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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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94.新たな火種?

「じゃあ悟くん、また明日ね。僕のことが恋しくなったらいつでも連絡して。あ、家に来たかったら合鍵渡すよ。一緒に住んじゃう?」


「私も一人暮らししようかしら。葉音のマンションだと必然的に三人になっちゃうし。……そのためには知名度をもっと上げる必要がありそうね」


 俺の意見を聞いているようで聞いてなさそうだ。

 苦笑いして誤魔化していると、それを肯定だと受け取ったのか、二人は満足そうな顔で去っていった。


「……先輩って、あの二人のこと怖くなったりしないんですか?」

「常に怖いに決まってるだろ。俺、鍛えてるんだけどさ——」

「先輩の小さい脳みそじゃないんですから知ってますよ」


「あの二人、いざという時は俺より力が強いんだよ。どういうことだと思う?」

「……火事場のナントカってやつじゃないですか?」

「火事場ってピンチみたいなことだろ? あれを火事場っていうのは……可能性はあるか」


 ここで俺を逃してはいけないという気持ちが脳のリミッターを外したのかもしれない。


「俺の小さい脳みそも、リミッターが外せると思うか?」

「無理ですねっ!」

「即答かよ」


 まぁ、俺も二兎の意見に同意だ。

 よっぽどの危機に陥らない限り、限界を超えた力は出せそうにない。


「……じゃあ、そろそろ帰るか」

「えぇ〜、先輩もう帰るんですかぁ? 帰ってもどうせ映画観るだけですよね?」


「そうだけど……俺が映画好きって言ったっけ?」

「また脳みそのくだり、聞きたいんですかぁ?」


 首を横に振る。


「そ、れ、よ、りぃ〜、私とデートしましょうよぉ」


 ちょっと面倒くさいぜ!

 

 自然と腕を組んできているところ悪いが、俺は早く帰ってチキンエンジェルの新シーズンが見たいんだ。


 ここは切り抜けさせてもらう。


「あぁ、じゃあメイドカフェに行きたいかな。二兎がそれでもいいなら——」

「えっ、メイドカフェですか!? 行きます、行きましょう!」


 あれ……?


 俺の予想が正しければ「はぁ〜? メイドカフェとかキモいんですけど。もういいです帰ります」的な反応が来るはずだったんだが。


「はいし——勉強のために行ってみたかったんですよねぇ! 先輩もたまにはマシな場所出せるんですね?」

「あ、うん…………本当にいいのか?」


「いいも何も、可愛い女の子は正義です! 揺るがぬ事実ですよ?」

「でも、そんなこと言ってるけど二兎って葉音とか涼が好きじゃないだろ?」


 それは、と言葉を濁す二兎。


「私に害のない子、限定なんですよ」

「あの二人は俺にしか害ないだろ」

「はぁ……先輩の中ではそうなんでしょうね。でも、世界って思うより広いんですよー」


 年下に世の中について諭されてしまうとは。


 俺だってやる時にはやるのだと、たとえば涼をナンパ男から助け出した時の活躍を、二兎にも見せてやりたい。

 

 いや、格好つけて足挫いてたから別のにしよう。


「行くなら秋葉原か池袋ですけど……やっぱりアキバですよね」

「メイドカフェ以外にも色んなコンカフェがあるしな」

 

「じゃあ、早速出発しましょう! 先輩の亀の歩みじゃ暗くなっちゃいます」

「はいよ」


 俺の作戦ミスが原因だが、押し切られてしまった。

 仕方ない。コンカフェを楽しむとしよう。


「…………私も行きます」

「「んえ?」」


 俺も二兎も、俺たちしかいないと思い込んでいた。

 背後から聞こえた声に、間抜けな反応をしてしまう。


「私も行きます」


 もちろん天王洲だ。

 彼女は感情の読み取れない無表情で、俺たちに同行を申し込んでいる。


「どうしてですかぁ? コンカフェはお嬢様が行くところじゃありませんよー?」


 二兎が食ってかかる。

 よし、いいぞ二兎。俺も天王洲がついてくるのには反対だ。

 俺の代わりに彼女を言い負かしてくれ。


「だいたい、天王洲先輩はメイドさんとか興味ありませんよね? 私と悟先輩は軽い気持ちで行くんじゃないんです。魂を賭けてるんですよっ!」


「家にいるメイドとの違いが気になったんです。七里ヶ浜くんに勉強を教えた見返りとして、過ぎたものではないと思いますが」


 あ、なんかこれダメそうじゃない?

 俺の腕を掴む二兎の力は既に強い。


「ぜ、全然過ぎたものです! 別にあなたがいなくても、悟先輩ぐらいのお馬鹿さんなら、私が教えられますから!」

「——本当に、私がいなくても大丈夫ですか?」


 驚くほどスムーズに罵倒されたのはさておき、二兎はダメージを喰らったように後退する。


 どこに引っかかったのかは分からないが、この戦いは二兎の負けらしい。

 

 そして、彼女に代理を任せた以上、俺の負けでもある。

 秋葉原探検に天王洲が同行することになってしまった。


 

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