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魔王を倒した英雄~300年後に飛ばされ世界を統べる~  作者: 乱丸


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12/20

追撃

盗賊共、許さん。

 アルテシア嬢、今助けてやるぞ。

「アリストさん」

 エマルドが駆け寄って来た。

「ポーションをお持ちでしょうか。荷が奪われてしまい、ポーションが足りません」

「エマルドさんはご無事ですか」

「わ、私は大丈夫です。しかし、他の者が。早くしなければ助かりません」

 空間収納からポーションを取り出す。

「おお、この数なら」

 念の為ポーションを多く買いだめしておいて良かった。

「さ、早く。軽傷の者は私が治癒魔法で治します」

「はい」

 動けるもので、怪我人を治癒していった。

 ポーションや俺の低級ヒールでは、重症者の完治までは出来ない。

だが、何名かの命は取り留める事は出来た。

 生存者は12人か。動ける者は5人。

 盗賊も2人、息があったので生かしておく。

バミューダから情報は得たので必要が無くなったが、次いでなので回復させ縛り上げた。

 少し落ち着いた所でエマルドが震える声で頭を下げて来た。

「アリストさん。娘が、娘と侍女がさらわれました。お助け下さい」

 エマルドは不安な心境を押し殺し、護衛達の命を救っていたのだな。

「頭をお上げください。娘さんと侍女で2人ですか」

「はい」

「必ず助けます」

「ありがとうございます」

 エマルドは涙を浮かべ頭を下げた。

「アリスト」

「クレイズさん、大丈夫ですか」

「ああ、俺は軽傷だ。危ない所、助かった、ありがとう」

「いや、俺がもう少し早ければ、すまない」

「アリストが気にする事ではない」

「そうですか」

「俺達が不甲斐ないせいで、お嬢様がさらわれてしまった」

「クレイズさん達が苦戦するほど盗賊は手練れだったのですか」

「それが、魔力探知に反応が無かったのだ。気付いた時には奇襲を受けていた」

「やはりそうか」

 この世界の生物は、多かれ少なかれ魔力を持っている。

 反応しない者は完全に魔力を消せるか死人だけだ。

 魔力を完全に消すには高度な魔力制御が必要だ。そうそういる者ではない。

 賊の死体を調べてみるか。

 倒された賊、全てが魔石の着いた首飾を下げていた。

 この首飾りが怪しいか。

調べると、魔石に魔力探知を阻害する術式が施されている。

「こんな物、無かったぞ」

 この魔道具のせいで・・・いや、俺の油断だ。

 魔道具から感じる魔力を解析し、それを魔力感知に組み込めば追えるだろう。

{グライムさん}

{うお、アリストか}

{どうしました}

{すまん、念話をする者は余りいないのでな、驚いた。何かあったか}

{ギアの峠で商人隊が襲撃されました。例の盗賊集団でしょう}

{また犠牲が出たか。生存者は}

{12人です。7人は何とか生きている状態です。騎士団と治癒士の手配も頼みます}

{了解した。直ぐ向かわせる}

{女性が2人さらわれました。救出に向かいます。ここには魔物避けの結界を張っておきました。後はお願いします}

{おい。救出ってお前、無茶はやめ} プッ

 面倒だから切ってしまった。まぁ、いいか。とりあえず結界を張る。

「エマルドさん。娘さんは必ず助けます。しばらくすれば騎士と治癒士が来るので待っていて下さい」

 エマルドに買い込んだ食料と飲み物を渡した。

「一人で行かれるのですか。もう少しで騎士団が来るのですよね」

「大丈夫です。それに早い方が良いでしょう」

「助けて欲しいとお願いしましたが、一人では貴方が危険です」

「心配でしょうが、エマルドさんは怪我人の介護をお願いします。娘さんと侍女は必ず助けます」

 不安な表情を浮かべるエマルドの肩を力強く掴み、笑顔を向ける。

「私は強いので、安心して待っていて下さい」

 エマルドは頷いた。

 部下を心配そうに介護するクライズに話しかける。

「クライズさん。この首飾りが魔法探知を阻害していた様です」

「これが」

 クライズに首飾りを手渡した。

「騎士団に渡し、解析してもらって下さい。それと一応、結界は張りました。魔物は入れませんが、人は入れます。助けが来るまでお願いします」

「アリスト、お前は」

「賊の後を追います。お嬢様と侍女は必ず助けます」

「アリスト。俺も行くぞ」

「クライズさんは、残ってエマルドさんや仲間を守って下さい」

「だが、あの森は高ランクの魔物が・・・」

 俺の顔を見て言葉を止めた

「足手まといか」

「すみません」

「・・・無理はしないでくれ」

{おい、アリスト}

 チィ、念話か。

「大丈夫ですよ。無理はしないので」

{おい、返事しろよ}

 イラッ

{お前、無視してんじゃねー}ブツ。

 うるさい。グライムとの念話は遮断しておこう。 


 解析に少々時間を要したが、上手く反応してくれた。

 だが、通常の魔力感知と併用が出来ない。時間がある時に術式の組み直しだな。

 賊は足手まといを2人連れている。おかげで探知範囲ギリギリで反応を捕らえた。

 城跡の場所は分かるが、他に拠点が無いとも限らない。

 魔力探知を時折切り替えれば魔物も問題ない。

 賊から手に入れた首飾りを俺も利用させて貰おう。

 山岳地帯を抜け、木々の深い山に入った。

「随分と奥地まできたな」

途中魔物と遭遇した。なかなか強い魔物が多い山だ。並みの冒険者では立ち入れないな。

不意を突いたとはいえ、クレイズ達を追い込んだ集団だ。アジトを作るには丁度良かったのだろう。

 途中で2組に分かれたな。5人が更に奥へ向かっている。

 2人はさらった女か。残った反応は動かない。

 やはり拠点は複数あったか。賊は10人。潰しておくか。

 日が傾きかけた頃、小高く盛り上がった斜面に扉が見えた。

 斜面にある洞窟を根城にしていたか。

 魔力感知はしていない様だな。油断しすぎだ。

「門番が2人」


「バミューダさん達遅いな。まさか殺られたんじゃないよな」

「まさか。あの人が負けるはずが無いだろう」

「だよな、実力は5本指に入る程の人だからな」

「ん」

「どうした」

「今、何か動かなかったか」

「小動物だろ。こんな所に人が来るかよ」

「そうか・・・うお」


「おい、外から物音が聞こえなかったか」

 全員が武器を取り身構える。

「エド、見てこい。慎重に、な」

 エドと呼ばれた男が慎重に扉に近づき、そっと扉に耳を近づける。

 その瞬間、扉がけ破られた。

「ぐわっ」

 エドは吹き飛んだ。

「よう、盗賊共。地獄から迎えに来たぜ」

「だれだ、門番はどうした」

「先に行ったぞ。地獄へ」

「クッ。貴様、何者だ」

「死神」

 神速の動きで剣を一振りする。

「がはぁ」

盗賊の1人が血しぶきを撒き散らし倒れた。

「殺せ」

 リーダーらしい男の号令と同時に左右から斬りかかる盗賊。

 上体をそらして剣をかわし、一瞬で2人を斬り捨てた。

 声を出す事も出来ず、崩れ落ちる。

 そのまま、盗賊の中心に飛び込む。

「ぐわー」

「げはぁ」

「ぐおぉ」

 神速の剣が次々に盗賊を斬り裂いていく。

 辺りは一瞬で血の海が広がった。

「残りはお前だけだぞ」

「バカな・・・」

 リーダーらしき男は狼狽える。

「キ、キサマー」

 男が斬りかかって来た。

 襲い来る剣を避け、両腕を斬り上げた。

「ぐあー」

 握り締めた剣と両腕が舞い上がる。

「俺の腕が、腕が」

 膝を付き座り込む男に剣を突き付ける。

「おい、さらった女はどうするつもりだ」

「貴様に言う事はない」

「そうか」

 足に剣を突き刺す。

「ぎゃぁぁぁ」

「仲間の人数は」

「・・・・」

「なんだ、もう片方の足も刺されたいのか。いや、片目を抉ろうか」

 アリストの氷の様な冷たい目に男は震え上がった。

「や、やめてくれ」

「女はどうする。答えろ」

「ああ・・・女は奴隷商に売る」

「仲間の人数は」

「300以上いるぜ」

「ほう。なかなか大きい組織だな」

「ボスは狂気のサガラス様だ。貴様が強かろうが騎士団だろうが勝てるわけないぜ」

 サガラス・・・ああ、冒険者ギルドの賞金首欄に手配書が張ってあったな。

「それは、楽しみだ」

「しゃべったぞ。早く腕を付けてくれよ」

「ゴミは目障りだ」

「はぁ」

 剣を一閃。男の胴から首が落ちる。

 さあ、山越えか。明日になればさらった者を移動させる可能性が強い。

 今晩中に片を付ける。

「急ぐか」

 身体強化を使い、山を駆け抜ける。

 夜の帳が覆う森を抜け、山を越えると開けた平地が広がっていた。

 暗闇の中、薄明りを灯した古城が見える。

 魔力感知の反応も多数。

  やはりこの城か。

 盗賊共、今の内いい夢見ておけ。

 アリストは体の底から湧き上がる、黒い感情を感じた。


ん~

 どうも300年前より、冷酷になった様な気がするぞ。

 気のせいなのかな。

 なぁ、どう思う。


そうですわね、良くわかりませんわ。


そうか・・・・だから誰だよ。

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