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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸
第二章~王都、旅立ち編~

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国境の砦ベラジーン~温泉大作戦~

いよいよ国境だな。

 ここを過ぎればアジミール王国だぜ。


でもさ、国境間は危険地帯だって聞いたよ。


ふふふ。私のレベル・アップした魔法をお見舞いして上げます。

     毎日鍛錬したのです。成果を見せつけるのです。

     (魔力操作の鍛錬を積んでいる)


また、暴走しないといいけどな。


あらあら、ここでゆっくり休養致しますのですわ。




襲撃から、翌日。

前方に見える岩山の合間に、大きな城壁が見えて来た。

「あれが国境か」

 ベイルは身を乗り出し、眺めている。

「ええ、あれが国境の砦ベラジーンですわ」

 アリューシュは大鎌の手入れをしながら答えた。


大きな谷間を塞ぐ様に、城壁が築かれている。

 城壁は高く、かなり長い。

 アジミール王国へ行くには、ここが唯一の通行可能な場所だ。

 他は大きな川や断崖、険しい山々で隔てられている。

 300年前、ここには商業都市があった。

 近づくにつれ、都市の痕跡が見えて来る。

 朽ち果て遺跡の様になった家屋や城壁跡。倒れた塔。

 人魔大戦中は多くの民が避難していた町。

 300年前か、俺には昨日の事の様だ。

「アリストさん」

 エマルドが声をかけて来た。

 馬を馬車に寄せる。

「念の為、髪の色を変えて下さい」

「はい。所でエルフのアリューシュは大丈夫ですか」

「ええ、この国ではエルフを余り見かけませんが、アジミールでは多いので問題ありません」

「了解しました」

 アジミールではエルフが多いのか。

 アリューシュの知り合いでもいるかな。

 魔法で黒髪を茶色に変えた。

「茶色の髪もステキですわ」

 アルテシアが身を乗り出し褒め称える。

 侍女が落車しない様、アルテシアを必死に引っ張っていた。

「お、似合うじゃないか」

 隣で馬を駆るレイラにも褒められた。

 うん。恥ずかしい。


城壁に近づくと、重厚な門が現れた。

 通行するのはカシミール商会の荷馬車だけの様だ。

 門の左右に兵士の詰め所がある。

 広い谷間の右側には家屋や店などが並び、左側には軍事施設が建ち並んでいる。

 通常より、兵士の数は多い。

 ちょっとした町程の規模だ。

 兵士達が出迎えてくれた。

 やはり、空気は張り詰めている。兵士達の表情も硬い。

 戦争になればここは最前線。仕方の無い事だが。

「やぁ、エマルド。待ちくたびれたぞ」

「これはアトニス様。ご無沙汰しております」

 アトニスは馬車から降りたエマルドと挨拶を交わす。

 アトニスはこの砦の指揮官らしい。50才過ぎの精悍な顔と引き締まった体格。

 強者の風格を纏っている。

「これはアルテシア嬢も御一緒か」

「ご無沙汰しておりますわ、アトニス様」

 アトニスは笑顔で会釈をする。

 見た目に寄らず、随分と気さくな指揮官だ。

 務めて明るく振舞っているのだろう。

「では武具と食料を納めてくれ。ルーニウス、頼んだぞ」

 ルーニウスと護衛団の半数が荷馬車と共に倉庫へ向かった。

「日が暮れて参りました。予定外もありましたし、出発は明日に致しましょう」

 エマルドは暮れていく空を見上げた。

 いらぬ襲撃で手間取った分、遅くなってしまったか。

「私は書類と手続きがありますので、夕食でお会い致しましょう」

 エマルドは一礼すると執事やアルテシアを伴い、アトニスと兵舎に向って行った。

「アリスト、後でな」

 クレイズが残った部下を連れてエマルドに着いて行く。


宿でくつろぐか。

 そう思って振り向くと、アリューシュを先頭に女性3人が立っている。

「おっ、なんだ」

「アリスト様にお願いがあるのですわ」

「何だ、アリューシュ」

「うる覚えなのですけど、ここに温泉があったと思うのですが」

 温泉・・・・ああ、あったな。

「その、場所が分からないのです」

「今は、埋まってしまったのだろう。諦めろ」

「アリスト~。身体拭いたり、川につかるのも飽きたよ」

「私も温泉に入りたいわ~」

 レイラとクルーシもおねだりしてくる。

「俺も温泉、入りたいぜ」

 ベイル、お前もか。

 確かに、温泉は別格だ。風呂も王都を出てから入っていない。

 気持ちは分かる。しかし、な~

「アリスト様~」

 アリューシュがおねだりしてスリスリしてくる。

 くっ。か、可愛いな・・・・チィ、俺とした事が。

「わかったよ、待っていろ。一応、アトニスさんに相談してくるから」

 女性3人は大喜びだ。

 だいたい湯につかるなど、貴族か富豪でもない限り出来ない事だぞ。

 まぁ、アリューシュは王族だから仕方ないか。


アトニスに温泉を掘る為、敷地内での爆発系魔法の使用許可を取りに行った。

 すると、アトニスに大賛成だと喜ばれた。

 戦争の危険が高まる中、兵士達の疲労回復、精神的疲労を取る為に是非と言われた。

 エマルドもアルテシアも大賛成だった。

 クレイズ達護衛団も控えめに喜んでいる。

 兵士を総動員して温泉掘削大作戦が開始された。

 早くしないと日が暮れてしまう。


そして現場へ。

 俺の記憶だけが頼りだ。

 砦から不毛地帯方面は火山地帯だった。

 この時代、山々は落ち着いている様だ。

 だが山肌はむき出しになり、今も岩山地帯だ。

 山に行けば温泉が湧いているだろうが、魔物が多く危険だ。

 それに、熱すぎる。

 しかし、300年前には町から温泉が湧いていた。

 しかも、適温。

 ここに温泉がある。いや、あった。


風化した都市の残骸を乗り越え山の方角へ進む。

 ゾロゾロと付いて来る兵士達。

「たしか、この辺りだった」

 大地に手を付け、魔力を一定の力で地中に流す。 

 それを繰り返す。

 何度目か、魔力の波動が乱れる地点を発見。

「ここだー」

 指を指した地点に、スコップを持った兵士達が群がる。

 掘る、掘る、一心不乱に掘る。

 瞬く間に穴が深くなる。

「アリストさん。地面から湯が染み出て来た~」

 兵士の一人が叫んだ。

「よ~し。全員離れろー」

 兵士達の中から、レイラの声が響く。

 穴から飛び出す兵士達。その中に、つるはしを持ったレイラの姿を発見。

 お前も掘っていたのか。レイラ。

 ベイルに護衛団員も紛れている。

 うん。お前達は当然だ。

 全員が安全地帯まで離れる。

「では行くぞ」

 目的は深く穴をあける事。

「アース・ブレイカー」

 穴の底が振動し、爆発した。

 爆音が響き、舞い上がる土砂や瓦礫。そして、大量の温水が噴き出した。

「でた~」

 大歓声が起きる。

 皆、汗だくだ。


こんな魔法の使い方なら、楽しいのにな。

 一人、思いにふけるアリストだった。


アトニスには大いに感謝され、友好度は爆上がりだ。

 温泉の周りを囲い、簡易的な仕切りを付ける。

 エマルドが明かりの魔道具を無償で提供してくれた。

 ありがたい。


夜、皆が押し寄せ温泉は大好評だ。

 男性は大行列だ。女性も砦に大勢いるが、男性よりは列が短い。

 女湯には不透明で真っ白な結界が張られている。

 アリューシュのイヤイヤ魔法シリーズ。

 見ちゃイヤ結界。

 アイツは300年、何をしていたのだろう。

 ただ、女性達は安心して温泉に入れている。

 ん~役に立っている、のか。

 アイツは天才なのか。そうなのか。

 いや、落ち着け。もう直ぐ俺の順番だ。

 薄明りの中、入る温泉は最高だ。

 順番はクジで平等に決めた。

 後ろにはわくわく顔のエマルドも並んでいる。

 ベイルは俺より早く入りやがった。


何故か、イラッとする今日この頃。


しばらくして、俺の番が来た。

 300と5年ぶりに温泉を堪能したのだった。


温泉っていいな。最高だぜ。


いいね、私も気に入ったよ。


もう、最高ね。毎日入りたいわね。


エルフの国に行けば毎日入れますわ。

 天然炭酸温泉や、濁り湯などもありますの。

 美白効果や、疲労回復、魔力回復、ケガなどの治癒効果もありますののよ。

 (ドヤ顔)


すごーい。早く入りたいわ。

   (美・白・効果・・・・いいわ)クルーシ談


まぁともあれ、いよいよ国をでるな。ベイル。

  

ああ、楽しみだぜ。  


次回から三章突入だ。

 俺達の冒険、楽しみにしてくれよ。



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