父からの伝言と不審な集団
もう直ぐ国境だ。
国から出た事が無いから楽しみだぜ。
そうだね。私も楽しみだよ。
まだ、3日はあるのよ。
気を抜いちゃダメよ。
そうですわ。戦争も近いと、噂もありますのよ。
危険な地域ですのよ。
戦争なんてばからしい。酒でも酌みかわしゃいいのによ。
その通りだな。ベイルのくせに、何か良い事言いやがって。
ん、そうでもないか。ベイルだし。
まぁ、楽しくいこうぜ。な、クルーシ。
もう、レイラったら。
今日は、古い歴史のある村に滞在するらしいわ。
楽しみね。
よーし。本文にいこうぜ。
国境の砦まで3日。
往来する者は、ほぼいない。
左右に雄大な山々を見渡せる平原を行く。
ここを抜けると砂岩地帯に入る。
初日は街道沿から少し離れた村で宿泊させてもらう。
戦争時に、救護施設の設置や補給地点などで重要視された村だ。
500人程の村だが、戦争の渦中を生き抜いた村民達。
男女問わず戦闘に長けている者が多い。
そして、王国最古の村らしい。
初老の男性が出迎えてくれた。
「村長、お世話になります」
「エマルドさん。お久しぶりで御座います。ようこそエランへ」
エマルド一行を村の宿泊施設に案内する。
普段は村の会議に使っている建物だ。
この辺りの魔物は高ランクが多い。
なので、警備は村の若者が日常的にしている。
食事は伝統的ね郷土料理がふんだんに用意された。
俺には食べなれた料理がおおかった。
他の者は珍しと言っていたが。味は旨かった。
食事の後、村長に話し掛けられた。
「村長のディレイスと申します。少々話をいいでしょうか」
「はい。アリストです」
「黒い髪で英雄と同じお名前なのですね」
「そうですね」
「この大陸では、黒髪は特別なのです。今から話す事はこの村に伝わる言い伝えです」
ディレイスは俺の顔をじっと見る。
「この村は人魔大戦のおり、魔族に襲われました。村人は殺され逃げ回り、絶望が支配していました。そんな村を救ってくれたのが黒髪の男でした」
俺ではない。だれだ。
「名はオリアス。この村を救った英雄です」
オリアス!
父の名だ。
「魔族を倒した後、彼は言いました。この先、私以外の黒髪を持つ者が現れるかもしれない。これから訪れるであろう平和の日々が壊れた時、真実を知る必要がある。その者に、エルフの国に我らの真実を置いて来た。と伝えてくれと」
父がこの村を救ったのか。
「そして、魔王は私が倒す。と」
「以来、黒髪の者は今日まで現れませんでした」
ディレイスは微笑む。
「やっと我が一族の約束を果たせました。300年以上かかってしまいましたが」
ディレイス瞳に安堵の涙が見えた。
翌日の朝、エマルドは謝礼金を村長に手渡しカミール商会の一行は村を出発した。
村の出口でディレイスと数人の村人が見送りをしてくれる。
見送るディレイスは思いを馳せた。
代々伝わる言い伝えでは、戦う意味を問うた時オリアス様は言った。
「私は英雄ではない。ただ、愛する者の為に戦う。息子が3才なのだ。平和な世界を見せてやりたい」
と言って笑った。と伝わっている。
子の名はアリスト。
何十代も口頭で伝わった話だ。正確に伝わっているかは疑問も残る。
あの若者の名はアリストであった。
300年前の英雄の名もアリスト。
世の中、不思議なものだ。
俺は父の事を考えていた。最後に父を見たのは5才の時だった。
そして8才の時、父が死んだと聞かされた。
その父もヨシュアもエルフの国に行けと言う。
俺に残した伝言か。それとも生き残った誰かに残した伝言か。
魔王は倒した。平和な時代が壊れる時・・・・
ヨシュアが言っていた魔王復活が起こるのか。
俺がこの時代に送られた事も意味があるのか。
真実を知る事が必要なのだろうか。
真実とは何だ。エルフの国に行けば分かるのか。
そんな事を考えていた。
馬車は平原を抜け、昼過ぎに砂岩地帯に入った。
早々に魔物に遭遇。
砂地や砂岩地帯に生息するサンド・ワームだ。
巨体を地中に隠し、真下から襲ってくる。C+の魔物。
馬や馬車の音で引き付けてしまった。
至近の砂地から飛び出して来た。
馬車を丸飲み出来る程の巨体だ。
「アリューシュ、面倒だ。濡れるのイヤ、を全体にかけられるか」
「はい・・・短い時間なら・・」
アリューシュは恥ずかしそうに答える。
サンド・ワームが地中に潜った。
「アリューシュ、今だ」
アリューシュは濡れるのイヤで全体を覆う。
「ドラゴニック・ライジング」
雷撃系上級魔法を砂地に叩き込む。
大地に電撃が走る。
「グシャァァァァァ」
サンド・ワームは全体から煙を上げ、地中から飛び出した。
そのまま沈黙。
苦しそうな表情で、魔法を解除するアリューシュ。
流石この大きさの、動く結界はきつかったか。
だが、一撃で倒した。
クレイズ達もベイル達も目が点だ。
岩場を走り、サンド・ワームを警戒しながら進む。
日が傾きかけた頃、岩山地帯に入った。
左右に切り立った岩壁が連なる谷間の街道。
後方を走る馬車に、アリューシュの馬が寄って来る。
「アリスト様、周辺から不穏な集団が迫っていますわ」
「こんな岩床地帯に大勢の人だな」
「100人はいますわね。盗賊でしょうか」
「旅人も通らない今の時勢、この人数の盗賊は考えにくいな」
後方で、崖が崩れた様な音が響いた。
「退路を塞がれたか」
「その様ですわね」
「誰かをねらっての襲撃の可能性が高そうだ」
「私かしら、それとも・・・」
「分からないが、ご苦労な事だ」
ベイルが馬を寄せて来た。
「アリスト、今の音は」
「後方でがけ崩れだ。道を塞がれた」
「がけ崩れ、塞がれた。もしかして」
「ああ、盗賊まがいが100人。この先で遊びたいらしい。クレイズさんに伝えてくれ」
「おいおい、100人が遊びたいって。俺には悪党の友達はいねぇーぞ」
ベイルはブツブツ文句を言いながら、前方に駈けていった。
「アリューシュはエマルドさんに。結界も頼む」
「はい。了解ですわ」
「アリスト、襲撃かい」
レイラが剣を取り、馬車から身を乗り出す。
「ああ、襲撃だ。戦闘の準備をしよう」
馬車には俺とレイラ、クルーシ、護衛団の8人。
全員が戦闘態勢に入る。
アリューシュはエマルド馬車に乗り込んでいる。
「襲撃ですか。それも100人以上いると」
エマルドは不安を隠しきれない。
執事や侍女も不安な表情を浮かべた。
「お父様、大丈夫です。クレイズさんやアリスト様、それにアリューシュ様までいますもの」
「アルテシア嬢の言う通りですわ」
「念のため結界を張りますわ。戦闘中、出てはいけませんのよ」
アリューシュは馬車から馬上に飛び乗った。
その華麗な姿に「美しい」と目を奪われるアルテシアだった。
「おい、本当にここ通るのか」
「兄貴、砂地の迂回路は危険地帯だ。サンド・ワームが出るからな。安全な行路はここしかない」
「だが、向こうにはSランクのエルフがいたはずだ。魔力感知でバレてるぜ」
「魔法使いか。バレるのも想定内だろ。退路は立ったんだ。奴らは進むしかねぇよ」
「そうだな。予定通りいくか」
「大枚払って雇ったんだ。使わねぇと」
「ククク、魔法使いは封じたぞ。黒髪、後悔させてやるぜ」
「兄貴、クレイズも頼むぜ」
「ああ、皆殺しだ」
男は狂気じみた笑みを浮かべた。
ま~た、なんか来たよ。バカは多いんだな。
俺の戦斧の餌食だぜ。
私達にケンカ売るなんて後悔させてやるよ。
私の剣がうずいているよ。
そうよ。私の大魔法で木っ端微塵よ。
100でも200でも来なさい。ふふふふ
3人共、張り切っているのですわ。
私もがんばりますわ。
人族など。私のデス・サイズ・グリード(大鎌)の錆にしてくれましょう。
おーほっほっほっ。
なんだ、こっちが悪者っぽいな。
だんだん、気性が激しくなっている様な・・・・・
この先が、不安だ。




