戦闘終結と魔族
戦闘もいよいよ終盤だぜ。
俺の活躍が少ないのが不満だが。
私も少ないわ。
もっと出番ちょーだい。
乱戦の中、襲撃者の動きが止まる。
「どうした、来ないのか」
アリストの無機質な声が、より恐怖を与えた。
「貴様ら、びびってんじゃねぇ!殺れ」
男の怒声が響く。
男達は恐怖を振り切る様に、怒声を上げながら向かって来た。
護衛団は剣を構え、迎え撃つ。
アリストは敵男達の中に飛び込み、3人を斬り捨てた。
殺気が迫る。
「黒髪、死ね」
横から剣が迫る。
アリストは剣を弾き、上段から剣を振り降ろす。
男は後方に飛んで避けた。
背後から剣が迫る。
回転して剣を弾き、足払いを繰り出す。
男は足を取られ、よろめいた。
追撃をかけたアリストに背後から剣が迫った。
横からも剣が迫る。
逃げ道を塞ぐ、息の合った連携だ。
飛び上がり、伸身宙返りで攻撃をかわした。
「チィ、やりやがる」
男が吐き捨てた。
「兄貴、コイツ強いな」
「だから2人で殺るんだ」
兄弟なのかか。息が合う訳だ。
「てめぇは、俺に恥をかかせた。死んで償え」
兄貴が苦々しく言う。
誰だ、アイツは。
「兄貴、コイツ殺ったらクレイズも頼むぜ」
「クレイズを殺しに来たか」
「ああ、殺してやる。あの野郎、俺に恥かかせやがった。示しがつかねぇんだよ」
恥じ?それに見覚えある顔。
ああ、ロージスでクレイズに投げ飛ばされた男か。
「クレイズは忙しい。代わりに俺が始末してやる」
「へっ。お前は兄貴の標的だ。始末されるのは、てめぇだ」
兄貴は俺に恨みがあるのか。誰だ。
弟と会話をするアリストの背後に回り込む兄貴。
弟の視線が一瞬流れる。
背後から迫る兄貴。
剣が激しく撃ち鳴る。散る火花。
「チィ、防ぎやがった」
アリストはあえて、剣を弾かずに顔を近づけた。
「お前、誰だ」
兄貴は激高し、距離を取る。
「ふざけるな。俺を覚えてないだと。ドランのレンだ」
ドラン、レン?
「腰抜けの冒険者か」
「キサマ~」
「こんな場所まで追って来るとは、物好きだな」
「お前達が弟のいる町に行くと聞いてな。絶好の機会だろ」
誰かが情報を流したのか。
「そしたら、どうだい。弟のロイも、お前に連れを殺したいと言いやがる」
兄貴は高笑いで剣を構える。
「貴様が多少強かろうが、俺達兄弟は最強だ」
兄貴、いやレンが向かって来る。
兄弟揃ってクズだな。
アリストが上段からレンを狙う。
横に飛んでかわすレン。
Aランクの冒険者だったな。腕はそれなりか、粘着質だが。
レンが飛び込んで来る。
後ろのロイも動いた。
交互に斬りかかる兄弟。
剣が打ち鳴り、火花散る。
素早い剣捌きでアリストを追い詰めていく。
アリストが剣に力を込める。
レン剣を大きく弾く。
一瞬、連携が乱れた。
一気に間合いを詰め、レンに肘鉄を喰らわした。
「グハッ」
吹き飛ぶレン。
後方から弟が迫る。
振り向きざま、横一閃。
「ぐはぁ」
弟の腕から胴へと剣が走る。
腕が舞、ロイは崩れ落ちた。
「ロイ~」
レンの叫びが響く。
「うおおぉぉぉ」
激高し突っ込んで来るレン。
振り下ろされた剣をかいくぐり、腰から肩にかけて切り裂いた。
「ヴガァァ」
よろめきながら、ロイの元に歩む。手を伸ばし、力尽きた。
「クズでも兄弟か」
不意に、前方で爆裂が起こった。
敵が派手に吹き飛んでいる。
上空を見上げる。
魔法封じの結界が、ちょうどこちら側半分が無くなっていた。
振り向くと、馬車の中からクルーシが杖を掲げている。
フレイム・バーストを連発している様だ。
クルーシは頬を膨らませ、目が横棒だ。イライラモード発動中だな、あれは。
戦闘中にも関わらず、思わず笑みが出る。
そんな姿を見ていると、心の黒い部分が晴れて行くような気がした。
仲間か。やはり、大切だよな。
お、護衛団を忘れていた。
「おーい。危ないから戻ってこ~い」
急いで護衛団を引き戻す。
5つ6つと続けて爆裂が起こる。
逃げ惑い吹き飛ぶ敵、男達。
逃げ惑い、慌てて戻る護衛団員達。
クレイズは次々に敵を斬り倒す。
負傷した護衛団員が徐々に増えて来た。
ポーションで回復させているが、ジリ貧状態だ。
「くそ、実践が少ない者はキツイな」
それでも敵はかなり減っている。
「クレイズさん」
ベイルが駆け付けた。
「ベイルさん、無事だったか」
クレイズは安堵の笑みを浮かべた。
ベイルは上空を指さした。
「あれ見なよ」
上空を見上げるクレイズ。
結界が消えてゆく。
「結界が・・」
前方で雷撃が落ちた。
続いて突風が吹き、敵男達が次々に切り倒される。
「うちの魔法使いか」
「ああ、レイラがやってくれたみたいだぜ」
「そうか。あ、負傷者の手当てを」
「もうアリューシュとクルーシが手当てしているぜ」
「ありがたい」
「クレイズさん、残りを一掃しようぜ」
「おう」
クレイズは奮い立ち、ベイルと共に戦場に駈けだした。
エマルドは泣いて感謝をした。
アルテシアも皆に声をかけ、ねぎらっている。
馬車も荷も人も、すべて無事だ。
護衛団員の負傷者も、治癒魔法で完治出来る範囲で済んだ。
「倒した者を埋めたいのだが」
クレイズの問いに、アリューシュが答えた。
「埋めている時間はありませんわ。死臭につられて魔物が集まって来ますわ」
アリューシュの言葉に肩を落とすクレイズ。
「いずれ、魔物が処理してくれますわ」
「そうだな。悪党でも死ねば、皆一緒だ。祈りだけでも捧げよう」
クレイズは倒れている者に祈りを捧げる。
心根の優しい人だ。
ベイル達も手を合わせていた。
こいつ等も純粋な心を持っている。
不意に、何か得体の知れぬものを感じた。
周囲に不穏の気配は感じられない。
気のせいであればいいのだが。
「では装備の確認をして出発しよう」
クレイズの号令で、一行は出発した。
アリスト達が立ち去り、空が薄暗くなった頃2つの影が戦闘後地に現れた。
「フン、全滅ですか。使い物になりませんね」
男の頭には角が二本生えている。上位魔族だ。
上位魔族は周りを見回す。
「あれはまだ、生きていますね」
傍にいた異形の姿の魔族が、レンを引きずって来る。
上位魔族はしゃがみ込み、レンの顔を覗き込む。
レンは虫の息だ。
「あなた、復讐したいですか」
レンの口が動く。
「ふ・・く・・・・しゅ・・・・ガハァ」
血を吐き出した。
「では、これを」
上位魔族はレンの口に、黒い球をねじ込んだ。
「がぁぁぁぁ・・・ぐわぁぁぁ」
レンは苦しみだし、身体が変形していく。
異形の魔族は体が硬直したように、直立不動だ。
上位魔族は、レンと異教の魔族を見る。
「このゴミを使い、黒髪のアリスト一行を始末なさい」
「はっ」
「次は無いですよ。デロス」
デロスと呼ばれた異形の魔族は深々と頭を下げた。
「必ずやアリスト共を殺してまいります。バリーゼ様」
レンの身体は異形な姿に変わっていった。
結界壊すのも面倒だったよ。
疲れた。
もう、あんなのはイヤですわ。
今も悪寒が・・・・
私もストレスがたまったわ。
俺も粘着質の相手は御免だ。
なんだよ、みんな文句ばっかりだな。
いよいよ次は国境だろ。
なんか、良い事あるって。
だと良いな。




