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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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99.第二陣営

「どういう意味……というのは?」


 天王洲セラは、二兎芽莉彩から向けられた挑発的な視線には反応を示さず、あくまで平坦に返した。


「先輩が何か企んでるっていうのはバレバレじゃないですかぁ。せっかく悟先輩で遊べるチャンスだったのに邪魔するなんて、迷惑ですけど?」


 基本的に他人を煽りがちな芽莉彩ではあるが、ここまでの嫌悪感を表にすることは珍しい。

 しかし、彼女の強気は長くは続かなかった。


「……おそらく、七里ヶ浜くんのご友人の方は理解していたんじゃないでしょうか。槙島さんも、東堂さんも、そしてあなたも七里ヶ浜くんのことを好いています。この中で、明らかに出遅れているのはあなたでは?」


 歯噛みをする思いだろう。

 これまで戦いに入っていなかった第三者に、自分の悩みをピタリと当てられてしまったのだから。


「だからって、どうしてあなたが乱入してくるんですかぁ? 悟先輩のこと、好きでもないのに——」

「それを確かめようとしているんです」


 もちろん、芽莉彩に思い当たる節がないわけではなかった、

 

 むしろ「そうなのではないか」という疑念ばかりが膨らむ一日だったが……それにしては、セラのアプローチは下手すぎる。


 自分が悟から嫌われていることにすら気付いていない可能性すらある。

 そんな気持ちが顔に出ていたのか、セラはふいと目を逸らした。


「それでも……はっきりさせたいんです。そして——」


 セラの瞳が再び鋭く磨き抜かれる。


「あなた以外の二人は、おそらく結託している。私にはまだ恋愛についての知識はありませんが……彼女たちが協力すれば、あなたに勝ち目もないし、私にもありません」


「……っ、もしかして——」


 ようやく、目の前の乱入者の言わんとしていることを理解する。

 天使のような可憐な姿で、しかし思考を読み取らせないポーカーフェイスで場をかき乱そうとするセラの意図が。


「相手が二人であれば、私たちも二人で結託するべきでしょう。恋愛が分からずとも、それしか勝ち筋がないことは読めます」


「……仮に私が天王洲先輩と手を組んだとして、どんな手助けをしてもらえるんですか?」


 セラの言い分は尤もだった。

 悟の好みに合わせていたとしても、あの二人には「タイプ」をブチ抜くだけの威力がある。


 二人が悟の独占を諦めて、失うくらいなら共有するという方向に覚悟を決めたとしたら……芽莉彩は一瞬のうちに追い出されてしまうだろう。


 よって、彼女の中では協力は半ば確定事項になっているが、それはそれとして、確約が得られるなら得ておきたい。天王洲の——


「——私の持てる力を駆使して、私と二兎さんと彼の三人で過ごせる時間を作ってみせましょう」


 口で「分かりました」と言わずとも、セラは相手の表情から成功を読み取る。


「ただ、こちらからも一つだけお願いがあります」

「なんですか?」


「……私には常識がありません。何をすれば、少しでも七里ヶ浜くんからの心証が良くなるかも」

「つまり、私は天王洲先輩に好感度を送る代わりに、先輩は機会をくれるわけですか」

「そうなります」


 きっと、山室隆輝が言いたかったのはこういうことだろう。

 二人で手を取り合う……というより利用して、どうにか番狂せを起こせと。


「分かりました。あなたの口車に乗ります」


 今度は、しっかりと口に出した。

 自分の意思で決めたことだと、自らに言い聞かせるように。


 それを聞いて、セラはひとまず微笑を浮かべた。

 彼女自身も必ず勝てるゲームだとは思っていなかった。


「それでは、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ……裏切りは無しですよ」

「…………なるほど。そういう考え方もできるんですね」


 本当に協力して大丈夫だろうか。

 どんどん失敗した気がしてきた。


 しかし、当のセラは微塵もそんな様子を感じさせず、むしろ生き生きと口を開いた。


「どうせなら、お互いに呼び方を変えてみますか? 私は——お名前はなんですか?」

「芽莉彩……ですけど」


「私は芽莉彩ちゃんと呼ぶので、私のことはセラでも、セラちゃんでも、お好きに呼んでください」

「………………はぁ?」


 こうして、前途多難が過ぎる同盟が結ばれたのだった。

 

 これによって、悟は四方を「本来仲良くしたくなかった女子」に囲まれることになるのだが……自分がもはや詰んでいると知るのは、しばらく先のことである。

葉音と涼がいつ協力体制を敷いたか分かりますか?


また、プロローグを入れると今回が記念すべき100話目になります!

いつも応援ありがとうございます!


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