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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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110.マーク5とマーク50ぐらい違う

「——やりましたね、七里ヶ浜くん。前回は出来なかった問題です」


 問題を解いた俺のノートを見ながら天王洲が言った。


「次の問題も頑張りましょう」


 ノートを手渡すと、天王洲も自分の問題に戻った。

 チラリと目をやれば、俺よりも何段階も進んだ内容をやっているようだ。


 俺も続きをやろうと思ったが……隆輝と涼がこちらに注目している。


 今日の勉強会は、かつてない組み合わせになっていた。

 

 葉音はアイドルとしての仕事があるらしく休み。

 メッセージで「この前抜け駆けしたバチが当たったかも」と言っていたのを思い出す。


 さらに二兎も休み。彼女は廊下ですれ違った時に「今日頑張らないとテンノーンが手に負えなくなるんです」と焦っていた。どういうことだよ。


 なので、今日のメンバーは俺と隆輝、涼、そして天王洲の四人なのだ。

 

 隆輝は俺としかマトモに話せず……というか圧に勝てないようで、涼は隆輝と天王洲に興味がなく、天王洲は辛うじて俺と言葉を交わしてくれるくらい。


 いつにも増して盛り上がらないパーティではあるが、俺と天王洲のやり取りに何を思ったのか、残りの二人が反応しているのだった。


「……なんだよ」


 声を抑えながら隆輝に聞いてみると、彼はこちらに身を乗り出し、俺の肩をガッチリとホールドする。


「なぁおい、一体何があったんだよ」

「何って?」


「いやいやお前……天王洲さん、めちゃくちゃ喋るようになってるじゃねぇか」

「……そうかぁ?」


「もう別物だよ。シルバーマンのマーク5とマーク50ぐらい違う」

「次元が違うじゃんかそれ」


 ナノマシンとか使い始めてちゃってるよ。


「マジで、それぐらい違うんだって。悟、一体どんなイベントをこなしたんだよ」

「何にもしてないんだけどなぁ……なんだよ、その顔は」


「いつものように呆れた顔だが?」

「般若の面のモノマネかと思った」

「ぬかすぜ」


 隆輝はふっと笑うと「だったら証拠を見せてやるよ」と告げて、俺から離れた。


「なぁ天王洲さん。俺の名前って分かる?」

「すみません。興味がなくて」


 彼は「な?」という顔で俺を見た。何も納得できないんだが。


「じゃあさ、この問題教えてもらってもいい?」

「…………しょうがないですね。一度しか言いませんよ」

「ありがとうございますッ!」


 今度はめちゃくちゃドヤ顔だ。


(……言われてみれば、前回は隆輝が聞いても教えてもらえなかったか……?)


 俺の記憶違いかもしれないが、少しだけ天王洲の態度が軟化しているのか。

 二兎という友達ができたお陰だろう。


 俺が彼の代わりに聞く必要がなくなったわけだし、良いことだ。

 

 さて、俺も勉強に戻るとするか。

 なんだって? 涼の様子を確認しなくていいかって?

 無理だ。目がマジすぎて怖い。



「——今日はこのくらいで終わりにするかぁ」

「ふぃー疲れたァ! 脳みそはち切れそうだから走ってくるわ!」


 隆輝はいの一番に図書室を飛び出して行った。


「あの、七里ヶ浜くん」


 鞄に教科書をしまい終えた俺に、天王洲が声をかけてきた。


「どうした?」

「あの……今日の放課後は、何か予定が?」

「今日かぁ」


 今月は面白そうな映画が多く公開されていて、あと二回くらいは映画館に行きたいところだ。


 だから、これから行ってもいいのだが……少しだけ気分が乗らない。


「いや、特に予定はないけど……どうした?」

「重要な用があるというわけではないのですが、もし良ければこれから——」

「悟は予定があるわよ」


 横から言葉の槍が飛んできた。涼だ。

 彼女の声はあまりに冷たくて、本当に槍が飛んできたと思ってしまいそうになる。


「悟はこれから私とデートなの。有無は言わせないわ」

「予定というのは両者の合意が——」

「もう一度言うわ。有無は、言わせないわ」


 取りつく島もなく、涼は俺の腕を掴んで歩き出した。


 有無を言わせないというのは誰に向けた言葉なのか。

 俺になのか、天王洲になのか。おそらく両者にだ。


 俺は涼にされるがままだったが、一度だけ振り返った。

 天王洲は何も言わずに立ったままだ。


 以前なら、こういう状況でも容赦なく反論していたはず。

 戦わない理由を考えたが、思いつかなかった。

本当は涼回はなかったのですが、心の中の涼が書けと叫ぶため書くことにしました


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