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【3章開始】距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる  作者: 歩く魚
二兎芽莉彩/天王洲セラ

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105.ザコザコというか、ガキですね…

「……で、用っていうのは?」


 マキネーターの罠にまんまとハマってしまった翌週。

 もはや恒例行事となった勉強会を終え、帰ろうとしていた俺のスマホが震えた。


 確認してみると、二兎からのメッセージだった。


『今日は駅前で集合ですよぉ〜!』


 ご丁寧にハートの絵文字までつけてくれたが、元々彼女とは約束をしていない。


 しかし、『クラウドマン』四作目をレイトショーで観た俺に、二兎の誘いを断ってまでやることもなかった。


 軽い気持ちで駅向かった俺を待ち受けていたのは二兎と——天王洲だ。


「……で、用っていうのは?」


 短すぎる回想終わり。

 戸惑う俺に答えをくれるのは二兎かと思いきや、天王洲の方である。


「本日は、漫画喫茶……というものに行ってみたいと思います」

「漫画喫茶ぁ?」


 首を傾げると、二兎がぷっと笑う。


「セラちゃんは、漫画喫茶に行ったことがないらしいですよぉ〜。それどころか漫画も読んだことないって、さすがにヤバすぎますよねぇ?」

「…………セラちゃん?」


 いや、もちろん漫画を読んだことがないというのは——天王洲の家柄を考えると妥当とも考えられるが——驚きに値する。


 するのだが、それよりも「セラちゃん」という呼び方が気になってしまった。

 二兎は俺から目を逸らし、話すら逸らそうという雰囲気だ。


「二人って、そんなに仲良かったのか?」

「そうなのです」


 俺たちの会話に天王洲が入ってくる。


「この前のメイドカフェの帰りに、それはもうお話が合いまして。私は芽莉彩ちゃんと、芽莉彩ちゃんはセラちゃんと呼び合う仲になったのです」


「そ、そうですよぉ……とっっっっっても話が、合いまして……」

「なるほどねぇ」


 二兎の反応には引っかかる部分もあるが、二人が仲を深めたというのは良いことだろう。

 

 少なくとも、天王洲が友達と呼べそうな存在と一緒にいるのは初めて見る。


 普段の取り巻きたちは、友達というよりは信奉者の集まりのようなものだからな。または海か土星の輪だ。


「では、行きましょうか」


 天王洲が言うや否や、俺たちの目の前に黒い物体が滑り込んでくる。横に長く、無駄に黒光りしている鉄の塊。


 そこから何者かが降りてきたと思うと——


(——じ、爺だッ!)


 いつぞやに見かけた爺。

 長身の細身だが、尋常でないオーラを放つ初老の男性が、リムジンの扉を開けて恭しく頭を下げている。


「ど、どうも……」

「お久しぶりでございます。その節は、本当にありがとうございました」


 にこやかに笑いかけてくれる爺。

 まさか、再び俺と彼の人生が交わる日が来るとは……。


 俺が車に乗り込むと、続いて二兎が、最後に天王洲が入ってきた。


「どうぞお寛ぎください。お飲み物も用意しておりますので」


 そう言って天王洲は、備え付けられている小さな冷蔵庫のような場所から、日本では売っていなさそうなビンの何かしらを取り出した。


「あのー……セラちゃん、それは……?」

「さくらんぼのジュースです。他のものが良かったですか?」

「い、いや……」


 二兎ですら、この異様な状況に動揺しているようだ。

 にしても、さくらんぼのジュースってなんだよ。絶対美味いじゃねぇか。


 とはいえ、とはいえだ……俺の読みが正しければ、二兎と天王洲は友達になった。

 

 二人の目的は……天王洲に庶民の生活を教えることなんじゃないだろうか。


 そう考えれば、前回コンカフェについてきたのも、今日の漫喫も納得がいく。


 近頃の俺は、だんだんと天王洲に対する嫌悪感が薄れてきている気がする。

 

 彼女は俺が嫌いというより、人間に対する興味がなかったのだ。

 プログラムされたことだけを実行する、機械のような性格。


 それが最近、どんな理由かは分からないが、一般庶民に興味を持ち始めている。

 

 二兎も友達が少なそうだし、二人が仲良くなれるのであれば、少しくらい手伝っても良い。俺も人助け成分が足りてなかったからな。


 そうなれば、俺が今やるべきことは一つ。


「なぁ天王洲、飲み物は飲まない方がいいぞ?」

「……何故ですか?」


 こてんと首を傾げる天王洲。

 彼女が分からないのも無理はない。


 これは、ファミレスや満喫といった、庶民の聖域に通ったことのある者の常識なのだから。


「これから俺たちは……科学の実験をするからさ」

「ザコザコというか、ガキですね……」


 横からそんなツッコミを入れられてしまった。

現実世界のラブコメばっかり書いてると、デートで行く場所が被ったり、「この作品でここって行ったっけ?」ってなっちゃうんですよね。


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