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「さて、後は継承と陞爵・叙爵だな。
宰相、頼む」
その言葉からこの一年で爵位を相続した者と陞爵・叙爵した者を発表する。
とは言え、奪爵と比べると人数はほんの僅か。
まぁ、降爵よりかは少し多いが。
「アゼル・ジーピン。
前当主アダラー・ジーピンからの継承を認め、男爵とする。
また、全国規模の誘拐に関わった者の捕縛。
この犯人に危険薬物を投与した人物の捜査。
そして、危険薬物製造拠点の調査と壊滅。
これらの国への貢献により子爵に陞爵する」
「ありがたくお受けいたします」
結構大きな拍手を貰えてるね。
秋の時はやる気の無さげな拍手しか聞こえてこなかったけど。
新しい参加者がちゃんと認めてくれたのかな?
「加えて、そなたはその後も貢献をしておる。
そなた自身の結婚式の時に、ディーマス侯爵が放った暗殺者を斬り捨てる。
そうして陛下の命を守った。
その後、王都にある暗殺者ギルドに反撃を行い壊滅させる。
これらは先の子爵への陞爵とは別に褒美を出そうと思う。
また、今後の伯爵位への陞爵においてこの貢献は参考とさせてもらう」
おぉ……!
これで、アゼル兄は何か大きな厄介事があれば伯爵になりそうだな。
とは言え、土地が今のままだとお話にならないけど。
男爵から拡張されてないからなぁ……。
あ、確か西部の貴族で北部に靡いた奴らがいたって聞いたな?
そいつらがボロ出したら……アゼル兄の領地にしてもらうとか?
う~ん、これは中々面白い未来がやってきそうだ。
「マーニ・ジーピン。
兄、アゼル・ジーピンと共に先の三つの事件に対して対応したこと。
これらの国への貢献により、男爵へ叙爵する。
既に名乗ってはいるが、マーニ・ジドロ男爵と名乗れ」
「ありがたくお受けいたします」
こちらも大きな拍手で迎えられた。
「加えて、そなたはその後も貢献をしておる。
長兄アゼルの式の際に、教会の外で騎士の心を捨てた獣共を弟と一緒に潰した。
それと暗殺者ギルドの壊滅にも協力している。
その後、騎士になってからも弟が見つけた元貴族による乗っ取りの件。
王都側の元貴族の味方を捕縛。
その後スホルム領に向かい元貴族と協力していたダイナ家を制圧。
王都に戻るや否や発生していた暴動を弟と共に鎮圧。
騎士団側に手を出し陛下からの指示を捻じ曲げたラング家の処分もしておる」
ざわつく謁見の間。
特に普段王都にいない方々は初めて知る情報に驚愕しているようだ。
「これらの貢献により子爵への陞爵を考えておる。
だが、国の法に基づき陞爵は一年で一度のみ。
故に、そなたが男爵になった秋を目途に陞爵をさせる予定だ」
よりざわつきが大きくなった。
とは言え、これで子爵へ検討とか言ってたら誰も子爵になれないしねぇ。
陞爵確定の宣言はかなりインパクトあるね。
……結婚は多分夏だから、その後子爵になるのか。
となると、今日はマーニ兄が婿探しのケダモノから守らなきゃダメ?
自力でお願いできないかなぁ……ロッティ姉様が泣くのは嫌だし。
あ、でも王太子殿下の護衛中に邪魔する愚か者は……いないことを祈るか。
その後も陞爵・叙爵が数名いたが割愛。
そして、最後に爵位変更は無いけれど多大な功績を叩き出した者への礼。
「まずはサバラ・ノイドにクーロ・グレル。
最近の元貴族による乗っ取りの件に対しての調査。
そしてラング家処分後にあ奴の手下として動いた貴族の捕縛。
そなたらのお陰でこの国の害悪が減っておる。
本当は今の時点で爵位を渡そうか悩んだが、まだ捕縛は途中であろう。
それ故、今回は金銭賞与の形を取らせてもらう。
一通り終わり次第纏めて爵位を与えるつもりだ。
多分来年のこの時期には二人とも新たに家を興すこととなろう。
そなたらの今後の忠節に期待する」
「はっ!」
「かしこまりました!」
……あぁ、お二人とも実家の姓なのか!
成程ね、ならお二人が男爵になれるように協力しましょうか。
まずは修道院関連かな?
「次にベルハルト・ノヴェール、そしてラーミル・ノヴェール」
「「はい」」
◇◇◇◇
……つまらない。
テュモラーの爺さんに提案されて父上に爵位変更の会議に参加してみた。
でも、正直何が楽しいのか分からない。
父上も母上も参加に反対してたけど……。
爺さんの提案「兄上もこの位の歳で参加してたよね」を言ったら黙っちゃった。
凄い言葉だよ、ホント。
とは言え、流石につまらないからって欠伸するわけにはいかないからなぁ。
「次にベルハルト・ノヴェール、そしてラーミル・ノヴェール」
「「はい」」
ん?
女の声?
あぁ、兄妹か?
少々年上だが結構アリか?
それにあの胸は……デカい!
「そなたたちは元貴族のアンドリエ家が乗っ取りを画策していたことを報告。
王都側の担当であったオルスの捕縛に協力し、一通り情報を提供。
スホルムの街まで同乗してもらい現地でも調査に協力。
ダイナ家のやらかしを発見する」
おぉ、凄いじゃないかこの家!
「加えて、その件の裁判で分かったことだが……。
文官側で仕事の分担を無視して回された大量の仕事を担当させたこと。
これは王宮側の問題ではあり改善しなくてはいけないことだ。
だが、先ほどの奪爵した人数から想像つくと思うが……。
そなたの代わりに仕事できる面々がほぼいない。
確か……課長単位で一課分は他の者に回せたと思ったが?」
「はい、ですが一課分では僅かでしかなく……」
……一課って、五人とか十人位で纏まってるよな?
それで僅かって……一人で何人分仕事してんのこの人!
「それは分かっておる。
その仕事を引き継げそうな者を少しでも増やそうとはしておる。
だが、それなりに待たせることになるのでな。
まずは金銭賞与の形でそなたの仕事っぷりに報いようと考えておる」
「……個人的にですが、『とある人物』を僕につけてもらうことできます?
再来年度からになるかと思いますが……」
なんだそりゃ?
言い回しは緩いが凄い視線で強請ってやがる。
なんだ? その人物は?
「気持ちは分かる。
だが、現状その『とある人物』は二人の侯爵。
そしてそなたを含め三名の担当者から熱望されておる。
それに加え他の所からも依頼をされておるのだ」
「……他の所、ですか?」
「どこが欲しているかここで言う気はないが、こちらも切望されているのじゃよ。
どうにか誰も悲しまない方法を検討しておるのだが……難しくてのぅ」
「最大最強の協力者が我が家にいる間にこちらに取り込みたかったんですがねぇ」
そう言って、チラッと女の方を見る。
ちょっとムッとしつつも顔を赤らめている。
……まさか、とある人物とはそこの女か?
もしくは女に関わる人物か?
「すまんがその希望はこの場では叶えられん。
とは言え、後日関係者で話し合いを持ちたいと考えている。
そなたも呼ぶ故、参加してほしい」
「かしこまりました。
最悪、関係者が少しずつでも『とある人物』の恩恵を得られれば……」
「その発言はもっともだ。
こちらとしてもそのつもりでいることは明言しておく。
まぁ、当人の意志はまだ確認取ってないのだがな」
どんだけ無茶苦茶な発言なんだよ……確認してから動けばいいじゃねえか。
とは言え、このつまらない会議にも参加する意味があった。
あの女、ラーミル・ノヴェールだったか?
俺、ディスファ・フォン・サイナスの婚約者にしてみるのも面白い。
まぁ、あの胸を弄り倒したいと言うだけなんだがな。
とは言え、それなりに年上だからこちらが声掛ければ簡単に靡くだろ。
どうせ国はジュニズム兄上が面倒見るんだろう?
なら、俺は臣籍降下でもして好みの女と暮らしたいもんだ。
◇◇◇◇
……人の人生を何勝手に決めようとしてんだよ大人共!
というか、僕に相談も無しに勝手に何ほざく!!
ベル兄様、ちょっと後でお仕置き決定!
ティアーニ先生に色々初めて奪われちゃいなさい!
というか、多分侯爵二人はアレだろ?
三人の担当者もいつもの三名だよな?
他の所ってどこだろ?
ありそうなのが王妃様?
流石に陛下直属とかは言わんだろうし。
それと、まさかの王太子殿下?
でもなぁ、フェーリオの側近として生きるって宣言してるからなぁ。
王家がお持ち帰りはしないだろ。
泣き叫ぶ両侯爵なんて見たくないだろうし。
となると……まさか騎士団?
いや、でも、戦闘要員ならマーニ兄が……まさか、副団長の補佐か?
実際パン爺さんと繋がりあるし……。
後なんだろ? 思いつかないや。
その後もラクナ殿やペスメー殿達。
僕と薬物対応やスホルム対応に参加した面々が呼ばれていった。
そろそろうちの家かな?
「ジーピン家前当主アダラー・ジーピン、妻キャル・ジーピン。
全国的誘拐犯の対応、違法薬物製造拠点の壊滅。
そして息子である現当主の結婚式での陛下の守りと暗殺者ギルドの壊滅。
これらに多大な協力をしてもらった。
誘拐犯と違法薬物の件は既に報酬を支払っている。
だが、結婚式での陛下の守りと暗殺者ギルドの壊滅はまだだったな。
金銭という形ではあるが、そなたらの貢献に報いれればと思う」
「恩賞ありがたく」
父上が代表して返答している。
まぁ、これで少しは実家の食事が豪華になるか?
……いや、そこまでは無いか。
「ジーピン家四男、アムル・ジーピン」
「は、はいっ!」
おや、アムルが先か。
面倒な僕は後回しにしたか?
……アムルも緊張してるだろうし、あまり脅かさないでくださいよ?
アムルも落ち着け?
というか、普通次僕じゃね?
「家族と一緒に全国的誘拐犯の対応、それと兄の結婚式で陛下の守り。
最後に暗殺者ギルドの壊滅。
その歳で多大な貢献、本来なら爵位で返すのが筋だが……。
この後のそなたの兄と同様に学園卒業時に改めて提示しよう。
今は王家がそなたの行動に感謝していることを覚えておいて欲しい」
「はいっ!」
あぁ、この汚れたクズ共が大半のこの場に響く清浄な返事。
これ、フィブリラ嬢に見せたらまた二人で固まるんだろうなぁ……。
「ジーピン家三男、ニフェール・ジーピン」
「はい」
わざわざアムルと順序を変えたのは、一番面倒だからだろう。
功績量多すぎとか言い出しそうだけど。
「そなたは当時の衛兵長であるエフォット・アンジーナの暴走。
これを頬に怪我までして制止。
その息子のレストが父エフォットから悪辣な手を用いて取り除くのを阻止」
やりましたねぇ。
自分の都合とは無関係に巻き込まれやすくなったのはアレがきっかけな気が。
「家族と一緒に全国的誘拐犯の対応」
女装の始まり、そしてアムルとフィブリラ嬢の馴れ初めですね。
「違法薬物製造拠点の壊滅において情報収集や作戦検討に暗殺者との対峙」
禿との繋がりがあれでできちゃったんですよねぇ。
まぁ、カリムたちとの出会いのきっかけと考えればまぁ、マシかな。
それと……カルディア。
あれくらいだからなあ、僕の友が死んだの。
「ここまでは前回秋頃に話をしたが、その後も……。
長兄アゼルの式の際に、事前に情報を発見。
教会の外で騎士の心を捨てた獣共を弟と一緒に潰した。
それと暗殺者ギルドの壊滅にも協力している」
あれはカリムたちと接点持てたのが全てだよなぁ……。
そしてカルとルーシーをゲットか。
禿は……まぁ、僕には女神様がいるからぁ♡。
愛の力で神風くらい吹かせてくれるのですよ♪。
「元貴族の乗っ取りの発見と調査、スホルム領での元貴族の制圧。
王都に戻るや否や発生していた暴動の鎮圧。
騎士団側に手を出し陛下からの指示を捻じ曲げたラング家の処分。
そしてこれら全ての犯罪者の行動を読み切り、被害を最小限に抑える策の提示。
そなたがいなければ現状の王都は無く、未だ復興道半ばであっただろう」
まぁ、僕たちがディーマス侯爵を制圧した。
その結果事態が動き過ぎたのもありますので、あまり胸張っては言えないかな。
とは言え、評価して頂けるのはありがたい。
「そして、先日処刑した違法薬物製造に関わった人物の特定。
ディーマス侯爵家の裏帳簿の発見。
……まだまだあるが、とりあえずここまでとしておこうか。
時間がいくらあっても足りんしな」
なぜかヒステリックな笑いの感情を向けられてるんだけど?
宰相、読み上げ疲れた?
まぁ、この後は修道院やら北部の対応とかに関わりそうだしね。
今年分はここで切るしかないか。
「さて、これだけの功績を上げている以上、普通であれば即叙爵となる。
だが、過去に息子の嫉妬によるアンジーナ家の暴走。
これにより顔に消せぬ傷を付けられた。
この嫉妬による傷害がまだ起こる可能性を考慮し、現時点で爵位は送らん。
学園卒業時点で男爵位を、そして今までの功績により以降毎年陞爵となる」
お ぉ っ !
まぁ、驚かれるのは仕方ないけど……熱い視線送るなよ、テュモラー侯爵。
ラーミルさんの愛情たっぷりの視線ならいくらでも浴びたいけどねぇ。
お前の視線って、殺意だよね?
そんなのいらん!
「なお、現時点でどこまで陞爵することになるか、それは分からん。
陛下もお悩みの様だ。
故に現状は済まんが弟アムルと共に王家が感謝している。
そのことを覚えておいて欲しい」
「はっ、卒業パーティでの叙爵を楽しみにしております」
できれば、金欲しいんだけどねぇ。
パン爺さん動かすのにそれなりに金掛かるんだけど?
でも、この場で言うのは流石に空気読めてなさすぎだよなぁ。
さっきストマがやらかしちゃったからねぇ。
同じ程度の頭しか持って無いなんて思われたくないしね。
【王家】
・ディスファ・フォン・サイナス:サイナス国第二王子。
来年度から学園入学予定
→ 洞不全症候群(sinus node dysfunction)から




