エマルドの恩返しと依頼
前回は雨も凄かったわね。
アルテシアも凄かったですわ。
それは、削除してくださ~い。
今回はエマルドの圧も凄かった。
あらあら、親子で似ていますのね。
夜、雨は小降りになっている。
野営地に結界を張る。魔物も雨も防いでくれる。
野営の食事は豪華だ。
流石、大店の商人。野営とは思えない食事だ。
アルテシアは上機嫌で、すっかり皆と仲良くなった。
「素敵なお姉様方と知り合いになれるなんて、とても嬉しいです」
「私達も可愛い妹が出来た気分よ。ね、レイラ」
「そうね。私も嬉しいよ」
「私が一番上のお姉さんになるのかしら。ちょっと複雑ですわ」
笑いが起き、女子で盛り上がっている。
食事が終わり、エマルドが黒い飲み物を持ってきた。
以前、飲ませて貰ったカフィだ。
「アリストさんカフィです。どうぞ」
「ありがとう御座います」
「ベイルさんも、どうぞ。少し苦みがありますが、美味しいですよ」
一口飲む。香りは良いが、苦い。
だが、2回目のせいか、何となく癖になる味だ。
ベイルは渋い顔で俺を見る。
見ないでくれ。
「どうですか。癖になるでしょう。徐々に民衆にも浸透しますよ」
笑顔のエマルド。
確か南の方からの取り寄せとか言っていたな。
確かに癖になりそうだ。
カフィを飲みながらたわいもない話をしていると、ベイルが不意に尋ねた。
「エマルドさんはアジミール王国にも行けるのかい」
「はい、アジミールの王様から通行許可書を頂いておりますので」
「おい、アリスト」
その手があったか。ベイル、たまにはやるヤツだ。
「アリストさん、アジミール王国に御用でもあるのですか」
「エルフの国に行くのに、必要なので」
「エルフの国ですか、何かご事情も御有りなのでしょう」
エマルドは笑顔で頷く。
「今、アジミール王国との関係が悪化しています。ご存じでしょうか」
「はい」
「普通に入国は出来ませんが、手はあります」
「本当ですか」
「はい。商品の中に隠れて頂きます」
えっ。
エマルドは「普通ですよ」みたいな顔で言っている。
「護衛や従者ですと入国時と出国時の人数の違いを咎めらます。捕まってしまいますね」
ベイルが不安そうに尋ねた。
「でもよ、荷物検査とかされるだろう。槍で突いたりするやつ」
エマルドは笑った。
「はははっ。ベイルさん、大丈夫ですよ。そこは、色々やり様があると言うもの」
「そうなのか」
「はい。我が商会はアジミールでも貴重な鉱石や我が国の特産品を多く扱っております。優遇して頂いておりますので」
「そうか。安心したよ。槍で刺されるのかと思ったぜ」
バレたら刺されるぞ、ベイル。
まぁ話からして、警備兵を手の内に入れたのだろうけど。
「一つ、懸念があります」
「何でしょうか」
「アリストさんの黒髪です。アジミール王国でも黒い髪は見かけません」
「目立ってしまうと」
「はい。入国規制をしていますから、黒髪を見れば捕まる可能性があります」
「なるほど。でも大丈夫です。髪の毛の色を変える魔法がありますから」
「そんな魔法もあるのですか。そうですか。それならば、問題ありません」
「では、お願いします」
「はい。喜んでお手伝い致します。アリストさんは、2度も命を助けて頂いた恩人ですから」
エマルドは快く承諾してくれた。
「所で、アリストさん。腕の良い鍛冶職人を知りませんか」
「鍛冶職人ですか」
「はい。実は王国兵士団から武具に注文を受けたのです」
王国兵士団、平民主体の王国軍。指揮官はガウス将軍だったか。
「武具も扱っているのですね」
エマルドは慌て答える。
「私はこの国の民です。勿論、武具の扱いは国内のみ。他国へ売ったりは致しませんとも」
「いいえ、疑っているのではありませんよ」
「いや、はははっ。手厳しいですな」
「それで、何故ですか」
「はい。鍛冶職人の長が暴漢に襲われ、重症を負いました」
「襲われた」
「はい。同業者の仕業でしょう。長には済まない事をしてしまいました」
「騎士団は」
「証拠はないのです。暴漢も後日、死体で発見されました」
証拠隠滅、利権の奪い合いか。
商売も戦争も中身は変わらない。
「工房の質が落ちてしまいました。名工と呼ばれる鍛冶職人は数人しかおりません」
「だから私達に」
「名のある冒険者の方でしたら、私どもの知らない隠れた名工をご存じかも知れないと」
「隠れた名工ですか」
「数日中に稼働しなければ納品期日に間に合いのです」
商人にしては正当な方だろうか。種族差別も無い様だが。
「粗末な武具では国防を担う兵士の命は守れません」
話を聞いていたベイルが耳元で囁いた。
「なぁ、ガルフの爺さんはどうだ」
あのドワーフの爺さんか。
「でも、頑固そうだぞ」
「確かに頑固だが、腕は王国一だぜ」
2人の話に聞き耳を立てていたエマルドが興奮する。
「ご存じなのですか。名工を」
「はい。ですが本人の意思を確認しなければ」
「そうでしょう。そうでしょう。必要であれば私、土下座でも何でも致します」
物凄い勢いで迫ってくる。顔が近い。
「ドワーフの職人なのですが」
「おお、ドワーフですか。ドワーフの技術はすばらしい。是非この目で見てみたいものです」
目がキラッキラッ輝いている。
うっ・・・ことわり・・づらいな。
「わ、分かりました。王都に戻ったら、本人に聞いてみましょう」
「ありがとう御座います。お願い致します。報酬はいくらでも出します」
ガルフさんにそんな事言ったら大変な事になるのでは。
「そう、お伝え下さい」
エマルドは満面の笑みでカフィのお変わりを持ってきた。
アジミールに行けそうだな。
正確には密入国だけどね。
なんか、楽しくなりそう。
レイラの悪い所ですね。
そんな悪い事、ワクワクしちゃう。
その前に頑固じいさんを連れてこないとな。
俺が説得するぜ。
酒が10樽位必要じゃないか。
ワシはアル中かー
次回 ガルフ登場?
言う事を聞かない時は、私の大鎌で・・・・・うふっ
怖いよ




