ワイバーン襲来
私の出番ね。
見ていなさい成長の成果を見せてあげるわ。
おいおい。あまり張り切るなよ。
直ぐに暴走するのだから。
何か言いましたか、ベイル。
いいえ (;'∀')
ふふふっ。私は負けないわ。
勝負よ、クルーシ。
受けて立ちますわ。アニス。
不安だ・・・・・・・
「ワイバーンの大群を確認。すごい数よ。こんなの見た事が無い」
アニスの声は震えている。
巨大な塊の如く、迫り来る黒い影。
「なんなの、何が起こっているの」
「エリゼリーエ、しっかりするのですわ」
「アリューシュさん」
「私がこちらに来ましたから、ご心配は無用ですわ」
「それは心強いです」
「商人の皆様は馬車の中央へお願いしますわ」
「はい」
商人と従者の3人は馬車の中央で固まった。
「結界を張りますわ。中にいれば安心ですのよ」
「はい、お願いします」
商人は青ざめ、アリューシュは馬車に結界を張った。
エリゼリーエは馬車の先頭に向かう。
「御者は私が守る。エレナは後方へ、全員ワイバーンに集中して」
「了解」
「あら、流石に良い動きですわ」
アリューシュは感心しながら馬車の屋根に立った。
「皆さん、来ますわよ」
「御者は俺が守る。皆は好きに暴れてくれ」
「好きに暴れろ、だって。レイラ、クルーシ」
「アリストが言うんだ。好きにしようぜ、ベイル」
「これは死ぬな。ワイバーンが1000体はいるぞ」
「死んだらそれでいいじゃない。冒険者だし。クルーシ、屋根の上行くよ。デカいのかましてくれよ」
「ええ、かましてやるわ」
2人は屋根に上がった。
「チッ、びびっちまったぜ。情けねぇ。俺も上に行くぞ」
ベイルも屋根に上がった。
怖がるのは良い事だぞ、ベイル。恐怖を知ってこそ強くなれるからな。
「来るぞ」
上空を埋め尽くすワイバーンの大群。
制御を失った様に次々に突撃してくる。
「ストロング・ファイヤートルネード」
アリストが最初の一撃を放つ。
炎の帯が渦を巻き、広がりながら上昇する。
空を覆う巨大な炎の竜巻が100近いワイバーンを焼き尽くす。
次々に火球となり降り注ぐ。
「クルーシ、アリストに一番取られたよ。次、いっちゃって」
「流石ですねアリスト。レイラ見ていなさい」
後方の馬車から無数の氷槍が打ち上がる。
アニスが高笑いしながら魔法を連発していた。
「私の見せ場よー」
「アニス、無茶しすぎよ」
「バカ言わないで、イレーネ。アリストにいいとこ見せるのよー」
ギャハハハハッ。
氷槍に羽を貫かれたワイバーンが次々に落下する。
だが、半数は堅い外皮や結界で防がれた。
「やはり硬いわね。防がれているわよ」
「生意気ね。ならば、増やすだけよー」
氷槍がさらに増えた。
そして、アニスは倒れた。
「むにゅー。魔力・・・一気に出し過ぎた」
「だから言ったのに、何やってんの」
「イリーネ、しばらくお願いね」
「この、天然バカ娘」
「イリーネ、アニスはいつもあんな感じなのかしら」
「ええ、だいたい」
アリューシュはため息を付いた。
「無茶苦茶ですわ」
羽を貫かれたワイバーンがバランスを崩すながらアニスに襲い掛かる。
アリューシュの大鎌がワイバーンを斬り裂く。
イリーネが3本の矢を同時に放つ。魔力を込めた矢は、正確に3匹を貫いた。
立て続けに矢を放つイリーネ。
イリーネは栗毛の長髪で細身の体だ。
その華奢な身体で、大型の弓を使いこなす。しかも槍も凄腕だと聞いた。
才女だな。
マリエールの放つ光の矢がワイバーンを貫いていく。
魔法攻撃をかいくぐって、後方から襲い掛かるワイバーン。
エレナの扱うロングアックスが猛威を振るう。
次々に叩き落されていくワイバーン。
「出遅れた・・・・」
クルーシは落ち込んだ。海の底に沈んだ様に落ちた。
ワイバーンは鋭利な爪と、硬質なくちばしで容赦なく攻撃してくる。
ベイルとレイラがクルーシを守りながら応戦する。
「クルーシ、凹んでる場合じゃないよ」
レイラの言葉に、クルーシが反応した。
クルーシから魔力が立ち登り、髪の毛が逆立ち始めた。
「へ・・・ク、クルーシ」
「私の成長を見せつけるはずだったのよ。それを・・・・・」
レイラはクルーシから地鳴りの様な音が聞こえた様な気がした。
気がしただけだが。
「レイラ。有能な魔法使いは誰・・・かしら」
「もちろん、クルーシしかいないわよ」
「そうよね。あんなチンチクリンに劣るなんてありえません」
クルーシから魔力が噴出し、髪が総立ちになる。
やばい。目がいっちゃってる。
「ベイル、伏せてー」
「え」
「うにゃぁぁぁぁ」
クルーシは叫びながらアリストと同じ魔法を放った。
天空に炎の渦が舞い上がる。
炎がベイルの頭上に広がり、髪が燃えた。
「どわー頭がぁぁぁ」
倒れ込み、慌てて火を消す。
「あちぃ、あちぃ。レイラ、アイツあんな魔法使えたか?制御出来てない・・・よな」
「あんな大魔法、見た事ないわよ」
レイラは頭を抱えて丸まった。
クルーシは倒れ込み、笑っている。
あれ、俺の魔法より威力あるだろう。制御出来てないし。炎の渦がどんどん低くなってる。馬車まで燃えそう。
エリゼリーエ達なんか逃げ回ってるよ。
ワイバーンも逃げ回っているけど。
魔力を放出し、炎の渦を押し上げる。
クルーシの魔法の才はかなりの物だが、キレたら危険。取り扱い注意だな。
炎を回避したワイバーンが羽を広げ魔法を放った。
広げた翼から真空の刃が降り注ぐ。
俺とマリエールが広範囲魔法障壁を同時に展開する。
灰色の髪にグラマラスな体型のマリエール。
結界魔法や強化魔法が得意の支援系魔法士だ。光系の攻撃魔法も使えるみたいだな。
反応も早い。
白亜の剣は良いメンバーが揃っているな。
弾かれた真空の刃が周囲の木々を斬り倒す。
アリューシュがウインドスラッシュを放つ。
ワイバーンの固い外皮を斬り裂く。
クルーシはゆっくり立ち上がった。
「アリューシュまで。足りないわ」
杖を高々と掲げた。
「ハイ・エンどぉぉぉりゃぁぁぁぁ」
叫んでるし。
高密度の魔力弾を連射し始めた。
「あはは、絶好調よー」
魔力弾が時折あらぬ方向に飛ぶ。
ベイル達も白亜のメンバーも逃げ惑う。
アリューシュだけは涼しい顔で避けている。
流石だ。
ラタール翼も白亜の剣も、魔法使いに難があるな。
この後もアニスの暴走とクルーシの制御不能の大魔法により、大混乱。
しかし、ドタバタしながらも多くのワイバーンを倒した。
死人が出なかったのが不思議だ。
クルーシは魔力切れを起こし、行動不能状態。
張り合ったアニスも同様の状態。
残ったワイバーンは散り散りに逃げて行く。
その夜、アニスとクルーシは説教と罰を賜る。
全員の夕食を作り片付ける、刑に処されたのだった。
3日目。
昼前にゴブリン10体とグランドウルフ8体を討伐した。
昨日にくらべれば天国の様な戦闘だ。
夕暮れ前に城砦都市ドランに無事、到着した。
あの後、魔族の影はなかった。アイツの存在感は八魔将軍に匹敵した。
あれほどの魔族が生き残っていたとは。何を考えている、魔族共。
魔族領。中央地区、ゲールディア砦。
「帰りましたか、サルザード」
「うむ」
「エルフの女はいかがでした」
「噂通りの強者です。脅威に成りえるでしょう。ただ・・・あの男」
「男、気になる人族が」
「いましたね。ですが、手を出すとヤツがうるさいですからね」
「ウフフ、怒るわね。彼は暴れたくて仕方のない様でしたし」
「面白くなりそうですよ、バリーゼ」
何とかなったな、レイラ (;'∀')
そ、そうね (;'∀')
いつもの事だしね。
いやいや、もう少しさ。冷静にと言うか平常心と言うか、さ。
アリューシュ。何とかならないのか。
無理ですわ。




