96.ご主人様の責務
「「「おかえりなさいませ〜! ご主人様ぁ〜っ!」」」
店に入るや否や、大変元気のよろしい挨拶が数人のキャストから飛ばされ、俺は早くも圧されてしまっていた。
秋葉原に到着した俺たちは適当に駅の周辺をぶらつき、近年アホみたいに増え始めた外国人の群れに飲み込まれそうになりながら、行くべき店を探していた。
そして、「ここにいるパキモントレーナーを全員倒したら豪華景品ゲット!」ばりに点々と立っているコンカフェ嬢の中から、一番バックにヤのつく人がいなさそうな店を見繕って、入店したわけだ。
それでもビビるハメになったわけだが。
「……なぁ二兎、コンカフェって、こんな感じなのか?」
「こんな感じってぇ、どんな感じですかぁ?」
ニヤニヤしながら俺を見る二兎。
「いや、その…………かなりハードルが高いっていうか……」
「腰が引けちゃってる先輩、可愛いですねぇ〜っ!」
こ、こいつ……!
完全に馬鹿にされているが、アウェイすぎて言い返す気にもならない。
その時、メイドの一人がこちらに駆け寄ってきた。
「ご主人様、お嬢様、お帰りなさい〜! 三名様でよろしいですか〜?」
「これは、ご丁寧にありがとうございます。三名で間違いありません」
俺や二兎が答える前に、ヌルッと出てきた天王洲が返事をする。
「……あ、あの人って受け答えとかできたんですね」
二兎の考えている事は分かる。
天王洲が俺たちの代わりに——という意識はないだろうが——出てきたのもそうだし、店員と会話する姿なんて想像してなかった。
同じような印象を受けていたのか、俺たちに声をかけてきたメイドさんも若干驚いている。
だが、それでもプロではある。
その目に闘志を燃やして天王洲にチャレンジするようだ。
「お姉さん、すっごく可愛いですね! アイドルとかされてるんですかぁ?」
「お世辞にしては安直ですが、ありがとうございます。私は一般的な高校生です」
うん、相手が悪いよね。
それにしても、彼女は自分のことを「一般的」だと思っているのか?
どこの世界に、図書室だか学校だかを買い取ろうとするパンピがいるんだよ。
脳内でツッコミを入れていると、メイドさんの何かが気に入ったのか、天王洲はじっと見つめている。
「ここで働く方たちは、最終的にはどちらの家に行かれるのですか?」
「ええっと……どちら、っていうのは?」
「あぁ、質問が悪かったですね。東堂や西堂の使用人とは雰囲気が違ったので。もちろん、答えられればで大丈夫ですよ」
天王洲さん、それは無理があると思います。
「…………強いて言えば、ハピネス・インターナショナル、ですかね……?」
「なるほど、海外まで行かれるのですね。近頃はグローバルな人材が必要とされていますし、納得しました。父にも伝えておきます」
「はぁ……」
後で調べたが、ハピネス・インターナショナルとは、俺たちが訪れているメイドカフェ「めいどきどきっ!」の運営元らしい。
質問の意図というか、相手の正体すら定かでない状態なのに、素晴らしいアドリブ力である。
「それじゃあ……他に聞きたい事はありますか? お嬢様……」
「失礼しました。大丈夫です」
メイド顔負けの綺麗なお辞儀だ。
「では、お席にご案内させていただきます〜っ!」
天王洲を先頭に、俺たちはメイドさんの後についていくことに。
(……天王洲先輩のお家って、メイドさんとかいるってことですかね……?)
(多分いるだろうな。前に街中で会ったことがあるんだけど、爺に迎え来てもらってたし)
(あ、アニメの世界じゃないですか…………爺も作らないと……)
(爺を作る?)
(——ッ! こ、こっちの話です!)
よく分からないが、二兎も世界の違いに衝撃を受けているようだ。
爺がいるぐらいだし、メイドさんという呼び方で合っているかは不明だが、似たような役割の人はいるだろう。
そうなると、それが一人なのか十人なのか、それとももっと多いのかが次の疑問だが、考えるのはやめておこう。なんか怖いし。
そういえば、涼もお嬢様なんですよね。
すっかり忘れてたので、どこかでor今までのに挟む形でエピソード入れたいです。
星をいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!
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