Sランク冒険者
グライムは心配性だな。
まぁ、安心して待っていなさい。
ふふふふっ。
冒険者ギルドに1人のエルフが入って来た。
「おい、あれってSランクのアリューシュじゃないか」
一瞬で冒険者達がざわつく。
「アリューシュだ。初めて見たが、噂以上に美しい」
「う、美しい」
「Sランクで超絶美人なんて反則だぜ」
「エルフ特有の透けるような白い肌。黄金の輝きを放つ長い髪。まるで虫けらを見るような冷たい視線。くそー、たまんねぇぜ」
「ばか、お前じゃ相手にされねぇよ」
「なんだよ、夢見ても良いじゃねぇかよ」
周囲に笑いが起きる。
「でもよ、人族嫌いだって聞いたぜ」
立ち止まり、男達に目をやる。
「バカ、声がデカいって」
男達は静まり返った。
そんな男達を無視し、ルーシーに声をかける。
「グライムは執務室かしら」
「はい、お待ちになられています」
「ありがとうですわ。ルーシー」
アリューシュは執務室の戸を叩く。
「グライム、入りますわ」
「おう。アリューシュ、無事で何よりだ。ま、かけてくれ」
アリューシュはソファーに腰かけた。
「念話でお伝えした通り、ドラン方面のアジトは3つ。一つは私が潰したのですわ。テーゼ方面のアジトは2つ。一つは本拠地ですわ」
「全く、危ない事を、強者は言う事を聞かないな」
「あら。でもこれ以上の被害を出したくないと思いまして、つい」
「ついね。まぁマクレース辺境伯が、国境警備隊から兵を向かわせたから安心してくれ」
「テーゼ方面にも」
「まだだ。連絡待ちだ」
「あら、珍しく慎重ですのね」
「情報が洩れぬ様に慎重に事を運ばないと、逃げられてしまう」
「騎士団の内通者は判明したのかしら」
「ユリウス騎士団長が調べている」
「これだから人族は信用できないのですわ」
「そう言うな。ユリウス騎士団長が信頼できる兵で出陣準備を整えてくれている」
「そうですの。所で、何方を向かわせたのかしら」
「ああ、優秀な新人に頼んだ」
「新人」
「実力は確認済みだ。ゴブリン・ロードを単独で倒した」
「そんな強者が新人ですの」
「ああ、信じられんがな。それも人族だ」
「信じられませんわね。でも、貴方の言う事は信じますわ」
「ありがとう。君も騎士団と同行して欲しいのだが」
「本拠地はアーセルの森の奥。秘境に建つ廃城ですものね」
「冒険者も近寄らぬ魔の森か」
「騎士団だけでは不安ですわね。けれども、気乗りがしませんわ」
「そこを、何とかお願いできないか」
「それよりグライム。この首飾りを見て下さいまし」
アリューシュは魔石の付いた首飾りをテーブルの上に置いた。
「魔石の付いた首飾りだな」
「この魔石に魔力探知を阻害する術式が組み込まれていますわ」
「なんだと、そんな物があるのか」
「ええ、賊の全員が付けていたのですわ」
「やはり、ただの盗賊ではなかったな。裏に大物が・・・」
{グライムさん}
{うお、アリストか}
{どうしました}
{すまん、念話をする者は余りいないのでな、驚いた。何かあったか}
{ギアの峠で商人隊が襲撃されました。例の盗賊集団でしょう}
{また犠牲が出たか。生存者は}
{12人です。7人は何とか生きている状態です。騎士団と治癒士の手配も頼みます}
{了解した。直ぐ向かわせる}
{女性が2人さらわれました。救出に向かいます。ここには魔物避けの結界を張っておきました。後はお願いします}
{おい。救出ってお前、無茶はやめ}プッ
「切りやがった」
「念話ですの」
「ああ、テーゼ方面を任せたアリストからの念話だが、アイツ一方的に切りやがった」
「アリストと言うのですか、英雄と同名ですわね」
「単独でさらわれた人を救出に行くと言っていた。まったく無茶な事を」
{おい、アリスト}
「あらあら、興味が湧いてきましたわ」
「やめてくれよ、アリューシュ。わがままは1人で十分だ」
{おい、返事しろよ}
「ヤロー応答しないつもりか」
{お前、無視してるんじゃねー}ブツ。
「あいつ、念話を遮断しやがった」
「ウフフフッ。ますます興味が湧きましたわ」
「笑い事じゃないぞ、アリューシュ。相手はかなりの大きな組織だ。一人で突っ込むつもりだぞ。死に行くようなものだ」
「あら、どうしますのグライム」
「すぐに騎士団に出て貰う」
「間に合いませんわよ」
「しかし、他に手の打ちようが」
「私が参りましょう」
「行ってくれるのか」
「アリストですか。興味が出ましたの。それに、私より早く行ける者はいませんのですから、仕方ないですわね」
「転移か。確かに、使える者は少ないな」
「でも、過剰労働ですわね。報酬は倍額、頂きまずのよ」
「報酬はしっかり払う。アリストを止めてくれ。騎士団に直ぐに向かってもらう」
「止める?騎士団は必要ないですわ」
「まさか、暴れるつもりなのか」
「行くからには、好きにさせて貰いますわ」
「おいおい」
これだから強者は困るのだ。
「いくらお前でも、無茶だ」
「あら。アリストも、お強いのでしょ」
「ああ。お前に匹敵する強さだと思う」
「あらあら、楽しみになりましたわ。騎士団には明日の朝、来る様にお願いしますわ」
「明日の朝か」
「ええ、情報が洩れても手遅れなのですわ。朝には終わっていますもの」
「本気か。何百人も居るのだろ」
「問題ないですわ」
「はぁ~、仕方ない。本拠地の場所は分かるのか」
「私が何年、生きていると思っているのかしら」
「そうだな。危険だと判断した場合は引き返してくれ」
「フフフ、お任せなさい」
アリューシュは席を立ち、執務室を出て行った。
グライムはため息を付き天井を見上げた。
これは、大物貴族が裏にいるな。貴族の勢力闘争には関わりたくないのだがな。
グライムはもう一度ため息を付いた。
やはりエルフは容姿端麗なのだな。
そうですわね。私は特別美しいのですわ。
むむ、その話し方は・・・お前か。
はーい。アリューシュちゃんですよー。




