果も多少違うが、状態を向上させて所で効果が無くなってしまうのだ。

 重ねてかけても、それ以上の効果は出ない。

 しかし、時間を空けて治癒魔法を施す事により、人体の自然治癒能力が上昇する。

 これを続ければ、数日で完治する。

 完治した後はその効力は失われてしまう。

 失われた肉体の場合は、最上級治癒魔法以外での再生は出来ない。

 現時代では、使える治癒魔法士は確認されていない様だ。


今回の重傷者10人の完治は3~5日掛かる。

 その為、先を急ぐ事にした。

 まぁ、俺達のせいなのだが。

 行く先は決まっている。

 アジミール最初の町。アザード。

 町までは3日。

 その町に、カミール商会の支店があるそうだ。

 カミール商会は相当力があるのだろう。

 エマルドさん達とはその町でお別れだ。

 重傷者とは、帰りに合流するらしい。


しかし、早く砦から離れて欲しいと言うのが本音だ。

 樽の中は狭い。息苦しい。体が痛い。



タマは可愛いですわね。

 ちっちゃいタマは、もっと可愛いですわ~


くそ。スリスリしたい気持ちが抑えられん。


可愛いですね。スリスリしてしまいました。


おー可愛いな。モフモフだ。


なっ!エマルドにクレイズ。お前達まで。ぐぬぬぬぬ。


なんだよ、俺もスリスリするぞ。

 可愛いな~スリスリ・・・・バリッバリッ!


顔から血が噴き出ているぞ、ベイル。

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