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その後、先の兄弟と禿も呼び陛下から判決を言い渡される。
「カーフ・コトロフとニコライ・コトロフ。
そなたらは王都に違法薬物をバラまき、貴族子弟の心と身体を壊す。
その行為、許せるものではない。
二人とも死刑とする。
処刑担当者はアゼル・ジーピン、よろしく頼む」
「かしこまりました」
アゼル兄は礼儀正しく陛下にお辞儀する。
コトロフ兄弟は大騒ぎするが……誰も止めないの?
……陛下に宰相様に両侯爵。
なぜ一斉に僕を見るの?
大きく溜息を吐き、挙手して発言許可を求める。
宰相、嬉しそうに許可出すんじゃない!
「カーフ殿にニコライ殿。
先ほど言った、誰の後ろ盾で学園教師になったか。
話す気になった?」
「言わねぇって言ったろが!」
「いいの?
二人とも処刑されるよね?
けど、依頼主はお前らのこと忘れてのうのうと生きていくよ?
悔しく無いの?
正直に依頼主の事喋って、そいつに罪を着せたくない?」
「……」
「正直言うと、僕としてはお二人がどんな死に方しようと興味ない。
どうせ、アゼル兄が処刑担当だし逃げられやしないんだから。
でも、自分たちだけ死んで依頼主生きてるのって悔しくない?
はっきり言ったら?
『俺たちだけじゃなく依頼主も地獄に堕ちればいい!』ってね」
……あれ?
何故皆さん静まり返ってるの?
ちょっと困惑していると、アゼル兄が一言。
「ニフェール、お前の発言は少々他の方々には恐ろしく感じるようだ。
見てみろ」
そう言って、ストマとルドルフを指し示すと……顔色真っ青だった。
ディーマス侯爵も歯をガチガチ鳴らしているし。
気にして無いのは……禿くらい?
後はジーピン家関係者位かな?
「いやいや、この位でそんなビビってどうすんの?」
「まぁ、俺もお前の意見に近いのは事実だ。
だが、慣れてない方々はどうしても受け入れられないのだろうよ」
「そんなこと言ってたら僕が禿を処刑するときにどれだけ気絶するんだろ?
もっとソフトなやり方考えなきゃダメ?」
「お前はいったいどんな……いや、説明しなくていい。
何となくだが、より怖がられそうだし」
酷いな、こんなかわいい子犬に向かって。
ちょっとムッとしたが、これ以上言葉を尽くしても無駄だろう。
「あ~、話を戻すけどコトロフ兄弟。
依頼人ぶちまけるか死ぬまで隠すか決めて。
なお、この場が最後のチャンスだから。
これ以上はどんな発言しようとこちらは聞かない。
どうする?」
「はっ!
何も言うことは無い!
お前は分からないだろうが、信義を捨てる奴は生きていけないんだよ!」
兄貴、カーフの方が偉そうに言い出すけどねぇ……。
「なら、禿は既に死んでなければいけないはずなんだけどねぇ?」
「はぁ?!
禿って……暗殺者のか?」
「あれ、気づかなかった?
隣にいるでしょ?
両手首両足首切り取られたゴミクズ」
動けず寝転がっている当人を見て引き攣った表情しているカーフ。
いや、だからなんでそんなビビってんの!
「待てよ、何でこの人いるの!
暗殺者の中でも一番危険な人じゃんかよ!」
「そうなの?
邪魔だったからボコって下手に動けないようにしといたんだけど。
まぁ、こいつもお前等と一緒に処刑されるんだけどさ」
なんかガクブルしてるけど……やっと僕らの実力を理解できたのかな?
というか、兄弟そろって僕にボコられてるのにまだ分かってなかったの?
そっちの方が怖いんだけどさ。
「んで、依頼人教えないでいいんだね?
んじゃ、次に会うのは処刑時だね。
では、陛下。
次の罪人への判決をお願いします」
「うむ、トリー、もしくは禿よ。
正しい名が分からぬから一応双方で呼ばせてもらおう。
そなたは王都の罪のない民や貴族を幾人も殺し尽くす。
それだけでは無く我や王妃の命まで狙う。
その行為、許せるものではない。
そなたは死刑とする。
処刑担当者はニフェール・ジーピン、よろしく頼む」
「かしこまりました、喜んで」
僕は礼儀正しく陛下にお辞儀すると……いやだからなんで騒ぐの?
ちょっと騒いでいる声を拾うと、「喜んで」って単語が気になる?
気にし過ぎだってのに。
今度は大人しいからあっさり次の……あれ?
大人しいじゃなく、殺気100%の視線をこっちに送ってきてた。
軽く笑顔で手を振ってあげると、暴れ始めてしまった。
なじぇ?
くだらない罵声をばらまいている禿は先行して牢に戻す。
まぁ、やかましいからねぇ。
そして最後の罪人、ディーマス侯爵たちが呼び出される。
「コロクタ・ディーマス侯爵。
そなたはトリー、もしくは禿と呼ばれる暗殺者。
これを我が参加する結婚式に送り込んだ。
その際に暗殺者とそなたの派閥の騎士に襲撃させ確実に亡き者にしようとした。
それ以外にも違法薬物製造の黒幕だったこともだな。
その行為、許せるものではない。
そなたは死刑とする」
コロクタが大騒ぎしているが、いやこれ必須だろ?
陛下を弑そうとしたんだから許されると思う方がおかしい。
「また、他の貴族派の者たちもディーマス侯爵に協力したこと許されぬ。
他の者たちも全員死刑とする。
ただし、そなたらの家族についてだ。
ディーマス家とルキミア家は嫡男が我らの調査に協力した。
それ故、男爵に降爵させた上で貴族として残す。
他貴族については奪爵とし、平民となる。
なお、処刑担当者はアゼル・ジーピン、よろしく頼む」
「かしこまりました」
この発言の直後、阿鼻叫喚としか言いようがない叫び声が謁見の間に響いた。
傍から見てるとジジイやオッサンの絶叫付き滂沱の涙って……見たくないな。
何と言うか……小汚さしか感じない?
「ニフェール、なんか物凄い失礼なこと考えてないか?」
「アゼル兄に失礼なことなんて考えてないよ?」
変な所でアゼル兄の反応があって驚いてしまった。
とりあえず裁判は終わりかな。
「今日は裁判だけだよね?
明日が午前中処刑で午後は?」
「そうだな、裁判が予想よりも早く終わったから今日は終わりだな。
明日の午後は……各貴族からの要請や地域全体の懸念点等の会議だな。
お前は午前中だけだろ。
流石に午後に参加させたら何言われるか分からんしな」
「だねぇ。
とりあえず、難癖付けて来る貴族いないか監視しておいて。
まぁ、何かあったらジャーヴィン侯爵が教えてくれるだろうけど念の為ね」
「分かった、まぁ明日の処刑見てわざわざ喧嘩売る奴は少ないと思うがな」
そんな話をしていると、両侯爵が声を掛けて来た。
なんだろ?
「アゼルにニフェール、ちょっと一緒に来てくれ。
明日の処刑予定について話し合いたい。
ついでにいくつか相談したいことがある」
「……何となく、後半の方がメインな気がするけど、かしこまりました。
あ、ちなみにこっそり聞いていたうちの部下たちって侯爵たちが呼んだ?」
「バレたか。
うちの家で相談を受けてな、カル達も気になったのだろう。
だから、見えづらい位置の部屋にいてもらって盗み聞きさせた。
ちなみにラーミルも参加させたぞ」
「ええ、そこはナットがラーミルさんにツッコミ入れるの聞こえました。
まぁ後で腹上死ネタで叱られそうですけど」
「そこはフォローしてやれん。
自分でどうにかするんだな。
一応あいつらも話し合いに参加させる。
その方がお前もやる気出るだろ?」
「そうですね、確実に!」
分かりやすくてスイマセン……だから、そんなに苦笑しないでください。
そんな話をしながら向かったのはジャーヴィン侯爵の執務室。
ラーミルさんたちも来ていた。
「あっ、ニフェール様来た!」
「おや、ナット。
裁判中に『そうだそうだ!』なんて言うのはいただけないなぁ?」
「え゛?
聞こえてたの?」
当然!
「まぁ、お前だけじゃなく他の面々の呟きも聞こえてたぞ?
謁見の間でちゃんと聞こえてたのはジーピン家の面々位だろうけどね。
多分禿には聞こえてないと思うが、気を付けろよ?
言いたくなる気持ちはよく理解できるがな」
「は~い。
あれ? ということはラーミル様は?」
「お前がラーミルさんに声かけたからいるのに気づいた。
でも、声は聞こえなかったよ」
チラッとラーミルさんを見ると、笑顔を向けられてしまった。
……怒り三割程交じってません?
えっと、後でちゃんとお詫びしますので!
具体的に言うとハグアンドキスで!
そんな煩悩に塗れた思考でいると、他の皆さんも集合し始めた。
最終的には両侯爵と騎士団長&副団長、ラクナ殿。
ジーピン家からはアゼル兄、カールラ姉様、マーニ兄、僕。
そしてラーミルさんとカル達。
「さて、明日の処刑についてだ。
と言っても処刑担当は決まっているんだから、順番位か?」
「そうですね、基本的にはアゼル兄の方を先にお願いします。
ちなみにどっちを先にする?」
ジャーヴィン侯爵の話に僕の方で答えたが、順序は当人に決めてもらおう。
「そうだな……まずは弟の方から対応しようか。
あいつは俺にとって一切無関係だから、さっさと済ませたい。
そして、兄の方で学園生時代の苛立ちを消し去ろうと思う。
で、そのまま侯爵たちを纏めて切り刻めばよかろう」
まぁ、そんな感じだろうねぇ。
ん~……。
「一応確認だけど、喋るのはカールラ姉様にお任せでいいんだね?
前回の様なおバカなことはもう起きないよね?」
前回の暴動関係者の処刑時のドタバタを思い出して確認する。
流石にあのやらかしはマズいと思ったのだろう。
アゼル兄もやらかさないこと宣言する。
……ホント?
念の為、チェック機構でも作っておくか。
「カールラ姉様、今日中にアゼル兄と話す内容と掛け合いパターンチェックして。
二度もあんなことされたくないから」
「分かったわ、任せといて!
これ以上ない位にチェックしとくから……夜に♡」
今夜、ベッドの上で熱烈指導が始まるんですね。
止めやしませんからきっちり理解させてくださればそれで結構です!
少しくらい寝不足でも仕事はちゃんとするでしょうし。
「ならそっちはお任せします。
で、その後僕が禿を処刑して終わりかな。
んで、どうやって消そうか……。
僕が無茶苦茶な行動するのを期待されてるような雰囲気があるんだけど?」
「いや、無茶はする必要は無いぞ?
とは言え、色々思う所もあろう。
これでアイツとの縁も切れるんだ。
言える範囲で罵ろうと構わん」
そう言って珍しく優しい視線でこちらを見るジャーヴィン侯爵。
まぁ……理由を分かってらっしゃるからねぇ。
「そうですね。
処刑時に使う手口として最近アンドリエ兄妹の時に使った手で行こうかと。
あの時はティッキィでしたが、今回はカル達四名にやらせます。
壁役は……騎士の方に協力頂けると助かります」
「マーニは……陛下の傍にいないとダメだな。
なら第二の面々に頼もうか。
カル達が二列に並べばビーティとメリッスなら四人とも隠せるだろ?」
まぁ、確かに大柄ですからねぇ。
二列ならカル達くらいなら隠せるでしょ。
「あ、ティッキィって禿と接点は?」
「無いな。
ダッシュとも可能な限り接点を持たないようにしてたからなぁ。
マギーさんの頃に仮にいたとしても、話をしたことも無い」
なら気にすることは無いか。
「なら禿への仕返しは特に無しってことで。
その分、ラーミルさんの護衛についておいて。
カル達は……あの時のティッキィと同じようにビーティ殿たちの後ろに隠れて。
合図したら禿に今までの色々な恨み辛みをぶつけてれやれ。
声は出すなよ?
ティッキィがやったようなジェスチャーとか……。
あ、アレがいいんじゃね?
カル達がたまに使ってる指で合図してたろ?」
「ジェスチャーはティッキィさんがやってた感じだな。
で、指で合図? ……あぁ!
ジジイから連絡受けたけど理解できなくてティッキィさんに翻訳頼んだ奴!」
いや、その通りなんだけどさ。
何と言うか、自分の無知を晒されているようで……。
いや、当然知ってる方がおかしいんだけどさ。
「はいはい分かった、あれね。
確かに禿もあれは知ってるから声に出さず伝わるはずだ。
んじゃ、俺たちはアレでアイツを煽っとくわ。
で、そのままニフェール様がトドメ刺すんだろ?」
「その予定だけど、トドメはちょっと検討中。
正直、アイツの背中からクロスボウで心臓撃ち抜いて終わらせようと考えてた。
だけど、皆さんの期待が予想以上に大きくて……」
「確かに期待というか、怯えられまくってたからなぁ。
で、期待には応えるのか?」
「可能な限りね。
とは言え、今更大したネタ追加なんてできないけどさ。
仕込む時間が足りなすぎるし」
あまり期待されてもねぇ。
「それと、この処刑が終わったら僕たちはパーティまで出番なしだよね?
ちなみにパーティ中の騎士側の体勢は?」
「予想通り、第三が愚痴って第一が憐れみつつ譲ってやった。
結果、予定通り中が第二、門が第七、ルートが第三、調理場が第五。
外が第一と第四、庭が第六。
一応第七のアミル隊長が部下がやらかさないか監視するとは言っている。
まぁ、当人も今更どうにかなるとは思ってなさそうだが……」
「まぁ、今までザルとしか言いようがないですから今更ですね。
でも、相手側が動きづらくなるのは助かりますよ」
監視が入ると分かった時点で予定を狂わせ安くなるだろうしね。
これで、騎士側の一通り準備は完了かな?
「……あれ、爵位の話とかっていつやるんだっけ?」
「パーティ当日だな。
その日の昼間帯にその話を行い、夜にパーティだ。
ちなみに、ジーピン家とノヴェール家は昼間帯も全員出席だぞ?
ベルハルトが陞爵するわけではないが、スホルム関連で声を掛けられるはず」
チアゼム侯爵が説明してくれるが……まぁ、そりゃそうか。
ベル兄様は被害者として一緒にいたけど成果を出したわけじゃないからなぁ。
ん~、となると僕の知り合いで参加しそうなのは……ストマたちくらい?
フェーリオ達は流石に参加できないだろうし。
あいつらも来年は修道院関連で関わるかもな。
「それまでに何か面倒そうなイベントってある?」
「処刑後は国としての話し合いだからなぁ……。
ここでお前等を呼ぶのは流石におかしすぎる。
なんで、これ以上は無いな」
なら明日の処刑方法でも検討しておくかな。
あ……その前にラーミルさんに謝罪と詫びハグと詫びキスしなければ。




