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あ、ちなみに昨日の件は詫びハグと詫びキスでお許しいただきました。
そして次の日。
処刑のお時間です。
いやぁ、晴れた空にそよぐ風、クッソ寒いけど天気だけはいいですね♪。
お前らが死ぬのを天も祝福してくれてるよ?
喜べよ、クズ共!
「ニフェール、声に出てないが滅茶苦茶罵ってるだろ?」
「そりゃあねぇ、こんな寒い日にわざわざ外で仕事しないといけないんだもの。
愚痴りたくもなるよ。
まぁ、見物客もさっさと始めろとか思ってんじゃない?」
「だろうなぁ……」
アゼル兄も思うでしょ?
前回はまだ秋だったけど今回は年末だもの。
寒くて仕方ないよ。
「ちなみにネタ合わせはちゃんとやった?」
「……あれをネタ合わせを言っていいのだろうか?
俺には只の夜の営みにしか思えんのだが……。
まともな会話になったのは『私の言葉にハイかイエスで答えて』だけだったし」
……諦めて。
喋る方に関してはカールラ姉様がやりたいようにやる予定なんだから。
その報酬として抱きまくるつもりだったんでしょ?
「まぁ、前回ネタ合わせが無意味になったからねぇ、誰かさんのせいで。
そりゃあグダグダ言わせずに黙って従えとも言いたくなるよ」
「……これ、一生言われそうだな」
「当然でしょ?
尻に敷かれたくてやったんだと思ってたんだけど?」
「いや、そんなつもりは……」
言い訳は無駄だってのに。
「カールラ姉様、喋る方行けそう?」
「大丈夫よ、ちゃんとやっとくわ。
それよりニフェールちゃん、今日はクロスボウなの?」
「一応念の為双剣も装備しているけどね。
今日はこいつで心臓近くの血管を傷つける予定」
カルディアがされたことと同じことをしてやろうと思ってね。
まぁ、その場面見たのは僕だけなんだけど。
「……まぁ、キッチリケリをつけておきなさい。
どうせラーミルもどこかで待ってるんでしょ?
終わらせたらあの娘の胸で泣くのもアリだと思うけど?」
「既に予定は入っておりますよ?」
「流石ね!」
ここで流石と言われていいのか?
……まぁ、良しとしときましょうか。
そこ、アゼル兄、呆れない!
そんな心温まる会話をしていると、本日処刑される面々が入ってきた。
処刑順なのかな?
戦闘はあの兄弟、その後に貴族派の面々がぞろぞろ。
そして最後が禿、と言っても歩けないから樽のように運ばれている。
確か以前ラーミルさんにやってみたけど不評だった記憶が……。
そんなことを考えていると、陛下たちが処刑場にやってきた。
全員最敬礼し、席に着かれるのを待つ。
その後、陛下より処刑の宣言を受ける。
「皆集まっているようだな。
では処刑を開始する。
まずはコトロフ兄弟をこれへ。
ジーピン子爵夫妻よ、後は頼む」
「「かしこまりました」」
アゼル兄とカールラ姉様が応え、騎士たちが兄弟を連れて来る。
二人ともまだ反抗する気マンマンだなぁ……。
むしろ、どうやって抗うつもりなんだろ?
「さて、二人とも覚悟はいいか?」
「いいわけねえだろ!
何で俺たちが殺されなきゃいけねえんだよ!」
「先日説明されたろ?
あれで理解できないのなら学園卒業できてないと判断せざるを得ないが?」
あ~、確かにねぇ。
他の貴族の方々も同じような反応されてるし。
そりゃそうだよなぁ。
二人も周囲の反応を見て、不味いと思ったのか方針変換するようだ。
「な、なぁ、ニフェール!
お前も言ってやれ!
学園教師として俺は必要だろ?」
は ぁ ?
いや、ニコライ元先生。
その発言はいくら何でもないでしょ?
「あなたのどこに必要性が?
まともに教えることもできない教師って給料泥棒でしかないでしょ?
なんで騎士科の学園生から助命嘆願が出てないのか想像できないの?」
「……え?」
「最低でも騎士科二年からはあなたは不要と判断したんじゃないんです?
というか、必要だとなぜ思ったのです?
あれだけ実力無い事を学園中に晒しておいて?」
……顔真っ赤にしてプルプル震えている。
とは言え、この事態を選んだのはそっちだからね?
「ちなみに、もうカーフ殿の方は言いたいこと無いんです?
人生最期の機会ですよ?
例えば学園教師の頃にアゼル兄にボコられたんでしょ?
そのことについて何も言わないんです?」
煽ると、こめかみに血管浮き出しつつぶちまけ始めた。
……カールラ姉様、その反応何?
親指上げて……あぁ、GJってこと?
「あ? あのうちの学生たちをボコボコにした件か!
ありゃ何考えてんだ!
学園生同士の喧嘩なんざ教師が口出すつもりは無かったがな。
だが、生徒を脅すとはどういう料簡だ!」
ハァ?
ナニイッチャッテンノ?
カールラ姉様も「無いだろこれ」と言わんばかりの表情をしている。
さ、姉様。
無双のお時間ですよ?
……そう思ってた頃もありました。
アゼル兄はカールラ姉様を手で制して一人で対応し始めた。
姉様は目が飛び出そうな位に驚いている。
いや、僕も驚いているんですけどね。
「あなたは当時の状況を全く理解していないようだな。
事実を知っているのなら恥じるはずなのに、反省もせず虚偽の発言を繰り返す。
まともな教師であったと言い張りたいのなら、戯言を並べるのは止めなさい」
「はっ! 何が戯言だ!
貴様は騎士科の学生を脅し、暴力を持って制圧した!」
「……騎士科というのは領主科生徒一名に制圧されるのか?」
ブ フ ォ ッ !
まぁ、そういう反応になるよね?
どう考えてもおかしいし。
貴族の皆様も我慢しているようだけど、かなり噴き出している方が多かった。
「あの時、騎士科に愚か者が一名いてな。
淑女科の生徒に暴言を吐いた。
それは貴様の中では許される行動か?
騎士とは国を、民を守る者。
貴族であれ淑女であれ民だぞ?
民に暴言吐くのは騎士の誉なのか?」
「い、いや、それは流石に……」
……アゼル兄、ちゃんと言えるようになったね?
ちょっと涙出てきそうだよ……。
というか、カールラ姉様?
もしかして「アゼルは私が育てた!」とか考えてない?
後方彼氏面って言葉があるけど……後方奥様面?
「加えて、あなたは俺が脅かしたと思っているようだが、大間違いだぞ?
あの時、侮蔑的な発言をした騎士を叱ったまでだ。
まぁ、少々殺気が漏れ出してしまったようだがね」
嘘だっ!
【魔王】覚醒とか言われる位にブチギレていた癖に!
「だが、その後に愚か者は騎士科の者達に助けを求めた。
どういう風に説明したのかまでは知らんがね。
その結果、騎士科側から果たし状を受け取ったよ。
ウザったいんでな、二度と面倒事に巻き込まれたくないから手荒に対応した。
とは言え、騎士科のほぼ全員で攻撃してくるとはなぁ。
まぁ、鎧袖一触だったが」
周囲の貴族からはクスクスと笑い声が聞こえる。
まぁ、そりゃそうだな。
かなりのロクデナシしかいなかったって言われてるも同然だし。
「ついでにこのきっかけとなった愚か者だがな。
夏あたりに国内の複数の土地で誘拐を行っていたな」
「なっ!
う、嘘だ! そんなことある訳がない!」
「事実だよ、そしてアイツが最後に誘拐を行おうとしたのが我が領地。
家族総出で叩きのめしたが、まだ貴族だったようでな。
わざわざ王都まできて裁判を行って罪を暴いた。
当然、陛下もこのことはご存じだ」
カーフ殿、顔が馬鹿面してるぞ?
何も知らない貴族共の心象を良くしようと思ったのかもしれない。
だが、一切意味が無かったな。
「ついでにその愚か者……プロス・スティットは実家ごと潰されたよ。
調査しに行ったら、領主自身が誘拐組織に関わっていたことが判明してな。
奪爵されている。
ちなみに、既に死んでいるぞ。
暗殺者に毒を飲まされてな。
ついでに言うと、その時の暗殺者はそこにいる芋虫だ」
芋虫って……いちおうまだ腕も脚もありますよ?
末端部分だけ切り捨てただけなのに……。
ちなみに、兄弟そろって声も出てこないようだ。
多分最大の言い訳、自分たちが正しいように言い張る手口が崩れた。
その結果、未来が閉ざされたことが分かってしまったのだろう。
「……アゼル兄。
心がへし折れたようだし、そろそろ処刑したら?
次の元貴族共が結構いるし」
「そうだな。
カールラ、下がっていてくれ。
ニフェールの辺りまで下がれば十分だろう」
「はい♡」
あらあら、目が口ほどにものを言ってますね。
多分「抱いて!」とか「愛してるわ♡」とかそんな感じなんだろう。
翻訳できてるか自信はないが、そう外れてないんじゃないかな?
少々雲の上を歩いているような雰囲気で僕の方までくるカールラ姉様。
「……大丈夫?
正気でいられる?」
「……今なら二十四時間戦えそうよ」
「ベッドの上の戦闘は聞いてませんよ?
ただでさえこっちはあと一年以上耐えなきゃいけないのに」
来年度の卒業式まではちゃんと我慢しないといけないんですから。
「……何とか落ち着けると思うわ。
とは言え、アゼルも頑張ったわね……」
「ここまでの話は姉様教えたわけじゃないの?」
「何も。
前回の様に暴走するかと思って少しヒヤヒヤしたけどね。
ちゃんとこちら優位の状態で処刑まで進めたからホッとしているわ」
全く……傍から見ているこちらは滅茶苦茶不安だったんだけどなぁ。
ま、二人が納得しているならいいか。
そんなこと話していると、アゼル兄が殺気を撒き散らし始めた。
とは言えそこまで濃厚な殺気では無い。
全周囲ではあるが、むしろ気絶させないように調整された感じだった。
……マーニ兄もこの位の調整できればいいんだけどねぇ。
チラッと陛下の傍にいるマーニ兄を見ると……何視線逸らしてんだよ!
自覚してるのならちゃんとコントロールを覚えろや!
「さぁ、もう言うことは無いな?
ではまず弟の方からにしようか」
「い、いや、待て! 待ってくれ!」
「待たん。時間の無駄だ」
ザ ク ッ !
あっさり左肩から右腰に掛けて一撃で切り捨てる。
……一番アゼル兄に無関係な相手だからあっさりにしたのかな?
となると次の兄貴の方は……結構切り刻みそう。
「さて、次は兄の方だな。
お前には少々恨みがある」
「な、なんだ?」
「学園での生活を平穏なものにしたかったのに邪魔しやがって……。
俺だって普通に学び、普通に友を作り、普通に学園生活を楽しみたかった!」
……やべぇ、すげぇ分かる!
チラッとマーニ兄の方を見ると、ウンウンと頷いていた。
だよね、本来普通に生きてればできたはずの未来をこいつら潰したんだもの。
誰かに文句言えるわけじゃ無し。
面倒事潰したいけど教師まで関わってるし。
そりゃ泣き言だって言いたくなるよ。
今の僕もそうだしね。
……ついでにチラッと陛下たちの方を見ると、一斉に視線を逸らしやがった!
お前等、ジーピン家が毎度苦労してるのこういうことだからな?!
爵位だのなんだの権力あるんだろ?
学園生に強請る暇あるなら手前等でどうにかしろよ!
「お前等のふざけた行動の結果、どれだけ俺が被害を被っているか分かるか?
存在するだけで怯えられ、【魔王】というくだらないあだ名の為に逃げられる。
ほぼ毎日クラス内で会話は無く、教師も俺を可能な限りいない者として扱う。
これら全て貴様らの愚かしい行動の結果、俺が迷惑かけられた内容だ!!」
あだ名はそうだろうね。
クラス内の会話もあだ名由来かも知れない。
教師も似たようなものだ。
でも、存在だけで怯えるって……顔の可能性は?
うちで一番繊細な心を持っているけど、一番怖がられる顔してること忘れてる?
何となく、こいつらがちょっかい出す前から怯えの表情はあったりしない?
「……ニフェールちゃん。
思っても言わないと言う優しさってあるわよね?」
「……カールラ姉様。
僕何か言いましたっけ?」
はいはい、分かってますよ。
僕の考えがバレバレで、かつ正解だってのは。
当然アゼル兄には言いませんって。
そんな義姉とのやり取りの間にアゼル兄はヒートアップしていた。
「これだけ人様に迷惑かけといて何も悪いことしてない?
ふざけるな!! 死んで詫びろ!!!」
そう言ってすぐに……おぅ、そういう斬り方するんだ。
兄の身体は四分割にされ、突きにより前方に吹っ飛ばされた。
一応僕は見えたけど、見物客のほとんど見えてないんじゃない?
最後の突きだけ見てる気がする。
「ね、ねぇ、ニフェールちゃん?
アゼルって何したの?
何でバラバラになってるの?
突いただけでしょ?」
「姉様、突きは最後の攻撃ってだけでその前に他のことしてるんだよ。
相手から見て左肩から右の脇腹に斬られる。
次に右肩から左の脇腹に斬られる。
最後に突き。
これを一呼吸で行った結果がアレってだけ」
「……早すぎて見えなかったわ」
「だろうね。
ここにいるほぼ全員見えてないと思うよ。
マーニ兄と僕と……後誰かいるかな?
騎士だと団長やラクナ殿レベル、後はティッキィ位かなぁ……。
もしかするとカリムとナットが気づいたかもしれない位?」
「……それって国でトップクラスってこと?」
「まぁ、アゼル兄自身は剣術なら国一番だと思うよ?
家族でも剣では誰も勝てないしね。
双剣同士ならともかく剣一本での戦いなら僕も勝てない」
なんか唖然としてるけど、もしかしてそのあたり聞いてない?
「……お義母様も勝てないの?」
「純粋に剣技だけなら勝てないよ?
母上は基本素手戦闘だから元々剣技はあまり得意じゃないし。
多分基本的な動きとかまでしか把握してないんじゃないかな?
とは言え、殺し合いというか何でもありの戦闘なら母上には誰も勝てないよ。
あの強さは僕も理解できてないけどね……」
「ニフェールちゃんが分からないって……」
いや、全てを知ってるわけじゃないからね?
特に母上の強さの秘密なんて全く分からないよ。
突然変異とか世界のバグとか改造人間だとか言われても納得しちゃいそうだし。




