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◇◇◇◇


 あの処刑後、何も起こらずに本日は爵位の変更についての報告がなされる。

 そして、夜はパーティ。


 つまり、戦闘が確定している。


 うちの家族は戦闘準備の方は出来ているようだが……。



「アムル、緊張するのは分かるんだ。

 でも、あまり襟周辺を弄るな。

 よれよれになっちゃうぞ?」


「ん~、慣れないんですよねぇ……苦しくなっちゃって」


「気持ちは分かる、僕も昔はそうだった。

 とは言え、フィブリラ嬢の隣に首元よれよれの服着たアムルは並べられんぞ?

 あちらはちゃんと令嬢らしく着飾るだろう?

 ならお前も隣に並び立てるようにしておかないとな」


「は~い……」



 まぁ、気分的に首元が落ち着かないのは分かる。

 とは言え、そこ手を抜いたらフィブリラ嬢と比較されるんだよなぁ。

 そうなると、ただでさえ経験不足のアムルだ。

 あまりにも服の差が際立ってしまう。


 元の服で差が付き過ぎてるのに自発的によれよれにしたら笑われるのがオチだ。

 ちゃんと着させておかないとな。

 中身はいいんだから。



「ニフェールちゃん、本当にアムルちゃんの親の様よ?」


「それ、褒めてます?」


「楽しんではいるわね♪」



 カールラ姉様、楽しむ場面じゃないですよ!



「さて、とりあえず昼間は爵位関連の話だから大した話にはならないでしょう。

 で、その後パーティまで時間が少しあるはず。

 そこで関係者全員集まりましょう。

 父上、【嵐鏢】のあだ名を思い出してください。

 パーティの時はそちらの行動をお願いすることになります」


「わかった、パーティなら食事用ナイフやフォークとかあるだろ。

 必要になったらそいつらかき集めて投擲しておこう」



 これでどうにかなるかな?




 その後、ジャーヴィン侯爵と一緒に王宮に向かう。

 フェーリオ達は後でパーティだけ参加となる。


 王宮に到着すると、ちょうどラーミルさんが馬車から降りてきた。

 二人して照れつつ褒め合う。


 ……母上、微笑ましい視線勘弁して!

 恥ずかしすぎる!

 ついでにカールラ姉様、ヨダレ拭いて!



 そのまま合流して謁見の間に移動する。

 本来当主しか参加しないからジロジロ見られている。

 だが、こちらは来いと言われた側。

 見られても困る。


 周りを見渡すと……テュモラー侯爵もいるな。

 こちらをジロッと睨みつけて来る。

 まぁ、気にしないでおこう。


 指定された位置に移動すると、ベル兄様とマーニ兄が既にいた。

 合流して陛下たちが登場するのを待つ。



 あれ?

 王家の方が座る席、五つ用意されている?

 陛下、王妃様、王太子、王太子妃、あと一人……まさか第二王子?

 いや、でも、今日これから暗殺者が待ってるパーティがあるのに?

 ちょっと何考えてるの!



 そんなことを考えていると、陛下たち王家の方々が入ってくるので最敬礼。

 陛下、王妃様、王太子、王太子妃……やっぱり第二王子か。


 陛下の方を見ると、ちょうど視線が……。



(ちょっと待って陛下! 何で第二王子が?)

(すまん、こちらも想定外だ!)

(……後でちゃんと説明してくださいね?)

(分かっておる! あぁ、もう頭痛い……)



 いつもの無茶苦茶な情報量のアイコンタクトをしてみる。

 だが、陛下でも説明しきれないほどの状況らしい。

 ……まぁ、アイコンタクトでこれだけの情報が飛び交う時点でおかしいんだが。


 ……ふと、テュモラー侯爵の方を見ると、ちょうどこちらに視線を向けていた。

 そして――




 ニ ヤ ッ




 ――と、滅茶苦茶イヤラシイ笑顔を見せてきやがった。




 ほ ぅ ?




 そうか、お前が第二王子の耳元で囁いたのか。


 ったく、こちらの守りを減らすために王家の人物を追加させたってとこだな。

 多分、こっそり第二王子にこんな感じで言ったのだろう。



「来年度から学園入学ですなぁ。

 今回のパーティや爵位伝達にも参加されるのでしょう?

 王太子殿下も今の第二王子の御年位から参加されておりますし」



 そこで参加の権利があると気づいて駄々こねたとかか?


 ただ、それなら暗殺の話をして止めなきゃいけないんじゃないの?

 その位は王妃様辺りが気づくだろうに。

 当然止めるよな?


 ってことは、止められる余裕がない位ギリギリに割り込んだ?

 そんな嫌がらせとしか思えないようなタイミングで言い出した?


 どう考えても外からの入れ知恵だよなぁ……待てよ?

 まさか、王妃様が面白そうだから許可出したとか無いよな?

 自分の息子の命だぞ?

 僕じゃあるまいし、簡単に死ねる息子だぞ?


 チラッと王妃様を見ると、こちらに気づいたのか僅かに首を横に振る。

 その顔は珍しく疲労に満ちた表情だった。


 流石にその表情されて悪戯とかは言えんな。

 わざわざ演技して僕を騙してまで第二王子を危険に晒そうとはしないか。

 となると、テュモラー侯爵の嫌がらせか。


 ここで王家の血を壊滅させるには当然第二王子も参加させなければならない。

 そこで纏めて消すのが一番楽だろう。

 下手に生かしておいたら逃げられてしまう。

 そうなったらかなり面倒だ。


 頭をフル稼働させていると陛下の開会宣言の後、宰相が司会となって始まった。



 今回は陞爵は後にするようだ。

 まぁ、犯罪犯して処刑とか平民落ちや処罰された家が大量にあるからなぁ。

 嫌なことは先に済ませるって感じかな?



 セリン家から始まってアンジーナ家、エスト家、スティット家、ラング家。

 過去僕が関わって消えた家が羅列されていく。


 ……あれ?

 話を聞いていると元隊長や副隊長共の家は壊滅したようだな。

 となると、マイカ様のご実家は消えたってことか。


 それだけじゃなく、セレラル様達三名のご実家も?

 サバラ殿頑張ったんですね。

 これ、後日当人たちに連絡しといた方がいいかな?


 読み上げる側もお疲のようで、少々休憩を入れつつ一通り読み上げ切った。

 いや、ご苦労様です。



 その後、降爵する家を読み上げる。

 と言っても対象は二つ。

 ディーマス家とルキミア家。



「ストマ・ディーマスよ。

 ディーマス家は侯爵より男爵へ降爵させる。

 領地は現ディーマス領都とその周辺の村のみ。

 他は王家預かりとする」


「はっ」


「ルドルフ・ルキミアよ。

 ルキミア家は伯爵から男爵へ降爵させる。

 領地は現ルキミア領都とその周辺の村のみ。

 他は王家預かりとする」


「かしこまりました」



 そうそう、大人しく従っておきな?



「なお、そなたらは現在学園生であり、その状態で領主を行うことは難しい。

 それ故、卒業まで王城の方で文官を派遣しよう。

 卒業した時点でそなたらに返還し領主としての仕事をして欲しい」


「……はっ」



 おいおい、そこでそんな顔するなよ。



「なお、過去に似たようなことがあってな。

 学園生の時点で領主をしていた者が数名おる。

 その全員が領地をまともに見る余裕なく、同時に学園卒業も危うくなっていた。

 理由は単純、領主の仕事と学業の両立が途轍もなく難しい。

 それ故、一時的にこちらで管理することとした。

 文句はあるまいな?」


「はっ」



 流石に、そこで文句は言わんか。

 実際大忙しになるだろう。

 前領主のやらかし等が見つかることを考えると、手を引いといた方がいいぞ?



「ちなみに、王都の屋敷はそのままそなたらが使うとよい。

 また、一・二ヶ月に一度くらいだと思うが領の状況を纏めて報告させよう。

 卒業後領地に戻ってもどのような状況か分からぬでは話にならぬからな」




「……一つ、お願いしたきことがございます」




 は?

 ストマ、お前突然どうした?

 ルドルフ……その顔、もしかしてお前も知らないの?



「ふむ、申してみよ」


「一人、部下につけたい者がおります。

 その者を私に頂ければと」



 は? え? 誰の事?



「その者は誰だ?」


「ニフェール・ジーピン。

 今学園騎士科二年ですね」




 は ぁ ?


 何言い出してんだお前は!!




 僕のことを知る人たちは皆愕然としている。

 ちなみに僕もだ。


 あぁ、陛下からアイコンタクトが来ちゃった。



(ナニコレ?)

(僕も何のことやら)

(振っていい?)

(ですね、対応します)



「ニフェール・ジーピンよ、ストマ・ディーマスはこう申しておるが?」


「お断りします」



 突然何言い出すんだ、こいつは!



 そう考えていると、ストマが僕を熱心に口説き始めた。



「ニフェールよ、以前うちの前当主がやらかしているの教えてくれたな?

 その時に声かけたこと覚えているか?」


「あぁ、うちの兄の結婚式に暗殺者送り込んでること説明したな。

 そんなことする奴の家の部下になる気はない。

 そう言ったはずだが忘れたか?」


「覚えているぞ。

 だが、その前当主はお前の兄が処刑した。

 なら、俺とお前の間に隔意は無いはずだ」



 なに甘っちょろいこと言ってやがる?




「あの時はわざと言わなかったが、お前個人にも不信感はあるぞ?

 この頬の怪我、お前が原因じゃないかと疑っているんだが?」




「……何の話だ?」


「お前が今年の初夏あたりにレスト・アンジーナを煽ってなかったか?

 人を使う訓練なのかもしれんがな?」


「……あぁ、あいつか。

 確かに人を動かす訓練として使った記憶があるな。

 その後、学園からいなくなったのは知ってるが……」



 やっぱりかよ!



「先ほど処罰された家の中にアンジーナ家があったろ?

 あれ、レストが父親に侯爵子息の取り巻きに戻る為に泣きついたんだよ。

 僕を貶めれば戻れるはずだってね。

 その結果、取り調べ室に一昼夜、水も飯も無く閉じ込められてた。

 ついでに父親はイカレたのかナイフで脅す始末。

 次の日にジャーヴィン侯爵が助けてくれなければどうなっていたことやら……」


「その脅された結果が頬の傷か?」


「そうだ。

 運良く頬だけで済んだが、最悪顔全体を切り刻み始めたかもしれん。

 お前の訓練の結果がこれだと考えれば、部下になりたがると誰が思う?」


「……」



 何も言えないだろうよ。



「あ、ついでにもう一つ。

 お前は男爵になったんだよな?」


「あ、あぁ」




「男爵が男爵を雇うのか?」




「はぁ?」




 まぁ、その反応が普通だろうなぁ。



「僕は、ここ最近色々と仕事していてね。

 最低でも学園卒業時に男爵位を賜る予定。

 さて、男爵が男爵の部下として動くの?

 仕事上の上下ではないパターンで?」


「え、え……えぇ?」



 思考が追い付いてないか?



「僕は卒業後男爵としてジーピン家から別の家を興して自立する。

 それなのにお前の手下になる理由ってどこにあるの?」


「いや……その……」


「どうせ、僕が三男として家から出ないことを前提に言ってたんでしょ?

 僕は自力で家を興すから手下になる気はないよ?

 分かった?」


「あ、あぁ……」


「それと、ストマだけじゃなくルドルフもだけどさ。

 年明けからの学園生活、気を付けた方がいいよ?」


「……何故だ?」



 あれ、分からない?



「頬の傷って嫉妬によるものなんだよね。

 僕がジャーヴィン侯爵子息の側近になったことによるもの。

 で、君たちはもっと大きな嫉妬を受けるんじゃない?

 男爵子息じゃなくて、男爵になったんでしょ?」


「……クラスメートが嫉妬から俺たちを狙うってか?」


「まぁ、顔傷つける程度ならまだいい方じゃね?

 命を奪いに来ることも想定した方がいいと思うよ?」


「マジかよ……」



 まぁ、性的に襲い掛かってくるのは少ないとは……あれ、どうだろ?

 騎士科の変態共とか?

 ……まぁ、気にするな?



「当然、淑女科の女性たちにも気を付けないと。

 君たちに抱かれたとか言えば?

 もしくは薬飲ませて眠らせておいて君たちが起きる頃に涙ながらに訴えたら?

『この方が暴走して私を無理矢理抱こうと……』なんて言われたら?

 侯爵という権力でどうにかできなくなったんだからね?

 姑息な手口で貴族夫人の立ち位置を狙う輩もいるんだよ?」


「……勘弁してくれ」


「それを僕に言ってどうするの?」



 その位自分でどうにかしろよ。



「まぁ、とりあえず僕はお前の部下になる気は一切ない。

 つーか、爵位確保できてることは教えなかったけどさ……」



 少し間をおいて、この言葉をぶつける。



「なんでリトライ可能と思った?

 仮に本気で僕を雇いたくても……この場で言うか?

 一年に一度の爵位伝達の日に?

 一通り終わった後に個別に話せばいい話だろうに」


「あ……」



 馬鹿たれが!

 少し考えて発言しろよ……。



 陛下に視線を送ると頷き話を進めてくれる。



「ストマ・ディーマスよ。

 ニフェールについては学園卒業後に爵位を渡す予定だ。

 頬の傷のきっかけである学園生の嫉妬からの暴走。

 これから身を守るために卒業まで待っているだけだ。

 故に、そなたの望みは聞けん」


「……かしこまりました。

 先の願いは撤回いたします」



 ほっ……変なところで面倒な話になっちまったな。

 さて、次は陞爵の話だったか?


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― 新着の感想 ―
こいつらに卒業前から爵位と領地渡して良いなら主人公もさっさと叙爵&毎年昇爵させてやれば良いのでは?
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