勝利と雷獣と違いの分かる女
戦いも決着が付きそうだぜ。
魔物もあと少しで全滅だ。
でも、出番がないわ。
私の華麗な戦いが描かれないなんて・・・・早く終わらせてよー。
錫杖の音が響く。
上空に現れた魔物が咆哮を上げた。
巨大な雷撃がアリューシュを襲う。
アリューシュは辛うじて避ける。
纏っていた雷を巻きこみ、地上に炸裂する。
地上の魔物達が一瞬で黒焦げになった。
私の雷が吸収されてしまいましたわ。何て威力。
「くぁはっはっ。貴様では倒せまい。伝説級だぞ」
デロスは優位に立ち、勝ち誇っている。
アリューシュは魔物を凝視した。
「あれは・・・」
魔物が上空から降りてくる。
雷を纏い、白虎の如く輝く体。首周りの毛は少し長く、王者の風格を要している。
額に大小の角が2本。力強さを感じさせる太い4つ足。
「雷獣」
なぜ、こんな場所に雷獣が。
「まさか雷獣が居るとは、な。貴様の運の尽きだ」
デロスは見下す様な笑みを浮かべた。
「貴方の様な下等魔族が、操れる様な魔物ではないですわね」
「下等か。確かに今は下位魔族だ。だがこの錫杖が私の能力を高めてくれるのだ。そして私は進化をする。上位魔族になるのだよ」
錫杖が振られた。
「殺れ、雷獣よ」
雷獣が苦しんでいる。本能が抵抗している様だ。
「どうした、行け、雷獣」
錫杖を振り、音が大きく響く。
雷獣が空を蹴り向かって来る。
咆哮を上げ雷撃の刃を放った。
アリューシュは3重の魔法障壁を展開。
2枚が破壊され、3枚目の魔法障壁が辛うじて雷撃の刃を止める。
雷獣の鋭い牙がアリューシュを襲う。
アリューシュは叫んだ。
「止まりなさい」
雷獣の牙はアリューシュの眼前で止まった。
やはり、この子は。
「何故動かない。そのエルフを殺れ」
デロスは錫杖を激しく振る。
雷獣は苦しんで、悲痛な唸りを上げている。
「可哀そうに。今、解放して差し上げますわ」
アリューシュの覇気が膨れ上がる。
雷撃魔法。
「ドラゴニック・ライジング」
デロスが魔法で相殺を狙う。
「ダーク・ブラスト」
アリューシュの魔法の威力に、ダーク・ブラストが押されていく。
「バカな、先ほどとは威力が違い過ぎる」
デロスは全魔力を注ぎ込む。
「うおぉぉぉぉぉ」
デロス眼前で大爆発を起こした。
「ぐぉ」
爆炎に飲まれるデロスの前に、アリューシュが現れた。
雷を纏った大鎌が迫る。
錫杖で受けるデロス。
大鎌の一閃が錫杖をへし折った。
衝撃で吹き飛ぶデロス。
「錫杖がー」
アリューシュが叫ぶ。
「タマ!」
雷獣がデロスを襲い、首筋に喰らいつく。
放電。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「終わりですの、下等魔族」
アリューシュの大鎌がデロスを両断した。
左右に分断され、落ちていく。
アリューシュは大きく息を吐いた。
「ムキになり、魔力を使い過ぎましたわ。反省ですわね」
アリューシュは周囲を確認した。
魔物はクレイズやベイル達がほぼ倒している。
後方では、アリストの最強魔法が炸裂した。
「あの魔法はアブソリュート・ゼロ。美しい」
うっとりと見つめるアリューシュだった。
「アリスト様、素晴らしい魔法でしたわ」
アリューシュが満面の笑みで駆け寄って来た。
「そいつは何だ」
アリューシュの横で、デカい2本角の白虎がゴロゴロと喉を鳴らし甘えている。
「タマですわ」
タマ・・・それがこの雷獣の名前なのか。
この素晴らしい姿。相手を委縮させる様な王者風格。
それがタマだと。イメージが湧かない。
「いや、そうでは無くて、なぜ伝説級の魔物がお前の横で甘えている」
「この子は、お姉様のペットですわ」
ペット!
「私の為に、お姉様が送り出してくれたのでしょうか。嬉しいですわね」
「雷獣がアリュシアのペット。従魔では無くペットなのか」
「はい。ペットですわ。お姉様の2つ名は雷帝ですのよ。雷獣がなついても不思議ではありませんわ」
雷獣も驚きだが、雷帝も驚きだ。
確かにアイツは雷撃魔法を好んで使っていた。
今や、雷帝の称号で呼ばれているのか。
ん、待てよ。
「なぜ、その・・タマか、タマだと分かったのだ」
アリューシュは当然の様に言う。
「他の雷獣とは全然違いますわ。一目でわかりましたわ」
アリストは記憶をたどった。
今まで遭遇した雷獣。それとタマ。違いが分からん。
「何処が違うのか、分からないな」
「何を言っているのですか。目が全然違いますわ」
アリューシュは、少し怒っている。
目か。いや、いくら見ても違いが分からん。
「目の何処が違うのかな」
恐る恐る聞いてみる。
「タマの目は、カワイイ二重ですわ。直ぐに分かりますでしょう」
アリューシュに睨まれた。
「あ、ああ。そうだな。カワイイ二重だ」
分からん。
皆と合流すると、大パニックになった。
クレイズは腰を抜かし、団員は逃げ惑う。ベイル達は3人で抱き合い震える。
馬は死んだふりをし、エマルドは気絶した。
まぁ、予想は出来たが・・・・予想以上だった。
アルテシアだけは瞳を輝かせ「カワイイ」とモフモフしていた。
大物になる予感がする。
皆を落ち着かせるのに苦労した。
護衛団員の負傷者は半数に及び、重傷者は10名、死者は出ていない。
重傷者を治療する為にも、早く国境に行かないと。
明日はいよいよアジミール王国だ。
大陸の東、エルフに国。首都エーリエ。
「エスカーニ」
「はっ。アリュシア様、いかが致しましたでしょうか」
「タマが居ないのです。知りませんか」
「見かけませんが、もしや」
「もしや、なんでしょう」
「常におそばを離れないタマがいないとなれば、妹君の所に・・・・」
「これは、行きましたね。タマも、仕方の無い子です事」
「ここ、100年程お会いになっておりませんので」
「はぁ~当分帰って来ませんね」
西の空を見上げ、微笑むアリュシアだった。
タマ、可愛いですわ。
も~う、たまりませんわ。もふもふ
タマだけに、タマりませんわ。とは、ダジャレ攻撃か。
( ゜д゜)ハッ!
・・・・・・ハズカシイ・・ですわ。




