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さて、兄弟の処分も終わったし、次はディーマス家関連。
次は積極的に姉様に参加してもらった方が良さそうな気がする。
あちらは愚かではあるが政治の世界で生き延びてきていることを考えると……。
アゼル兄では少々厳しいか?
「次はディーマス元侯爵とその仲間たち。
ジーピン夫妻よ、続けて頼む」
「「かしこまりました」」
アゼル兄とカールラ姉様が応え、騎士たちが……あぁ、ごめんなぁ?
愚かなオッサン共が大人しくしているはずないもんなぁ。
少し見ただけで分かる。
騎士辞めて殺す側に回りたいって顔に書いてあるし。
あれ、どこの部隊だ?
「オラッ!
グダグダ言わずに歩けっ!」
「騎士如きに指示される謂われはない!
貴様如きが偉そうな口を挿むな!!」
あぁ、この声アパームのあんちゃんだ。
何と言うか……ご愁傷さまです。
というか、この貴族共本気で自分が処刑されると思ってないのか?
まだ先の兄弟の方が理解できてたぞ?
ちなみにコロクタは……あれ? 大人しいな?
怯えているという訳でもない?
何でそんなに落ち着いてるんだ?
悩んでいる合間にも貴族派貴族共は集められ、全員が揃った。
揃ったのだが……やっぱり分からん。
なんでコロクタはあんなに落ち着いてるんだ?
諦め? いや、違いそうな気がする。
何かこの状況をひっくり返す手口があるのか?
そんなことを考えていると、カールラ姉様が最初にコロクタに問いかけた。
「コロクタ・ディーマス。
あなたはなぜ私たちの結婚式を邪魔しようとしたの?」
「はっ!
貴様らが邪魔だったから消す!
何もおかしなこと無いだろ!」
「それに陛下が巻き込まれるのは問題無かったの?」
「はっ!
巻き込まれるのが悪い!
こちらの都合に合わせればいいものを勝手に動き回るからそうなるんだ!」
はぁ?
何言ってるのかよくわからないんだけど?
たかが侯爵如きが陛下の行動を妨げられる?
それどころか、なぜ陛下が侯爵如きに行動の確認をせねばならない?
なんかディーマス家は本当に愚か者、いや、我の強い者しかいないんだな。
「その結果、今回の様に捕まり家宅捜索されてるわね?
そして今までの犯罪の情報も根こそぎ確保されたわ。
どう考えてもあなたの行動が原因でしょ?
ディーマス家没落の根源となってるわよね?
その程度の事、なぜ思いつかなかったの?」
「ふん!
先代陛下の頃はこれでうまくいけていた!
今の陛下が無駄に監視をし過ぎなだけでな!
それも王妃、貴様が動かねば……」
ん?
なんで王妃様?
もしかして、今までの犯罪見つかったのって王妃様の判断って思ってる?
いや、陛下よりかはやらかしそうだけどさ。
でも、違うよ?
そんなことを思っていると、王妃様からも指摘が入った。
「コロクタ・ディーマスよ。
何を勘違いしておるか知らんが……。
ここ最近お主の犯した犯罪を見つけたのは吾では無い。
そこにいるニフェールだ」
「嘘だっ!
そいつはうちの息子と同じくらいの歳だろう?!
学園生如きが儂らの策を見切ることなぞ出来ん!!」
「いや、かなりあっさり見切ってたぞ?
というか、今年の夏辺りからの一連の王都の問題。
違法薬物とかだな。
それらはニフェールのお陰で片付いている」
王妃様のお言葉を聞き、化け物を見るような目で僕を見るコロクタ。
そんな怖がらなくてもいいのに。
あなたの命を奪うのは僕じゃなくてアゼル兄だよ?
「いくら何でもそれは無かろう?
確か別の件で騎士科所属と聞いたぞ?
そんな奴がどうやって気づくと言うのだ?!
騎士科なぞ、頭使うことができない者の集まりでは無いか!!」
まぁ、その通りですね。
クラスメイト見ているとそうとしか思えませんし。
「……ニフェールは騎士科でありながら学園の全部の科の試験を受けている。
そして他の科でも上位の成績を残している。
故に、貴様にも分かるように言えば……そうだな。
騎士首席者が文官科上位者となっていると言えば伝わるか?
そして、それくらいの実力があればお主のやらかしを見つけることなぞ容易い」
いや、結構苦労してるんですよ?
言うのは簡単でしょうけど、こちらの苦労はご理解いただきたいですね。
あ、ナット、落ち着け?
「何勝手なこと言ってんのアノ人!
アタシたちの苦労を簡単に言わないでよ!」って言ってるの聞こえてるぞ?
王妃様の表情が少々ヒクついてるから、あれは多分聞こえてるな。
よっぽど王妃様とナットは性格合わないんだろうな。
過去泣かせてるし……。
「お、おい!
そこのニフェールとやら!
貴様は王妃の言う通りなのか?」
「騎士首席者はその通りですね。
文官科も……この前の試験で九位だったから上位者と言ってもいいですよね?
ならまぁ、王妃様の言うことは合ってるんじゃないんですかね」
なぜか少し遠くから「アイツ、俺たちより成績いいのかよ……」とか聞こえる。
多分あれ、ストマとルドルフだな?
そりゃそれくらいやらないと三科試験やってる意味無いじゃん。
「そういう訳で、あなたが色々やらかしていた件は僕の方で見つけました。
まぁ結構運が良かった部分もありますけどね。
で、真実を知ったからと言ってなにか変わるのですか?
兄弟そろってうちの兄に処刑されるだけでしょうに」
「う、五月蠅い五月蠅い五月蠅い!!
貴様らがいくら騒ごうがあいつ等が……」
あいつら?
誰だよそれ?
「あいつ等って誰の事です?
まぁ誰であっても状況は変わらないと思いますが」
「……ふ、ふふ……」
……え、何? キモイ……。
「はぁっはっはっ!
儂の手元には暗殺者ギルドと強盗ギルドがいる!
アイツらが動けば王都なぞ……一夜で灰燼と化すであろう!!」
「はぁ……」
えっと、何その寝言?
だって、暗殺者は僕が引き取ったし、強盗は二度ほど潰したし。
チラッとカル達がいる方を見ると、あいつら一斉に首横に振っている。
いや、そこまでビビらんでいいからね?
とは言え、何でそんな考えにたどり着い……あぁ!!
こいつ、まともに情報得てないからか!
捕縛されてからの王都事情を知らないんだ!
だからアゼル兄の結婚式前後までの情報で判断している?
「とりあえず大きな誤解とここ最近の情報をお持ちでないようですね。
あなたが捕縛されたのはうちの兄の結婚式の後すぐだと思いましたが……。
違いましたっけ?」
「……そうだ」
「ではまず、あの日に暗殺者ギルドとあなたの子飼いの騎士が襲撃してきました。
それを壊滅させ、逃走した襲撃者を追跡。
逃げた先は暗殺者ギルドだったようです。
そのままそこを襲撃し、禿と呼ばれる暗殺者を捕縛してます。
……そこに寝転がっている両手首両足首の無い奴の事ですよ」
チラッと見ると、禿が暴れ出したが誰も気にしてもらえてない。
まぁ、皆さん自分の命が大事だからねぇ。
お前のことなぞ気にしてられないのだろうさ。
「その後、王都で強盗ギルドによる暴動が起こっております。
発生原因は今まで金をバラまいていたあなたの捕縛。
その為仕事が無くなった。
それを解決するために金ありそうな商会を襲ったのだと推測されます」
「ちょッと待て!
強盗共が商会を襲撃?
ありえん!
そんなことしても蛸が自分の脚を喰うようなものでは無いか!」
ほぅ、そこは理解できてるんだ。
「そう言われましてもねぇ。
金が無くなったらまともな考えが出来るとは思えませんね。
金無くてギルドを維持できるとは思えませんし?
あぁ、その暴動ですけど、鎮圧したのは次兄と僕がメインです」
「……えっ?」
「あそこに居る次兄と僕で暴動鎮圧しました。
結果、あなたがいくら望もうとも暗殺者と強盗はあなたと協力できません。
なんせ、どちらも壊滅させましたから」
……こういう顔が絶望を知った顔って奴なのかな?
なんか、目が死んでる気がするけど。
カル、「えげつねぇ……」なんて言うな!
聞こえてるんだぞ?!
さて、これでコロクタの自信も砕けたことだろうし、後は……。
「そちらの弟さん?
あなたもコロクタと同様に処刑されますが、現状理解されてます?」
「なぜ、なぜ我が家が処刑されなくてはならんのだ!
国如きが我らの家に文句言える権利があると思っておるのか?!」
はぁ……。
この状況でそれ言えるのが恐ろしいよ。
ディーマスの愚かさを突き詰めるとこうなるのか?
どうやって心をへし折ろうかと悩んでいると、カールラ姉様が動き始めた。
「全く、よくもまぁ侯爵家の者がそんな恥さらしな発言を出来るわね」
「……ジャーヴィンの娘か。
貴様こそなぜ国に阿る?
国なぞ我ら貴族が手を貸さなければ成立せんだろうに!」
「むしろ、貴方はどうして貴族でいられるのかしら?
陛下が認めなければあなたは只の平民になるのに」
ですよねぇ。
僕らが貴族だと言い張れる前提条件が「国に貴族と認められること」。
これ無ければ誰も貴族なんて言えない。
そこんとこ理解できないんだろうなぁ……。
ちなみにコロクタは……まだ立ち直れてないようだ。
まぁ、静かだしいいか。
「はっ!
なら平民にしてみるがいい!」
「あい分かった、そなたはディーマス侯爵家ではなく平民として扱おう。
どうせ死ぬのなら立場なぞどうでもよいしな」
……えっ?
もしかして陛下?
「なっ! なぜ貴様が!」
「王が認めてやると言っておるのだ。
何故も何も無かろう?
貴様の望み通り平民としてやったのだ、喜ぶがよい」
確かに、陛下なら望みを叶えることができる。
でも、当人からしたら「そうじゃねえ!」とか言い出しそうだ。
あれ、平民になったからって別に処刑方法は変わらないよな?
「そ、そんなこと認めん!」
「そなたが認めるかどうかなぞ関係ない。
王の名において、そなたは平民となる」
大騒ぎしているようだが、もう誰も話を聞いていない。
ストマが頭を抱えているようだが……まぁ、諦めてくれ。
「あ~、他の者たちよ。
先の輩と同様に平民として死にたいか?
なら騒いで構わんぞ?
陛下が積極的に奪爵してくれるだろう」
全員黙ってしまった。
まぁ、これ以上騒いだらどうなるか想像つくだろう。
もし残される妻や子にまで及び、家ごと処刑となったら……。
絶対自分を許せないだろう。
「さて、処刑の続きといこうか。
とは言え、正直一人ずつは面倒だな……」
アゼル兄がそんなこと言い出すが、それは流石にダメじゃね?
「だめだよ、アゼル兄。
担当分はちゃんとお願いね?」
「分かってるんだが、一人ずつ切っていくのがなぁ……」
「五人程度なら並べて一振りで終わらない?
コロクタ以外はその程度でいいでしょ?」
「……その手で行くか。
時間かかり過ぎてこちらとして面倒だ。
アパーム、済まんがこいつら五人ずつ並べるようにしてくれないか?」
「……さっさと終わらせろよ?」
「当然だ。
少々ニフェールを待たせすぎていると反省しているんでね」
僕を理由にしなくても……。
まぁ、いっか。
アパーム殿が部下たちを使いどんどんと並び変えていく。
二・三列できたところでさっさとアゼル兄の方で纏めて処刑。
死体は別の部下の方たちが片付けていく。
めっちゃ流れ作業になってるな。
なんか、陛下まで唖然としてるけど……ま、いっか。
あ、テュモラー侯爵もヒいてた。
ちゃんと見とけよ~?
お前らが襲撃失敗した場合の未来はこうなるからな?
そんなことを繰り返し、残るはコロクタ・ディーマスただ一人。
「さぁ、コロクタ殿、待たせたな?
俺たちの結婚式を邪魔した件、ここで恨みを晴らせてもら……あれ?」
……あれ?
返答無いけどどうしたの?
「……すまん、ニフェール。
ちょっと来てくれ。
もしかしてこれ、気絶して無いか?」
「どれどれ……確かに気絶してるね。
起こすから、ちょっと待ってて」
そう言って、コロクタの背中側に回り、縛られた手の一部を押してみる。
まず一つ目は……ここかな。
親指と人差し指の骨が合わさる付け根あたり。
「 ギ ャ ッ ! 」
絶叫と共にビクンと動き出したコロクタ。
そこまで痛がるって……。
「な、何だ今のは!」
「どうも気絶されていたようなので、少々痛みを感じる場所を押しました。
ちなみに、肩こりとか目の疲れとかあると激痛が走ります。
肩こるほど仕事してるとは思えないんですけどね」
一部貴族がクスクス笑ってるし。
そこの両侯爵、アンタらの事だからな?
「取り合えず意識を取り戻したみたいだし、後はアゼル兄お願い。
あ、そう言えば、コロクタ殿。
ご友人や弟さんは皆処刑終わったから。
後はあなたと禿だけ。
残り二人、じっくり楽しんて下さいね?」
「……え?」
キョロキョロと周囲を見回し、僕の言葉が嘘でないことを知るとまた絶叫する。
騒いでも状況は変わらないんだけどなぁ。
まぁ、僕は下がってアゼル兄にお任せするだけ。
チラッと見ると、頷いてくれたから後は見物といきましょうか。
「さて、コロクタ殿。
改めて、俺たちの結婚式を邪魔した件、ここで恨みを晴らさせてもらう」
「そうね、結婚式に死体の参列なんて望んで無かったわ。
何考えてあんなもの送りつけて来たのか分からなかったけどね。
まぁ、あなたがここで処刑されたら少しは愚か者が減るでしょう。
……まぁ、全員消せるわけでは無いけどね」
そう言ってカールラ姉様の視線は一点に向かう。
やっぱりテュモラー侯爵か。
そりゃそうだよな。
向こうも苦笑しながらカールラ姉様を見ている。
そこは人生の経験値の差かな?
まだまだ余裕のようだ。
まぁ、その余裕を潰せるのが楽しみで仕方ないよ。
「さ、アゼル。
ニフェールちゃんが禿を殺したくて待ってるわよ?
さっさと片付けちゃいましょ?
ちなみに最初のを越える位のイベントを期待するわ♡」
「あまり期待されてもなぁ。
まぁ、それなりにやってみるよ。
ニフェールの所に行っててくれ、血しぶきかかりたくは無いだろ?」
「はい♡」
アゼル兄を置いてこちらにくるカールラ姉様。
なんかルンルンなんですけど……。
アゼル兄は少し考えて大剣を大上段に構える。
……まさか?
「カールラ姉様、結構エグいことになるから覚悟はしておいてね」
「……何とか頑張るわ」
そんなことを話しているとアゼル兄が技を繰り出す。
と言ってもそんな大した技じゃない。
大上段から切り降ろし、また大上段に構える。
これの繰り返し。
でも、それを狂ったような速度で繰り返す。
微妙に斬り降ろす位置を変えながら、それはまるで滝から落ちる水の様に。
本来一本の細い線として見える剣筋。
これがぶっとい線になってコロクタを押しつぶす!
ぐちゃちゃちゃちゃちゃっ……。
見物していた貴族共の大半が視線を逸らした。
むしろ、かなりの面々が嘔吐していた。
一部は気絶しているのもいる様だ。
テュモラー侯爵も顔青くして視線を背け続ける。
一応陛下弑すつもりでいるんだろ?
この位のグロさで何ヘタれてるんだよ。
誰だ、チタタプって言った奴!
その単語はこの世界では存在しないぞ!




