弓矢と激怒と面倒事
私は人が羨む、可愛い有能な魔法使い。
ですけど、魔法封じの結界とか何なのかしら。
私の出番をちょーだい!
倍以上の襲撃者との乱戦が続く。
最後尾の馬車の中。
「私達も、じっとしている場合じゃないわよね」
クルーシは立ち上がった。
「でも、魔法が使えないのじゃ、何も出来ません」
女魔法使いが、諦めた様に答える。
「そうねぇ・・何かないかしら」
馬車の中にはクルーシと4人の魔法使いが身を潜めていた。
馬車に矢が2本飛来し、魔法使い達をかすめ壁に刺さる。
「きゃー」
悲鳴が上がる中、クルーシは閃いた。
「これよ」
クルーシは弓矢を探し、拾い上げる。
「これならいけるわ」
「弓を使った事があるのですか」
女魔法使いが心配そうに声をかける。
「無いわ」
自身満々に答えるクルーシ。
「えっ」
「無いけど、やれば出来るものよ」
「危ないですよ、味方に当たったら・・・」
「仲間が戦っているのよ。助けないと」
クルーシは女魔法使いの言葉を遮り、弓を構えた。
弓を引く手がプルプル震えている。
不安そうに見つめる魔法使い達。
「おい、クルーシ。何やっている」
「ひや~」
クルーシは驚き、弓の引き手が離れた。
「レイラ、ビックリさせないでよ」
「おい、矢が」
矢はゆるゆると、山なりに飛んでいる。
「矢、飛んでいるぞ」
「飛んでいるわね」
レイラとクルーシの視線は矢を追う。
魔法使い達の視線も矢に釘付けになる。
プスッ。
味方に襲い掛かる、敵の肩に刺さった。
「当たったな、クルーシ」
「当たりましたね、レイラ」
魔法使い達の歓声と拍手が起こる。
テッテレッテッテ~。
クルーシは「弓使い」を覚えた。
・・・・・・
・・・・・・ゴホン。
「クルーシ、危ないから隠れていなさいよ」
「私だって、みんなを助けようと。じゃ、レイラ。結界、早く解除してよ」
クルーシは口を尖がらせ、プンプンしている。
あきれるレイラ。
「しょうがないね。少し待ってな。結界を張っているヤツを倒せばいいんだろ」
「気を付けてね、レイラ」
「任せな。お、から馬がいるじゃない。丁度いいね」
レイラは馬に乗り、結界の光の元を目指して駆け出した。
大男の剣が空を斬る。
「ちょろちょろするなよ。間違えて殺しちまう」
大男はニヤ付いた顔で、仲間に指示を出す。
5人の敵がアリューシュに向かって来る。
「不快ですこと」
大鎌が閃き、死神が魂を狩り取るかの如く、5人の首を狩り取った。
首が落ちた仲間の影から、大男の大剣が迫る。
仲間をおとりに使いましたのね。
後方に飛び回転して剣をかわす。
アリューシュの左太ももに痛みが走った。
「チィ、外したか。足1本無くせば、大人しくなると思ったのにな」
ニヤける大男。
かがみこむアリューシュ。
太ももに血が滲む。
「こんな変態に、私の美脚をキズを付けられるなんて・・・・」
アリューシュは怒りに震えた。覇気が漏れ出す。
「不甲斐ない・・・・」
空気を読めない大男は、不快な笑みを浮かべる。
「震えているのか。安心しな、優しく可愛がってやるからよ。グヘヘ」
アリューシュに近づき、剣を構えた。
「あぶねぇ女だからな。足じゃなく腕1本、貰っとくぜ」
覇気が噴き出し、眼力だけで相手を殺しそうな目で大男を睨む。
「ゲスが!この世から消してくれる」
大男が大剣を振り下ろす。
「諦めて大人しくしろやー」
大剣は空を斬り、アリューシュは大男の頭上を華麗に舞う。
頭上から一閃、肩を抉る。
「うがぁ」
大男の背後に華麗に降り立ち、放つ。
「無限花斬翔」
アリューシュが放つ神速の連撃が、大男を巻き上げる。
「ガァァァァ」
斬り刻まれながら宙を舞い、鮮血を撒き散らす。風に舞う花びらの様に。
馬を降りたレイラは、そっと結界から外に出た。
体の痛みを多少感じる。
「イタッ。けど、通れるんだねこの結界」
私の魔力が殆ど無いからかな。まぁいいか、通れたし。
などと思い、岩陰から覗き込んだ。
「お、あそこだね。魔法使いに、護衛が2人か」
岩場の影に隠れ、魔法封じの結界を発動している。
これは、一か所潰せば結界は消えるのかな。
まぁ、とりあえず潰すか。
護衛の前に躍り出た。
「うお、敵か」
護衛が剣を抜く前に、レイラの剣が閃く。
2人の護衛は、成す統べなく倒された。
慌てて、魔法を放とうとする魔法使い。
魔法封じの結界が少し揺らぐ。
魔法陣が浮んだ。
レイラ剣が魔法発動より早く魔法使いを捕らえた。
「うがぁ」
魔法使いは血を吹き、沈黙した。
空を見上げるレイラ。結界は消えていない。
「消えない」
足元で光る魔晶石。
「これかな」
剣で叩き割る。
魔法封じの結界が消え始めた。
「お~消えていくよ。これでクルーシの見せ場が出来るね」
結界が形を変えて残る。
「あれ、半分残っちまったよ。他も潰さないとダメね」
レイラはため息を付いた。
「はぁ、面倒な結界」
レイラは馬に乗り、次に向かった。
新しい技、覚えたな。クルーシ。
出番もあったし。良かったな。
ええ、レイラ、私はやれば出来る子なんです。フフン。
お、おお。そうだな。凄いぞ。
(マグレは怖いな~)
何か言いましたか。ベイル。
いいえ。何も。
(心の声が聞こえたのか・・・恐ろしい)
私も頑張りましたのよ。キモイのきらい。
ですのに。
そうですわ。今度 キモいのイヤ 魔法を考えましょう。
そんな抽象的な魔法は無理だろう・・・・・




