後始末
ロニエスだよ。
僕はね、歴代で一番ヨシュア王に似ていると言われているのさ。
嬉しいよね。
でも、玉座には興味ないんだよね。
魔法が好きだから、今の魔法師団は最高さ。
玉座は兄上にまかせるよ。
実は妹もいるんだ。
お転婆で、お姫様なのに剣の稽古ばかりしているんだ。
カミールさんのお嬢さんと仲がいいんだよ。
そのうち登場するかもね。
楽しみにしていてよ。
昨夜の戦闘の疲労で?昼近くまで全員が爆睡している。
アリストは、ようやく長い時間眠れるようになった。
戦場では眠る事が危険だった。
戦場に出れば、何日も眠らず戦い続ける。死だけが永遠の眠りを与えてくれる。
野営では短時間の睡眠で見張りの交代をする。
拠点に戻っても、昼夜どこかで戦闘がある。飛び起き、救援に増援、支援と対策会議。
安心して眠れる日々は遠い世界。
いつの日か、短い時間で目が覚めてしまう様になった。
だが、ようやく長い時間眠れるようになり、今日は惰眠をむさぼっている。
「アリスト様。お客様ですわ。起きて下さいまし」
「ん~アリューシュ。もう少し寝かせてくれよ」
「ロニエス殿が来ておられますのよ。起きて下さいまし」
「もうそんな時間か。仕方ない、起きるよ」
渋々起きだし、歯を磨き、顔を洗う。
そう。この歯ブラシと言う物。木の棒の先に馬の毛が付いている。
これで歯を磨く。この時代で初めて体験した。
それと、気が付いた事がある。
今更だが、夜の明かりだ。
300年前の明かりと言えば、ロウソクの火かライトの魔法だ。
今は違う。明かり専用の魔道具で夜の明かりを取る。
暗くなると自動で明かりが灯る。光が差し込むと消える。
今まで、当たり前の様に明るいので気にならなかった。
昨日、気が付いた。恥ずかしいので内緒にしている。
凄いな、今の魔道具は。
おっと、ロニエスが来ているのだった。
一階の食堂に行くと、ベイル達とロニエスがテーブルで紅茶を飲んでいた。
外にはルベウスと騎士が立っていた。
「アリスト、遅いぞ」
ベイルが笑顔で手を振った。
ラタールの翼の全員がアリストの事情を理解していた。
「ロニエス殿、待たせてすみません」
ロニエスは笑顔で軽く首を振り、立ち上がり一礼する。
「昨夜はありがとう御座いました。無事、賊を捕らえられました。押収した記録簿で、これから大掃除が出来ます」
笑顔のロニエスが包帯でぐるぐる巻きになっている。
これから貴族や富豪たちの粛清が始まるのだろう。
しかし何故、包帯巻きになっているのだ。
「それは良いですが、お身体大丈夫ですか」
「いや、お恥ずかしい。今、上位治癒魔法を使える者が不在でね」
恥ずかしそうに笑うロニエス。
ベイルが耳打ちしてきた。
「お前の斬撃を避ける為、アリューシュに吹き飛ばされたみたいだぜ」
な・ん・だ・と!
アリューシュを見る。
気まずそうに目線をそらすアリューシュ。
ヒューヒューと鳴らない口笛を吹いている。
ぐぬぬっ。
いや、アリューシュのせいでは無いのだ。
あんな狭い空間で大技出した俺が悪いのだ。そうだ。そうに違いない。
「なんか、申し訳ありません」
「いえいえ、おかげでこちらの被害は最小限で済みましたから、あはは」
何となく、怖がられている様な気がする。
「所で、違法奴隷達はどうなったんだ」
「ベイル、言葉使いが失礼ですよ」
クルーシに注意された。
「あ、すみません。敬語って苦手なので」
「構いませんよ。私も堅苦しいのは嫌いなので」
ロニエスは気さくに笑う。
「悪いな。なるべく気を付けるよ」
全然気を付けていないぞ、ベイル。
「それで、違法奴隷はどうなったんだい」
レイラもか。似た者同士だな。
「皆さまの迅速な手当で大勢の者が命を取り留めました。ただ、残念ながら20名以上が手遅れでした」
ロニエスは視線を落とした。
「もう少し早く、手を打てれば・・・」
「仕方ありませんわ。まさか、あんな酷い事をしているとは想像できませんもの」
アリューシュはロニエスの肩に優しく手を置いた。
助からなかった者には可哀そうだが仕方がない。
300年前の回復ポーションより質は上がってはいるが、限界はある。
上級治癒魔法を使える者も数人だと聞いた。
アリューシュとクルーシが使えるのは中級治癒魔法だ。それでも希少らしい。
回復系は余り進化していない様だ。
魔族との戦闘が少なくなった弊害なのだろうか。
「助かった者は治癒院で保護しているよ。完治した者から元の場所に帰してあげる手はずだよ」
「獣人はどうなるのかしら」
「アリューシュ殿。ご存じでしょう。獣人には奴隷以外、居場所はありません」
「そうですわね」
アリューシュの瞳に悲しみが見えた。
ロニエスは少し慌てた様に話し出した。
「しかし、良心的な奴隷商人に渡る様に手配致しますので、ご安心を」
「お願いしますわ」
重い空気の中、ベイルが沈黙を破る。
「そう言えば報酬は、せっかくの王都だ。観光しようぜ」
沈黙の後に笑いが起きた。
ベイルの持ち味だな。
「おお、すまないね。今日は報酬を届けに来たのだった」
ロニエスは金貨の入った袋をテーブルに置いた。
「報酬は金貨120枚です。少ないかな」
「いやー十分ですよ。贅沢で来るぜ。な、レイラ、クルーシ」
「王都の最新のドレスでも買おうかな。なあ、クルーシ」
「そうね、私フリルの付いた可愛いのが欲しいわ」
「出たな、クルーシの少女趣味」
「レイラには似合わないから、うらやましいのかしら」
「私だって似合うわよ。趣味じゃないだけさ」
場が和む。
「では、私は仕事があるので戻ります」
ロニエスは立ち上がる。
「そうそう、アリスト殿。王はいつでも来て下さいと、仰せでした」
「では、明日お伺い致します。王にお伝えください」
「承知致しました。お伝え致します」
ロニエスは笑顔で一礼して、戻って行った。
「アリスト。王都観光に行こうぜ」
「本当に行くのかベイル」
「ねぇ、レイラ。美味しくて有名なケーキ店があるそうよ」
「お、クルーシいい情報だね。最近、甘い物食べてないよ」
「では、私が案内しますわ。皆で行きましょう」
「流石は姉さん」
「アリューシュ、ステキ」
女性2人は大喜びだ。
俺も甘い物なんて、10年以上前に食べたきりだ。
ちょっと楽しみだな。
ちょっと王と会って来るよ。
また、何かあったのか。
いや、少し話をするだけさ。
それより、早くエルフの国に行く方法を考えないとな。
そうだな。早く行きたいぜ。
(お、今日はお仕置き官はいないな)ほっ
私も久しぶりにお姉様に会いたいですわ。
エルフって、みんな美形だよな。
露出度も高いし、たまんねーぜ!
あら、誰かが覗いていますわ。ね、ベイル。
キラン
( ゜д゜)ハッ!
転移・・・・
出来ないだろう。諦めろ。




