護衛騎士団(和解)
お姉様、ステキだったよ。
私にかかれば、あほうどり(コカトリス)なんて、一撃ですわ。
くそっ、次は見ていろよ。
俺様の勇姿を見せてやる。 プィ!
あらあら、おバカさんなのかしら。
先が思いやられますわ。
まぁ、あと半分くらいで王都だ。 がまん、がまん。
さぁ、がんばろー
町を出てから10日が過ぎた。
食料は空間収納袋に十分用意してある。
空間収納の中は時間が止まっている。劣化や腐食もしない。
ただ、命のある者は入れない。
飲み水は水魔法で賄っている。飲食には問題ない。
だが、騎士達の精神的疲労が溜まってきている。
騎士達もコカトリスとの戦闘以後、ラタールの翼とも連携を取る様になった。
だが、一部の騎士は反発し危険な場面は度々あった。
それに加え、魔物との遭遇も増えて来た。
魔物の多い森だとは言え、馬車も通れる会堂でこれほどの魔物と遭遇するのはおかしい。ここに入ってから毎日、複数の魔物に遭遇している。
これでは緊張を解く暇がない。くわえて罪人を狙う襲撃の可能性に、昼夜通して警戒を怠れない。これでは神経が日毎に削られていく。
ベイル達は気楽な者だ。魔法探知は広大。十分に余裕がある。
個々の実力は上がっているし、ドラゴンでも出ない限りアリューシュが居れば問題ない。
だが、それでいいのかは疑問だ。
そろそろ、盗賊達が罪人を救出しに、いや始末しに動きそうなのだが。
森が深くなってきている。深い森を抜けるのに10日程かかるとバストミルは言っていた。
より警戒が必要だ。動くならこの数日の可能性が高いだろう。
今日、3度目の魔物との遭遇はライジング・ウルフ8体。
動きが素早く、額に生えた一本角から雷撃系の魔法を放つB+の魔物だ。
騎士達はベイルの指示の元、協力して戦っている。かなり連携が取れて来た。
ミカリスと取り巻きの2人が指示を無視するたび連携が乱れる。
今回もミカリス達が指示を無視し、連携が乱れた。
「ミカリス、前に出過ぎだ」
バストミルが叫んだ時、ライジング・ウルフがライトニングの魔法を放った。
ミカリスと共に前に出た騎士、2人に直撃する。
ベイルの怒号が響き、素早くアリューシュとレイラが飛び出した。
2人の活躍によって、魔物は無事討伐される。
倒れた騎士にクルーシが治癒魔法を施している。
治癒魔法を使える魔法使いは珍しい。クルーシは本当に優秀だ。
「ミカリス、いい加減にしろ」
バストミルがミカリスに怒声を浴びせ肩を掴む。
「お前の身勝手な行動で仲間が死ぬ所だったのだぞ」
掴まれた手を払いのけるミカリス。
「大体、何故冒険者の指示を聞かなくてはならんのだ」
ミカリスはバストミルに食い掛かる。
「お前が不甲斐ないせいだろう」
「クッ」
苦しい表情を浮かべるバストミル。
傍にいた女騎士がバストミルを庇った。
「皆で決めた事ではないですか。貴方の身勝手で仲間が傷ついたのですよ」
ミカリスは冷たい視線を向ける。
「私のせいではない。弱いヤツが悪いのだ」
ミカリスの表情が変わった。
「キサマ、本気で言っているのか」
バストミルの拳が振り上がる。
アリューシュが拳を止めた。
「バストミルさん、その拳は仲間を殴る為に在るのでは無いですわ」
「すみません。私とした事が」
「ミカリスさんの言う事は、ある意味正しいですわ」
「そ、そうだろう。弱いのが悪いのだ」
「キサマ・・・・」
怒りを表すバストミルを制しするアリューシュ。
「弱い者が悪い。弱肉強食は世の常。それが世界の常識、なのですよね」
「なんだ」
「魔物や魔族はそれこそが唯一無二の理。ですが・・・」
「何が言いたい」
「私達は人、個では弱い存在ですわ。魔族の様に強い存在は沢山いますわ。その中で人は、弱者を守り、仲間と協力して大きな力に立ち向かう。それが人ですわ」
「ハッ。そんな理想論、戦場では通用しない」
アリューシュの顔色が変わった。
「本物の戦場を知っていると」
「当たり前だ。俺は騎士なのだぞ」
「ならば、貴方が死んでも弱いから仕方ないと言う事でしょうか」
「なんだど」
「仲間などいらない、助ける価値もないと」
「そんな事は言っていない」
「弱い者は死んでもよいのでしょ」
「そ、それは」
「強い弱いは、何を指して言うのでしょう。弱い、弱いミカリスさん」
「俺が弱い、だと」
「貴方、お強いと思っていらっしゃるのかしら。お笑いですわね」
「愚弄するのか」
「ウフフッ。愚弄?本当の事を教えてあげているのですわ。クズ」
「おのれ、貴様。死にたいのか」
「ここは戦場。私があなたを殺してもいいのでしょう。弱いのだから」
「言わせておけば!」
ミカリスが剣を抜いて斬りかかる。
「うおおお」
アリューシュの大鎌が剣を巻き取り弾く。
「なっ」
間髪いれずに、ミカリスの首に大鎌がかかる。
「クッ」
一瞬で勝負は決した。
「弱いのですから死んでもかまわないですよね」
「ありえん。これは何かの間違いだ」
「現実ですわ。一度死んで見ますか」
「くそっ」
「ミカリスさん。全ての方が最強にはなれませんのよ」
「そんな事は分かっている」
「騎士達は何のために存在致しますの」
「それは・・・」
「強いとは力だけではありません事よ。仲間を信じ、逆境に立ち向かう心。誰かを守り、諦めない心。力を合わせより大きな力に立ち向かう心。本当の強さとはそう言うものですわ」
「ふざけるな。俺の兄上は死んだ。強く、気高い人だった。だが、冒険者が逃げたせいで死んだんだぞ」
ミカリスは崩れ落ち、バストミルが駆け寄り肩を抱く。
「あなたの理論では、お兄様も弱いから死んだのですわ。仕方ない事なのでしょう」
「貴様、兄を、兄上を侮辱するな」
「あなたが侮辱している事に、お気付きになられませんのかしら」
「グッ」
ミカリスは、言葉が出ない。
俺はミカリスの前に立つ。
「お前は本当の戦場を知らない。地獄だ」
「冒険者風情が」
ミカリスの目は憎悪に満ちていた。
「裏切りや誤報、不測の事態などいくらでもある。理不尽に命が奪われ、大切な物が失われていく。強者であろうと弱者であろうと死んでゆく。それが戦場だ」
ミカリスは黙っている。
「そんな状況でも仲間を信じ信頼し、共に苦難に向かって行く。それが真の強さだ。お前の兄もそうだったのだろう」
ミカリスの目には涙が滲んでいる。
「故郷を奪われた者。愛する者を失った者。その痛みを知り、己の信念を貫き最後まで戦い抜いた者こそ真の強者だ。お前の兄は誇り高き騎士だ。それを忘れるな」
ミカリスはうつむき震えている。
バストミルが優しく肩を抱く。
「流石はアリスト様ですわ」
アリューシュは笑顔で頷いている。
ベイル達は泣いている。もらい泣きか、お人よしな連中だ。
そんな所も好きなのだが。
この後、騎士達が俺達に謝罪しに来た。
何となく、和解した事になるのだろう。
マクレース辺境伯は黙って頷いた。
はーい。クルーシです。
私の杖の話をしますね。
杖はアルマンドの木から削る出した木の杖です。
アルマンドの木は魔素の濃い森に生える希少な木で魔素を多く含んでいます。
杖の先はミスリルで半円の形をし、中央に炎に特化した赤い魔水晶がはめ込んであります。
これで火炎系、爆裂系の魔法は少し強化されます。
うふっ。クルーシのプチ情報でした。




