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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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98.ベリベリきゅんきゅん

「それではご主人様〜、これから私がパフェに愛の魔法をかけますよぉ〜!」


 はんぺんが胸の前で手をハート型にする。


「ベリベリ〜〜きゅんきゅんきゅ〜んっ!」

 

 明らかに作られた声ではあるが、ここまで気合が入っていると清々しいというか、可愛いと思える。


「きゅんきゅんきゅ〜んっ!」


 何故か二兎もメイドさんを真似している。


「……あれ? なんですかぁ悟先輩、もしかしてぇ、私のメイド服姿とか想像しちゃってますぅ?」

「…………そんなことないぞ」


 実を言えば、少しだけ思い浮かべてしまった自分がいる。


 前にマッサージされた時から薄々勘付いてはいたが、俺が思っているよりは、二兎は俺のことを嫌っていないかもしれない。


 かといって、彼女がこちらに突っかかってくる理由もない。

 全体的に謎なんだよな。


「それではご主人様、召し上がれ〜!」


 魔法をかけるだけかけて、はんぺんはさっさと行ってしまった。薄情である。


「チョコソースは自分でかけるんだな。てっきり、かけてくれるのかと思ってた」

 

「たぶん、前はそうだったんじゃないですかね? ほら、お客さんの中にはチョコが苦手な人もいる……とか」


 何にでも配慮しなければならない、大変な世の中になったものだ。


「あんまり考えすぎるのも良くないな。アイスが溶けちゃうし、早いところ食べ……」


 言葉を続ける前に、不思議そうな顔をしている天王洲を見つけてしまった。


「……今ので、本当に美味しくなるのですか?」

「気持ちだよ、気持ち。美味しいと思えば美味しくなる。天王洲も、自分の好きな人とか大切な人が作ってくれた料理は、なおさら美味しく感じるだろ?」

「なるほど……」


 パフェのグラスを見つめながら考え込んでいた天王洲は、おもむろに、自らの手をハートの形にし、俺へ向けた。


「…………きゅんきゅん……きゅん…………どうですか?」

「どうって言われても……珍しいなとは、思う」


 男嫌いで有名なお嬢様が、俺に向かって魔法をかけてくれたのだから、びっくりしないわけがない。


 しかし、彼女は俺に好意を抱いているわけではなく、おそらく庶民の習性を学ぶために再現したに過ぎない。


 SFであるだろう、宇宙人が人間を理解するために、とりあえず相手と同じ行動をしてみるアレだ。


 俺があまりにも険しい顔をしていたからか、天王洲は「そうですが……」と漏らし、パフェを食べ始めた。


 ・


 店を出る頃には、空はそこそこ暗くなっていた。


「思ったよりも一杯食べちゃいましたねえ」

「それは二兎だけだろ」


 パフェをペロリと平らげた二兎は、なにを思ったかオムライスを追加注文していた。


「だ、だってお腹空いちゃったんですもん!」

「いや、それにしてもデザートの後にオムライスは……」

 

「そんなんだから悟先輩はザコザコなんですぅ! 女の子にそういうこと言っちゃいけないって学ばなかったんですか!?」


 学ばなかった……と言いたいところだったが、今までにも失言で痛い目というか、搾り取られているからな。今回は俺の負けである。


「で、どうしようか。そろそろいい時間だし、帰ってもいい頃合いだよな」

「そうですね。私も今日はやることがありますし」


「じゃあ、とりあえず駅に……天王洲は迎えとかないのか?」

「今日はタクシーで帰ろうと思っています」


 遊びの帰りにタクシーとか、さすが金持ちだな。


「だったらタクシー乗り場まで行くか、ここで待っててくれれば呼ぶけど」

「……なぜ、七里ヶ浜くんが?」


「だって、足痛めるかもしれないだろ? 革靴綺麗だし、今日の道のりも疲れたんじゃないかなって」


 当たり前の事を言ったはずなのに、彼女は少しだけ目を見開く。

 

「…………よく、見ているんですね」

「そりゃあ、心配だからな」


 天王洲家のお嬢様に怪我をさせたとあれば大問題だ。

 俺のようなパンピは瞬く間にあの世行きだろう。

 

 そんな一般人に足のことを言い当てられたのが悔しかったのか、天王洲は俯いてしまう。

 呼びかけてもこちらを向いてくれないし、困ったことになった。


「悟せんぱぁい、私が天王洲先輩をタクシーに乗せるからぁ、先に帰っていいですよぉ?」

「いやいや、二兎だって用事があるんだろ? だったら俺が——」


「これ以上失言を重ねてぇ、取り返しがつかないことになってもいいんですかぁ?」


 柔らかな笑みを浮かべる二兎だが、その笑顔からはとてつもない圧力を感じる。


 余計なことをするなというのは一理あるし、彼女は彼女で、自分に飛び火するのを恐れているのだろうか。


「……分かった。もし、何か危ないこととかに巻き込まれたら、すぐに呼ぶんだぞ」

「もっちろんです! それじゃあ先輩はぁ、わんちゃんみたいに走り去ってくださいね〜!」


 誰が犬だとツッコミを入れつつ、俺は一人で秋葉原の駅へ向かうことにした。


 ・


 七里ヶ浜悟の姿が見えなくなってから、二兎芽莉彩は、未だに顔を赤くして俯いている天王洲セラに声をかける。


「それで、天王洲先輩に聞きたいんですけどぉ……図書室での言葉、どういう意味ですかぁ?」

話が進むぜぇ!


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