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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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100.マキネーター

『ここで、悟くんに問題です』


 二十四時をまわろうかというころ、電話越しに葉音が言った。


「問題?」

『うん。正解すると豪華賞品もあるよ』

 

「先にどんな賞品か聞いても?」

『もう、悟くん気が早いんだから。そんなところも可愛いけどね』


「あ、別に言いたくなかったら——」

『それじゃあ発表しまーす! 悟くんへの豪華賞品は〜!』


 彼女の脳内ではドラムロールが鳴っているのだろう。

 なんだか嫌な予感がしたから聞かずにおきたかったが、遅かった。


『僕と一日中イチャイチャできる権利でーす!』

「最近、Metubeで法律の勉強をしててさ。クーリング・オフって知ってる?」

『すっごく酷いこと言ってない!?』


 なんとか伝わったようで良かった。


『悟くんは、僕と一緒にいるのが嫌……なの?』


 泣きそうな、縋るような声。

 葉音のことだ。本気で俺が拒否しているとは思っていないはず。

 よって、この声は演技なのだが……まったく作られたものに思えない。


 そもそも俺が本気で逃げたとして、たとえ地球の裏まで飛んで行こうとも、彼女は俺を見つけ出すだろう。恐ろしい話だ。


「一緒にいるのは好きだよ」

『本当っ!? ふふっ、もちろん僕も好きだよ! 大好き!』


「でも……葉音と一緒にいるのは当たり前っていうか、賞品のイメージじゃないからさ」

『……む、悟くんはズルいね。今のはとってもズルいと思う』


 そんなことを言われても、思ったことを言っただけである。


『なら、もっと他の賞品がいいってことだよね。うーん……』


 顔が見えずとも、かなり考え込んでいるのが読み取れる。

 賞品なんてなくてもクイズに答えるつもりだが、男が異性への贈り物で悩むように、逆もまた然り。


『——次のリベンジャーズのチケットは?』

「乗ったッ! この問題、なんとしても正解してみせるッ!」

『やったぁー! その意気だよ悟くん!』


 百点なんてもんじゃない。

 女の子って、相手が欲しいものとか分かるんだなぁ。


「やるからには本気で当てさせてもらう」

『もっちろん! それじゃあ問題を出すね』


 彼女は一拍置いてから、運命の一問を発表する。


『僕がいま、悟くんと一番行きたい場所はどこでしょうか!』


 むっずいなおい。


「えっと……範囲が広すぎない?」

『えぇ〜! 悟くんなら分かると思うんだけどなぁ〜?』


 俺に全幅の信頼を置きすぎている。

 とりあえず、ヒントだけでも貰わなければ勝ち目がない。


「今から俺が質問していくから、“はい”か“いいえ”で答えてほしい。それで絞ってくよ」

『いいよ〜!』


 よし、マキネーター起動。

 これでどうにか絞っていこう。


「えー……じゃあまず、それは飲食店ですか?」

『部分的にというか、今回はというか……はい、かな?』

「おお……?」


 一発目から歯切れが悪い答えだな。

 何かを飲み食いする場所なのは間違いないようだが、普段から営業しているわけではない?


「それは都内にありますか?」

『はい!』


「一緒に行ったことはありますか?」

『いいえ!』


 全然分からないということが分かった。


「それは期間限定ですか?」

『はい!』


 なるほど、イベント系か。


「それは屋外で開催されていますか?」

『はい!』


 だいぶ絞れてきたぞ。

 屋外で開かれている期間限定の飲食イベント。


 パッと思いつくのは代々木公園や駒澤公園での〇〇フェス的なやつだ。


「代々木公園ですか?」

『いいえ!』


「駒澤公園ですか?」

『せいか〜い! 駒澤公園で開催される肉フェスでした!』


 普通に当たっちゃったな。


 それにしても……肉フェスか。

 かなり前の話にはなるが、ニュースで特集していたのを見たことがある。


 全国の肉自慢たちが一堂に会し、最高の一品を提供してくれるというイベントだが、しかし。


「……さすがに厳しいんじゃないか? 通学路ならともかく、肉フェスの人払いなんてできないだろうし……」

 

『そうなんだよねぇ……悟くんとお肉食べたいけど、変装してても見つかっちゃいそうだし。前みたいに涼に迷惑かけるわけにもいかないからねぇ』


 ゴンドラに乗った時のことか。

 あの時は、二人でいるところを写真に撮られてしまったんだったな。

 涼がいなければ、今の俺たちの関係も無かったかもしれない。


『はぁ……残念だけど諦めようかな』

「そうしよう。またいつか、一緒に行ける時があるだろうし」


 葉音がどう思っているのかはあんまり知りたくないが、俺としてはアイドルを続けてほしい。

 人前で輝きを放ち、夢を与えられる人間なんて滅多にいないのだから。


 彼女も俺の気持ちを理解してくれているようで、渋々ながらも受け入れてくれるようだった。


『じゃあさ、一つだけお願いがあるんだけど、いいかな?』

「お願い?」

葉音と二人のイベントってしばらくぶりじゃないですか?


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

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