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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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89.東堂涼の日常

「——はーいすみません! 次のセット確認があるので、少し休憩でお願いします!」


 スタッフさんの言葉で、スタジオ内に雑音が溢れ出す。


「…………はぁ」


 自然と出てしまうため息。

 今日は学校を休むことになった。

 

 テレビ番組の収録——モニターに映る可愛らしい動物の動画を見て、それに反応するというありがちなもの。

 葉音ほどではないが、そこそこ名の売れたアイドルやモデルを集めていることもあり、一種の緊張感が漂っている。


 私はそれで満足のいく演技をすることができずに落ち込んで——いたわけではなく、単に悟や葉音に会えないからだ。

 悟成分に関しては不足も不足。そろそろ禁断症状が出てもおかしくない。


 どうにかして二人きりの状況を作らなければ。

 そんなことを考えている私の横で、人が立ち止まる気配があった。


「やっほー涼ちゃん!」

「東堂さん、久しぶり」


 そこにいたのは、モデル仲間の渋谷美奈と浅川由美だった。

 二人は同じ事務所。私とは違うけれど、何度かファッション誌の撮影で一緒になることがあり、話す機会が増えて今は友人と言える仲。


「二人とも、一ヶ月ぶりくらいよね。ごめんなさい、一緒の現場だって気付かなくて……」

「ううん、私も美奈さんに教えてもらうまで気付かなかったから」


 フォローしてくれた浅川さんは私の一つ上で、何かと似ているところがある。

 二人とも黒髪ロングだし、性格もどちらかと言えばクール。

 

 ただ、芸歴的には私の方が長く、タメ口ではあるもののお互いに苗字で呼び合うという独特の状況。


「いや、ちょっと動画見るのにも飽きたっていうか……眠いなぁって思ってる時にキョロキョロしたら、ちょうど涼ちゃんが目に入ったの!」


 美奈さんは私とは正反対の人だ。

 社交的で、美人ではあるが親しみが持てる。東南アジア系のハーフだからかもしれない。


 ちなみに、彼女との関係性も少し複雑だ。

 美奈さんは大学生だが、芸歴は少しだけ私の方は長い。

 だけど明らかに人間的にできているのは彼女の方であり、お互いタメ口で話すことにした。


「ずっと可愛くても疲れてしまうものね」


 眠いのは私も同意だ。

 少し気分転換がしたかったところだし、二人が見つけてくれたのは幸運だった。


「うーん。でも涼ちゃんさ、なんだか別のことに意識がいってない?」

「……そうかしら?」

「確かに、去年の修学旅行前の私と同じような感じがする」


 修学旅行。そういえば、浅川さんには好きな相手がいて、修学旅行で距離を縮めようとしていると言っていた気がする。


「その時は……上手くいったの?」

「うん。京都駅で二人きりになる機会があって」

「なになにっ! もしかして涼ちゃんにも好きな男の子ができたわけ!?」

「……実はそうなんです」


 私の言葉を聞いて、二人の顔が恋愛モードに入る。


「ついにモデル仲間から恋愛同盟に進化する日がきたみたいだね……まぁ私は相手がいないんだけど」

「私もまだ復縁できてないんだけどね」

「ずいぶん幸先の悪い同盟じゃないですか……?」


 とはいえ、恋愛相談ができる友達が欲しかったのは事実だ。

 葉音は一応ライバルだし、同じ芸能人なら流出の心配は少ない。


 悟との出会いの部分はかなりボカして、二人にこれまでの説明をすることにした。


「——ということなのよね」

「かなり強敵だね。話を聞く限り、他の子たちも東堂さんに並ぶくらい魅力的な人みたいだし」

「ねぇ……今の若い子たちってみんな肉食系なの? 私の周りはなに?」


 共感してくれている浅川さんと驚愕している美奈さん。


「逆に、二人のライバルはどんな感じの人なの?」

「私は……彼が推してたコンカフェの子と、彼の後輩」

「そもそも私は好きな人いないんだけど……仲良い男友達は私の親友といい感じで、ライバルなんていないかな」


 美奈さんは、おそらく自分に向けられる好意に気付かないタイプだ。

 一方で浅川さんのライバルは手強そう。私にとっての葉音と二兎さんみたいなものだ。


「ま、私にはよく分からないけどさ、とりあえず勉強会はした方がいいと思うよ」

「東堂さんって頭いいんだし、そこで好感度上げたいですよね」

「そうそう。あとは……もうすぐ夏じゃん?」

「夏……確かにそうだけど、それがどうしたの?」


 私が首を傾げると、美奈さんは自信満々に指を立てた。


「MINEで二人きりのデートに誘って、海とか行っちゃえばいいんだよ!」

「……アリかもしれないわね!」


 夏休みは、毎日のように顔を合わせることはできない。

 しかしそれは葉音たちも同じ。

 いつ、どのタイミングで悟と会っているか分からないのだ。心理戦に近いものを感じる。


「もう行ったことあるかもだけど、夏の水族館もいいよ」

「半袖……触れ合う二人の肌……水族館もいただくわ!」


 またまた良い案をもらってしまった。

 無難に品川に行ってもいいし、少し遠出して江ノ島まで足を伸ばすのも悪くないと思う。


「あと、これは演劇サークルの人から聞いた話なんだけど——」


 美奈さんが更なる有益情報を授けてくれようとした時、スタッフさんが収録再開を告げた。


「あちゃあ……また後で話そうね!」

「私も参考にしたいから、東堂さんよろしくね」


 二人は自分の席へ去っていく。

 それにしても、期末試験の先にある夏休みを利用するなんて、良い事を知れた。


 当たり前だけど、他の二人も同じチャンスを狙っている可能性はある。

 それでも負けるわけにはいかない。特に危険そうな二兎さんには。


 ……と、一回このことは忘れないといけない。

 このままだと、愛らしい動物を見ているとは思えない顔になってしまうからだ。

今作ではなく歩く魚ファンの方なら、今回の話は喜んでくれるかもしれません。違う人はぜんぜん、今日からなってくださって構いませんよ^ ^


評価ポイントをいただけるととても嬉しいので、お手数ですがよろしくお願いいたします!

作品作りにご協力いただけると幸いです!


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