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21

 その後も確認したが元凶を教えてくれなかったので、話は終わりとなった。

 カーフ殿は視線が定まっていなかった。

 朧気(おぼろげ)ながら未来がどうなるか感づいたんだろう。


 まぁ、今更遅いけど。



「では次の裁判を始める。

 連れて来なさい」



 その言葉の後、連れてこられたのは……禿!

 両手首両足首の先が無くなっていることから歩くと言うより運ばれてきた。

 荷物みたいな感じだな。



 さて……。


 待ってたよ!

 お前をこの手で処罰するのを!!


 あの時の母上に泣きついた日!

 ラーミルさんの胸に泣きついた日!!


 あれを忘れることなんてできなかったよ。

 まぁ後者の場合、泣きついたこと自体は幸せだったがね。



 どうも、自分でも気づかずに笑顔になっていたようだ。

 なぜか僕のステキな笑顔を見て視線を逸らす人が続出。

 まぁ、女装できるくらいにカワイイ笑顔だからかな?



「……ル、ニフェール!」


「ん、どうしたのアゼル兄?」


「その『今から一緒に殴りに行こうか』って感じの笑顔止めろ。

 周りの方々が倒れかけてる」


「え……あら、これは失礼。

 ちょっと悦楽の感情が漏れてしまいましたか」



 皆さんに謝罪するが誰も目を合わせようとしない。

 悲しくなって両侯爵の方を向くと……一緒になって視線逸らしやがった!

 酷くね?



「……あ~、ニフェール。

 後は好きにやれ。

 だが今日は裁判だ、処刑は別の日だから忘れるな」


「はい♡!」



 おっと、ウキウキした感じが言葉にも出てきてしまったようだ。



「さて……一応確認だが、禿の呼称のままでいいか?

 それとも、トリーの方がお好みかな?」


「……何故知ってる?」



 へ?

 何言ってんの?



「ジャーヴィン侯爵家の結婚披露パーティでその名で大道芸やる予定だったろ?

 自分で登録したのに忘れたの?

 まぁ、偽名だろうとは思ってるけど」


「……そういえば、どうせできないんだからと登録してたな、忘れてたぜ。

 だが、あれには三名分の名前があったはずだ。

 他の名前だとは思わなかったのか?」


「お前が他の者の手下で動く?

 無理言うなよ、上司になった奴が胃を痛めるじゃないか。

 一切言うこと聞かない、スタンドプレーの塊。

 そんな奴と組みたがる奴はいないよ。

 なら代表となっていた名前がお前なんだろうと判断したんだが?」



 ……ねぇ、両侯爵?

 なんでそこで胃袋の辺りをさするの?

 この会話は僕のこと言ってるんじゃないんだよ?



「確かにな、俺を使いこなせる奴なんてどこにもいない。

 だから上になってやってるのにな」


「使いこなせるじゃなくて、使われる気が無いんだろ?

 加えて、我儘を通せない上なんていらないって感じだろ?

 そりゃ上の方だっていらないって言うだろうよ」


「はっ!

 実力つけてから言えばいいんじゃね?

 俺を従えさせる実力無い奴がいくら騒いでも戯言にしか聞こえんな!」


「僕はお前よりも強いけど、お前を使いたいとは思わんぞ?

 役立たずはいらん」




 ピ キ ッ




「役立たずだって?!

 どこがだよ!!」


「スタンドプレーの多さだな。

 勝手気ままに動かれて全体の方向性を無視するのなら只の邪魔だ。

 やること理解した上で期待以上の情報を持ち帰るとか?

 そこまでやれば目こぼしもできるが、どうせ殺すことに耽溺してるだけだろ?

 仕事できることと特殊性癖を満たすことはイコールじゃないからな?」



 文句言いたげだけど大体合っているから言えないって感じかな?



 だけど、何だろう。

 微かな声で「そうだそうだ!」とか聞こえるんだけど?

 この声の高さからすると……ナット?

 聞こえる位置からすると、こっそり覗いてるのか?

 まさか暗殺者ギルド総出で見物に来た?


 いや、いきなりカル達が駄々こねても許可は出辛いだろ。

 となると……ラーミルさん辺りがチアゼム侯爵にお願いしたのかな?



「第一、暗殺者って依頼の人物だけ(●●)を殺すのが仕事だろ?

 無関係の人物殺している時点で、終わってんじゃん。

 むしろ、暗殺シーンを他の人物に見られたって判断されるんじゃないの?」


「ぐっ……」


「加えてお前、その場にいる奴皆殺しとか好きだろ?

 殺し方に特徴あったら誰がやったかバレちゃうじゃん。

 そんな素人同然の行動取ってる癖になんで自分が実力者なんて思ったの?」



 なぜか「良く言った!」という声がかすかに聞こえる……多分カルだな。

 ったく、もっと声を潜めろよ……。



「第一、王都の広場でナイフのジャグリングする二人組と組んでたろ?

 確か今年の夏ごろにだったな。

 二人がジャグリングした後にお前が二人に向けてナイフ投げしてたよな?」


「……よく知ってるな?

 見てたのか?」


「婚約者とデートしてたらお前と残りの二人で大道芸をやってたなぁ。

 傍から見てて殺気丸出しで芸やってんだから怪しいとしか見えなかったがな。

 まぁ感づかない方もいるだろうけど、僕が見逃すはずないじゃん。

 残りの二人も恐怖を隠しきれてないし。

 それ見りゃヤバい事やってんのバレバレだよ」



 ……あれ?

 なんで唖然としてるの?

 というか、カリム?

 うっすら涙声で「マジキツかったんだからな!」とか言わない!

 僕の所までは聞こえてるからな?



「それにお前、夏頃にスティット家の二人を狙うために王宮に侵入してたろ?

 わざわざ潜入時にカツラまで用意して。

 でも調理場ではカツラ外して毒を混ぜた飲み物を侍女さんに渡したろ?

 それもディーマス家からの依頼か?」


「……お前、よく俺がやったって分かったな?」


「何バカ言ってんだ?

 この程度のこと気づかれないと思ったのか?

 その後の行動と合わせて考えたら一番可能性が高いのがお前だったんだよ。

 というか、この程度の事気づかないと思ったか?

 全ての騎士や騎士志望者が愚かなわけじゃないんだぞ?」



 まぁ、大半は……ねぇ?

 騎士団長視線逸らしてるし。



「はっ!

 お前が勘づいたからって他の騎士が愚か者ではないなんて言えないだろうが!」


「まぁ、なぁ。そりゃそうだ。

 でも、騎士団の一部は僕に伝手がある。

 そして、それを有効利用できるなら愚かとは言わんさ。

 それと、お前の場合運が悪かったのもあるな」


「……運?」



 運としか言いようがないんだけどね。



「僕が王宮と関わるようになったのが今年の初夏あたり。

 その前は王宮との接点は無かったからね。

 昨年だったらバレずにやれてたんだろうよ。

 でも、僕が動き始めてから失敗だらけじゃないの?

 違法薬物の件では拠点の一つが壊滅。

 その後アゼル兄の結婚式に襲撃したら僕らに壊滅させられた。

 そのまま追跡されて捕らわれてるんだから」


「はっ!

 薬物の件は俺はほぼ無関係だから知ったこっちゃねえな!

 結婚式の方は味方がもっと働けば勝ててた!!」




 はぁ?




「いや、無理だろ?

 あの程度の輩をいくら増やしても何の役にも立たんぞ?

 むしろ、何であの程度の奴らが使えると思ったんだ?

 それに、お前自身も弱すぎるだろうに……」


「何言ってやがる!

 俺が弱いだと?!」



 え゛? 気づいてないの?



「あの日お前は屋根の上から、僕は教会の庭から狙い合ったな?

 なぜ撃ち下ろしできるお前が僕に当てられない?

 なぜ撃ち上げる僕の矢が当たる?

 普通に考えてお前の方が有利じゃないの?」



 あ、黙っちゃった♪



「僕の方はお前より威力の強い武器を使わないと届かない。

 お前は僕より威力より精度を上げている武器でも十分届く。

 それなのに僕に当てられず、僕の矢を喰らって屋根から落ちた。

 これでお前が実力者だとは流石に言えんよ」


「……ぐぅ、がぁあああ!!」



 おやおや、暴れ始めちゃった。

 でも、手首も足首も無い身体だからまともに動けない。

 ……ルーシー、ボソッと「ざまぁ」なんて言うなよ。

 全部ジーピン家の面々には聞こえてるんだからな?



 結構な時間暴れていた。

 だが、やっと落ち着いたようで荒い息を吐きつつ睨みつけて来る。

 いや、睨まれても怖がる理由は一切ないんだけどね。


 そんなことを思っていると、大きく深呼吸して心を落ち着かせたようだ。

 なぜかにやけた顔になって訳の分からないことを言いだす禿。



「ああ……お前の煽りにキレちまったが、少し落ち着いたぜ。

 俺はここで処刑されるんだろうよ。

 だが、お前もいつまで生きていられるかな?」


「さぁねぇ……頑張り過ぎなければそれなりに生きていられると思うけど。

 ほら、僕若いから……婚約者とソウいうことになったら止められる自信ないし」


「腹上死想定してんじゃねえよ!」



 ……なぜか「ラーミル様、顔真っ赤ですよ」なんて声が聞こえるんだけど?

 多分ナットだよな?


 ラーミルさんいるの?

 いちゃうの?


 アゼル兄とマーニ兄を見ると、二人とも祈りのポーズをしてやがる。

 そっか……後で滅茶苦茶謝罪しないと……。


 まぁ、それは後での話。

 禿の方に集中しておくか。



「ソウ言う意味じゃなければどういう意味だ?」


「はっ!

 暗殺者ギルドは俺以外捕まってねえんだろ?

 ならお前は今後いつ後ろから刺されるか分からないまま生きていけ!

 俺の師匠もお前を狙うだろうさ!

 あの人は俺より容赦ない!

 お前が苦しむところが見えないのは悔しいが一生怯えて生きるがいい!!」



 え?



 お前の師匠って……ダッシュだよな?

 死んでるだろ?


 まさかお前、ダッシュ死んだの知らない?



「なぁ、一応確認なんだが……お前の師匠ってダッシュって奴で合ってるか?」


「……なぜ知ってる?」


「師弟関係自体は知らんよ。

 でも、ダッシュは死んだぞ?

 うちのアゼル兄が上下に切り分けてくれたからな」


「え……」



 あ、やっぱ知らなかったのか。

 あの時、お前は両手首両足首切られて騒いでたから気づかなかったのかな?



「ちなみにダッシュがやっていた酒場。

 あれって、暗殺者ギルドの窓口のようなものなんだろ?

 あそこで暗号言ったら話を聞いてもらえるって感じ」


「お、お前、何でそこまで知ってやがる!」


「色々伝手があるんだよ。

 確か……『クミスを一杯。それと鮑のソテー。デザートは桃を出してくれ』。

 暗号ってこんな感じだったよな?」



 なんか唖然としてるけど?



「一応言っておくと、調べた結果ってだけだからそんな唖然とするなよ。

 それと、同じ建物に暗殺者ギルドの本部みたいなのがあったな。

 わざわざディーマス家関連の依頼書だけ纏めておいてくれてたけど」


「はぁ?

 他の奴らの依頼とかは?」


「さぁなぁ、燃やしたんじゃね?

 その場には誰もいないから他のギルド員は捕えようがないしなぁ。

 そして、今までどこからも襲われてない。

 これって、お前見捨てて別の場所で環境再構築してるんじゃないのか?」



 実際はチアゼム家で再構築中ですけどね。



「……嘘だ」


「はぁ?」


「嘘だ! そんなはずはねぇ!

 俺抜きであのギルドを維持できるはずねえだろ!

 アイツら大して儲けだせない仕事しかしてねえ筈だ!

 金無いギルドを再構築して何するってんだ!!

 ディーマス家との伝手は俺がいなけりゃなにもできないだろうが!!」



 あぁ、自分が一番稼いでたんから自分を見捨てるはずがないとか言うのか?

 一番の邪魔者ならさっさと切るだろうに。



「何してんのかは知らないけど、ディーマス家との伝手は意味無いんじゃない?

 だってあの家の当主、お前の後に捕縛されてるし」


「はぁ?!」



 別の牢屋なのかな?

 声とか聞こえなかったのか?



「今日のこの裁判は複数の審議を行うんだけど、お前の次がディーマス家だよ?

 どうなるかは分からないけど、最低限あそこを財布として使うのは無理だよ。

 家が残るかも不明なのに」



 いや、残るように調整済みですけどね。

 お前にゃ言わないけどな。



「そんなわけで、お前の伝手を頼らずにやっていけるよう苦労してるんじゃない?

 まぁ、大道芸人は目立ち過ぎるからやらないかもしれないけどさ。

 それに、お前が必要なら普通助けに来ないか?

 一切探しに来て無いのなら、お前を見捨てた可能性高いと思うけど?」



 まぁ、真実は教えないけどね。

 でも、嫌われてるのは事実だからいいか♪



 おや? 黙っちゃった……って、あれ?

 なぜか目を爛々と輝かせて……どうした?




「おい、お前!

 俺を雇う気はないか?」




「はあっ?!」




 エ、ナニイッチャッテンノ?




「俺の様な実力者はそうそう落ちてないぞ?

 お前ができない裏の仕事を俺が面倒見てやろう!」


「どうやって?

 両手、両足使えないでしょ?」


「あ……」




 馬鹿かこいつは!

 自分の身体の状態も忘れてるのかよ!



 誰だ「哀れな……」なんて呟いたのは!

 この声はティッキィか?



「第一先ほど言ったでしょ?

 お前は役立たずだからいらんって。

 それなのに何で僕がお前を欲すると思ったの?

 お前がやるのはただ一つ、明日僕に処刑されるだけ。

 後はお前に何も期待してないから。

 くだらないこと言ってないで僕に殺されるのをウキウキしながら待ってな。

 ちゃんと殺してあげるから」


「ふっざけんな!

 お前に殺されるいわれなんて()ぇ!」


「あるぞ?」




 キョトンとする禿。

 まぁ、覚えてもいないんだろうとは思っていたけどさ。




「僕のクラスメートをお前が殺した。

 あの夜からお前を殺したくて仕方が無かったよ。

 やっとここまでたどり着いた」


「……あぁ、あの拠点ぶち壊されたときの雑魚か。

 あの二人の投げナイフ落としたのは凄かったがな。

 とは言え、あの程度の奴を殺された程度で恨むとはなぁ。

 心の狭い奴だぜ」



 禿が鼻で嗤いながら僕を煽る。

 でも――



「お前もその師匠も同様の雑魚だが?

 その程度の奴が殺され、見捨てられて嘘だなんだと騒ぐ奴よりマシじゃね?」



 僕も禿の雑魚っぷりを(あげつら)いこき下ろす。

 自分の表情が妖しい笑顔になっていってるのが分かる。


 こんなシーン、ラーミルさんには見せたくないなぁ……。

 愛想尽かされないようにしないと。


 僕と禿の視線がバッチバチにぶつかり合うこの場面。

 なぜか両侯爵や兄たちは……ホンワカしていた。


 いや、ちょっと待って?

 このシーン結構緊迫した場面だからね?



「はっ!

 俺を殺したら色々とディーマス家が関わった件を調べられないぜ?

 貴様ら如きが全ての罪を調べられるか?」


「へ? いや?

 面倒だし、そこまで苦労する価値も無いからねぇ。

 なんでわざわざこちらが苦労しなければならないんだ?

 アイツもお前も、そんな価値無いだろ」



 ……何ポカンとしてんだ?



「第一、先ほど少し話題になったと思うが……。

 暗殺者ギルドにお前の仕事だけ書類が残ってた。

 それ見るだけでも処刑確実だからなぁ。

 それ以上詳細調べても無駄だ」


「おいおい、ちゃんと調べねえのかよ!」


「何言ってやがるんだ?

 死刑以上の罪はないんだぞ?

 そして減刑もあり得ない。

 だから、これ以上調べても裁判や処刑には影響ない。

 ならそっちをさっさと済ませて被害者救済や仲間等はじっくり調べればいい。

 第一、一割も調べてない状態でも死刑確定なのに……。

 本気で時間の無駄だろ」



 何だよ、その思考放棄したような表情は?

 この程度のこと考えずに喧嘩売ってきたの?


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― 新着の感想 ―
何も成長していない(安西先生SS略) まあもともとがもともとだし牢屋に放り込まれても顧みる余裕もなかったかもな。 ただその無い両手足を見て何も思うことはないのかとは。
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