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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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107.三重魔術

 部屋に到着し、各々の荷物を置きはしたが、俺たちはまだ腰を下ろすことができない。なぜなら——


「よーし、それじゃあドリンクを作りに行こう」

「そういえば、そんなこと言ってましたね……」


 二兎はあんまり乗り気じゃないんだよな。


「自分で飲み物を注ぐ、ということですよね? 興味深いです」


 天王洲はやる気を出してくれて嬉しいが、もしかして自分で飲み物を入れたことがない? マジで?


 俺にも「マジかテンノーン」が移ってしまいそうだ。


 俺たちは受付近くのドリンクバーに移動し、紙コップを片手にラインナップを見ることにした。


「……七里ヶ浜くん、これは一体なんなのですか?」

「庶民の夢さ」


「夢……? なるほど」

「先輩、セラちゃんに適当なこと吹き込まないでください」


「いやいや、本当のことだろう。この、なんて呼ぶのか分からん機械には夢が詰まってる」

「弄ぶのは私だけにしてくださいねぇ? 女たらしの悟先輩〜?」


 心なしか彼女の笑顔が怖い。

 そんなふうに呼ばれることをした覚えはないが、二兎から滲み出す迫力には、実体験の厚さがあった。


 しかし、この機械は本当にすごい。

 各ドリンクのパッケージがはめられた複数のボタンがあり、それを押すと、すぐさま放出されるのだ。


 俺は天王洲に見せるように、試しにコーラを出してみる。

 シュオオ……という音で流れ出す茶色い液体を見て、天王洲は目を輝かせていた。


 俺は、コップの半分ほどに注がれたコーラを飲み干すと、今度はメロンソーダを入れていく。


「ま、魔法のようですね」

「これを持って原始時代にタイムスリップすれば、神として崇められるだろうな」

「その時代でコーラとかメロンソーダを用意できれば、ですけどね」


 確かに、内蔵されている飲料がなくなれば神タイムも終わってしまうな。なかなか賢いじゃないか。


「ってことで、天王洲も好きなやつを選ぶといい……んだが、混ぜるという選択肢がある」

「先ほど言われていましたね」


「あぁ。コーラみたいな味の濃いやつは、混ぜると大体失敗する。合体事故ってやつだ」


 事故るとはちゃめちゃなスキルを持った奴が誕生したりするから、やり込むプレイヤーは事故を狙うものだが……ドリンクバーでの利点は皆無だ。


「ただ、ドリンク界にはスーパープレイヤーがいるんだ。ほとんどの飲み物と相性が良く、そのまま飲んでも美味いオールラウンダーが、な」

「そ、そんな存在が……」

「それは……乳酸菌飲料だ!」


 俺は、白いパッケージのそれをビシッと指差す。


「普通に美味いこれは……オレンジジュースとか葡萄ジュースと混ぜても美味い。それどころか、メロンソーダやコーラでさえも包み込み、新たな味を提供してくれるのさ。色が白いのは、何者にも染まることができるからだろうな」


 アツすぎる語りに、天王洲は衝撃を受けているようだ。

 二兎はというと、俺たちのことは無視して、別の自販機にある抹茶ラテを入れていた。


「じゃあ、天王洲も試してみるといい。もし失敗しても、その時は俺が全部飲んでやるさ」

「い、良いのですか……?」


「もちろん。マッドサイエンティストの道に引き摺り込んだのは俺だしな」

「では、お言葉に甘えさせていただきます」


 そう言って、天王洲は見よう見まねでドリンクを注ぐ。


 最初に入れたのは、俺のオススメである乳酸菌飲料。

 それを半分ほどまで入れると、今度はオレンジジュースを投入。


(ふむ、俺の解説をしっかり聞いているな。良い生徒だ)

 

 そう思っていると、彼女はすぐにボタンを押すのを止めて、葡萄ジュースを入れ出す。


(ま、まさか三重魔術だと!?)


 相当な実力者でも失敗することの多い技だ。

 いきなり挑戦するだなんて、恐ろしい子……!


 しかし天王洲の勢いは留まることを知らず、メロンソーダ、コーラ、果てには野菜ジュースまでぶち込んでいく。


「完成……しました」

 

 出来上がったのは、車にブチ込んだら動きそうな真っ黒な液体。

 天王洲はキラキラと煌めく瞳で初めての作品を見て、躊躇なく口に入れる。


「………………難しいものですね」


 わずかに顔をしかめながら、俺に紙コップを手渡した。

だんだんとポンコツになる天王洲(俳句)


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