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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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97.まじかテンノーン

 席に着いてから、メイドさんが俺たちに店のシステムを説明してくれる。

 

 ここまでの天王洲とのやり取りで興味が湧いたのか、彼女——名前は『はんぺん』というらしい——は明らかに天王洲に向けて話している。

 

 まぁ、俺はアニメで大体のテンプレを理解しているし、二兎はコンカフェユーザー(仮)らしいし、それで正解だった。


「それじゃあ、注文はQRコードでお願いしまぁ〜す!」


 はんぺんが去っていく。


「なんか、最近はどこもQRだよなぁ」

「ここは大丈夫ですけど、電波がザコザコなお店もありますし面倒ですよねぇ」


 地下の店とかやめてほしいんだよな。

 そんな話をしながら、俺はカメラアプリでQRコードを読み込み、注文ページを表示させる。


「二兎のおすすめは?」

「定番はオムライスですけど、ケチャップライスが硬い可能性もあるんですよねぇ。フードは基本的にレンチンじゃないですかぁ」

「夢のない話だな……」


 内勤がいたとしても、誰がそこまで料理に集中するんだという話ではある。

 もっとガールズバーに近い業態であればキャストが作るのかもしれないが。


 とりあえず、俺はパフェを頼むことにした。

 二兎も同じやつっぽいな。

 あとは天王洲だが、彼女は何に——


「……天王洲」

「はい」


「えっと……何をしてるんだ?」

「何と言われても、調べているんです」


 堂々と言ってくれた天王洲だが、スマホも取り出さず、QRコードの書かれた紙の表と裏を見つめているだけだ。


「もしかして、QRコードの読み方を知らないのか?」

「……目で見ることは、読むことでは……ないようですね」


 なるほどね。何にも分からないということが分かった。


「あの、とりあえずスマホを出してもらえるか?」

「…………教えていただけるのですか?」


「だって、そうしないと注文できないだろ。ほら、早く出して」

「……分かりました」


 彼女はスマホを取り出すと、なんの躊躇いもなく俺に差し出した。


「よろしくお願いします」

「えっと……単なる興味なんだけど、人にスマホを見せることに抵抗とかないのか?」


「抵抗ですか?」

「その、スマホだってプライバシーだろ? 自分が撮った写真とか、誰かとのメッセージとか……」


「そういうことですか。私は基本的にスマートフォンを使わないので、何もないです」


 そう手渡されたスマホの電源を入れてみると、ロックすらかかっていない。

 彼女のセキュリティはどうなっているのか。


「ま、まじかテンノーン……」


 二兎が小さく漏らした。

 テンノーンって誰だよ。結構語呂がいいな。


 それはともかく、俺はスマホの画面を天王洲に見せる。


「……これがカメラアプリな。これを起動して、その紙に書かれてるQRコードを読み込むと、メニューが見れる」

「これは…………不思議ですね」


 心なしか目が輝いている気がする。


「で、天王寺は何にするかって話だ」

「七里ヶ浜くんは何にしましたか?」


「俺はこの……ベリきゅんチョコレートパフェだな」

「ベリ、きゅん……どういう意味でしょう」


「特に意味はないよ。ただ、きゅるきゅるしながらチョコソースをかけてくれるだけで」

「きゅるきゅる……?」


 こればかりは説明しても無駄だろう。

 天王洲も結局、俺たちと同じくパフェにした。


 しばらく待っていると、隣の席に座っていた客が立ち上がり、中央の広場でチェキを撮り始めた。


「二兎は可愛い子目当てで来たんだろ? チェキは撮らないんだな」

「うーん、撮っても良いんですけど、すぐに辞めちゃう子だったら嫌じゃないですか」


「そういうもんなのか」

「だって、もう二度と会えない子のチェキですよ? 半分、遺影みたいなもんです」


 遺影って……。

 ただ、彼女の言わんとしていることも理解できた。


「他のお店に転生してくれるなら良いんですけどねえ」

「……転生とは、どういう意味なのですか?」


 天王洲が会話に参戦してきた。


「えーっと、たとえばここのお店を辞めちゃった子が、他のお店でメイドさんを始めることです」

「死んでしまうわけではないんですね」


「い、一応前のお店のことを前世とかって言いますし、死んじゃってるのかな……?」


 なんだかちびっ子と話している気分だな。

 受け答えをしていた二兎も困惑しているし。


 彼女が庶民のことを学んで成長したら、一体どうなるのだろう。

 まぁ、俺がそれを見ることはないだろう。


 そうこうしているうちに、パフェが届いた。

見ることはないんでしょう、きっと


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