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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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83.貸切図書室と二人のバカ


「――それじゃあ、ちゃんと説明してもらっていいかな? 悟くん?」


 放課後。「なぜか」他の生徒どころか先生までいない貸切状態の図書室で葉音が口を開いた。

 顔はニッコリしているが声は笑っていない。一ヶ月くらい前にも同じ体験をした気がする。


「そうよ悟。あなたは私と葉音に説明する義務があるんじゃないかしら」


 今回は涼も向こう側だった。彼女もニッコリしている。

 ニッコリが二人でニコニコだなぁ……なんて考えてしまうくらいには美少女たちの圧が強い。


「ええと……」


 情けなく声が上擦る。


「と、友達が困ってたら助けるのは当然だろ? これも青春の一ページってことでさ」

「うんうんそうだよねぇ〜、なんだかページの色がピンクから青に変わってるけど、一ページにはなるよねぇ〜」


 言葉の節々が針のように尖っている。

 これには流石の隆輝もビビったのか、「恐縮です!」と爆音を発したが、状況的にまさしく恐縮だったため笑いそうになってしまった。


「まぁ、百歩譲って悟のお友達が来るのは良いわ。恩を売れるしね」

「恩って……」


 彼女が言いたいことは分かるけれど、昼休みに隆輝は「俺は後輩ちゃんの味方になる」とか言っていた。

 そもそも涼の論は破綻にしていることになるが、彼のために黙っておく。


「ゼロ距離で悟に勉強を教えられなくなるだけだもの」


 こっちも相当に恨みが溜まっているようだ。


「良いのよ別に、気にしなくて。ただ――その子は違うんじゃないかしら?」

「うんうん。僕も聞いてないかなぁ」


 矛先を向けられたのは隆輝――が呼んできた二兎だった。

 柔らかいはずの図書室内の空気が重くのしかかる。


 しかし二兎はというと、隣に座っている俺に腕を絡めると甘ったるい声で挑発を始めた。


「えぇ〜、どうして他に人がいないのか分からないですけどぉ〜、図書館を使うのは学生の当然の権利ですよねぇ?」

「だとしても、他に生徒がいない理由は分からないのかしら?」

「わかりませぇ〜ん!」


 涼の白くきめ細やかな肌に青筋が浮かぶ。


「図書館が落ち着くんですもんー、ねぇ悟先輩?」


 頼むから俺に振らないでください。



 いくら詰めても埒があかないということで、俺たちは当初の目的である試験勉強を始めることにした。

 長方形の六人がけの机、手前は左から隆輝、俺、二兎。俺の目の前に涼がいて、その右に葉音が座っている。


「ちなみに、みんなの成績ってどれくらいなんだ? あ、隆輝は言わなくていいよ」

「せめて笑いに変えさせてくれよ! 最底辺ですッ!」

「せんともさん……笑えないです……」


 葉音は苦笑い、涼に至っては無表情である。


「僕はだいたい三十位台くらいかな」

「アイドルやりながら高順位……もっと早く葉音に教えてもらえば良かったよ」

「えへへ〜そうかな? 悟くんのためならいつだって大歓迎!」


 勉強する時間自体が少ないだろうに、効率が良いのだろう。


「私は基本的に五位以内ね」

「五位!?」

「驚くことないわよ。私が教えれば悟だって簡単」


 彼女たちは逆に何ができないんだろう。

 ちょっと俺の頭の悪さに辛くなってきた。

 唯一の後輩に助けてもらうとしよう。


「私も東堂先輩くらいですねー」

「嘘だろ……」

「本当ですよ? 先輩って頭いいんでしたっけ?」

「俺は……毎回ピッタリ半分だよ」


 告げると二兎の口角がみるみる吊り上がっていく。


「ぷぷっ! 先輩って頭までよわよわなんですかぁ? ほ〜んとに雑魚ですねぇ?」

「今回ばかりは言い返せない……」


 なんで来たんだよと葉音達に言われかねない成績の良さ。

 まさか、俺が普段関わっていた女子達が上澄の頭脳を持っていたとは……。


 ふと左の隆輝が静かだと気付いて横を向くと、彼の口からは魂が出かかっていた。


「やっぱり頭が良くないと……モテないのか……?」

「そ、そんなことないと思うぞ。今回の試験から頑張ろうぜ」


 そう言って肩を叩いてやると、少しだけ魂が戻ってきた気がする。そろそろ勉強開始だ。

 

試験なんて受けたくないぜ!


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