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ほぼ方針が決まり、解散となった。
なお、陛下にジーピン家暴走許可証を貰ったら持ってきてくれるそうだ。
ジャーヴィン侯爵をパシリに使うのも申し訳ないが、それが一番手っ取り早い。
代わりと言ってはなんだが、家族に周知は任されてしまった。
まぁ、これは僕がやるべきところだから文句は無いけどね。
「ニフェールさん、あまり無茶しないでくださいね?」
「現時点では説明する位ですので、苦労は無いですけどね。
暗殺話は既に知っているので、あっさり協力してくれそうですし。
まぁ、心配かけないよう気を付けます」
チアゼム侯爵家に移動しラーミルさん達を送る。
そしてカル達やロッティ姉様に状況説明をした。
まぁ、いつも通り呆れられたが。
なお、特に連絡は無し。
一応この後はジャーヴィン侯爵家にいることになること伝える。
その後、僕はジャーヴィン侯爵家へ。
ジーピン家関係者に先ほどの話を周知する。
「……面倒事に愛されてるねぇ」
「浮気と勘違いされたら婚約者が悲しむから勘弁してほしいんだけどねぇ」
母上の呆れた発言に悲しみの返答をする僕。
こちらとしても面倒事に巻き込まれたくは無いんだけどねぇ。
「とりあえず内容は分かった。
メンバーの振り分けも文句は無い。
というか、騎士を減らすか……。
予想外ではあるが、有効な手段ではあるな」
アゼル兄もこの手口には驚きと呆れが混ざってしまっていた。
まぁ、僕もこんな手口をよく思い付いたとは思うよ。
「多分、これバレたら騎士クビになるからねぇ。
本気で陛下の事狙ってるんだろうね」
「……一応、お前が本命だったパターンも考えとけよ?」
「そっちは問答無用で潰すだけだからなぁ。
むしろ本命のほうが動きやすいし。
アゼル兄が僕の立場になっても同じじゃない?」
「まぁ、確かになぁ」
だよね?
自分たちならどうにでもなるけど守るものがあると大変だし。
ちなみに、その日の夜にジャーヴィン侯爵が書類用意してくれていた。
陛下も即刻サインしてくれたらしい。
これは期待に応えてきっちり叩き潰さないといけないなぁ。
◇◇◇◇
「さて、お前等。
説明した通り、北部の暗殺者ギルドからの依頼で王都で仕事を行う。
準備はいいな?」
「まぁ、準備自体は出来てますが……この依頼、なんかおかしくないですか?
どう考えてもナリア様が許可出すとは思えないんですが……」
俺、オピエの指示に納得いってない部下が困惑しているようだ。
まぁ、実際ナリアは止めていたからなぁ。
そんな心配しなくてもちゃんと仕事して戻ってくるのに。
「大丈夫じゃねえの?
ナリアから王都側への手紙も貰ったし、サッサと行って手紙渡せばいいだけだ。
後は向こうにいるはずの依頼主と話せば済む。
それに、結構金になるからなぁ……」
最大編成を求める位だ、かなり金になるのは確定だな。
今回の報酬貰ったらナリアを誘って夕食でも…♡。
「……ナリア様がその時に何と言ったかこの場で説明できますかい?」
「なんだよ、そんなに俺が信用ならねえか?!」
「実際にナリア様が言ったことを都合よく解釈している気がしてるんでさ。
最悪、東部が王都から襲撃されてしまうのを懸念しておりやす……」
全く……そんなに怯えてどうすんだ。
北部だってそんな規則違反するはずないだろうに。
「大丈夫だって!
ナリアだってそんな話してなかったしな」
まぁ、嘘だけど。
「……へい、分かりやした」
まだなんか言いたそうだが、とりあえず引くことにしたようだ。
こいつ、慎重なのはいいんだけど、こういう時に使えねえんだよなぁ。
全く、もっと行けると思ったらウジウジしてないで突撃するんだよ。
こりゃ、こいつはまだ大事な仕事は任せらんねぇなぁ。
なぜかうちのギルド員からは結構評価されているってのが理解できねえんだが。
そんなこんなで王都に向かい、後三日程で到着するだろうという所。
途中の村でナリアの部下に出会った。
なんだ? 忘れ物でもあったか?
「いよぅ、どうしたんだこんなところで」
「オピエ様、お久しぶりです。
ナリア様の命で王都に向かってまして、これから戻る所です。
お会いできてちょうどよかった」
なんだ?
ナリアが今回の仕事のために手を貸してくれたのか?
いいねぇ、これはナリアに脈がでてきたか?
「簡単に申し上げます。
北部からの情報はほぼ嘘塗れでした」
「はぁ?!
何を言ってやがる?
なんだよ、その嘘塗れって」
話を聞くと、北部暗殺者ギルドが動けなくなった理由。
若手の暴走では無く、北部強盗ギルドの奴を暗殺者ギルドが王都に連れてった?
王都に許可を得ず?
なんだよそれ……。
「オピエ様、この件対応しようとしたら皆様は王都と東部から同時に狙われます。
王都に行くことを止める気はありませんが、この仕事は受けないで頂きたい。
ナリア様もそんなことになったら悲しみます!」
ぐっ……。
ナリアをダシにして俺を止めようというのか?
いや、確かにナリアも怪しがってたからここで戻るのも手だが……。
だけど、金がなぁ……結構な金貰えそうだしなぁ。
ナリアを飯に誘うにも金欲しいし……。
「一応言っておきますが、この件は冗談抜きで危険です。
そんなに東部が滅びるのを見たいのですか?!
貴方のやらかしによってナリア様が矢面に立ち苦しむのを見たいのですか?!」
「そ、そんなつもりはねぇよ。
だけど、一応王都に行ってあのババアに聞いてみてからだ」
時間稼ぎしておいてそこでこっそり仕事受けるだけ受けておくか。
ガチでヤバそうなら適当な理由を付けて止めりゃいいし。
「最後に、今回の処分対象。
この人物は王都のギルドと不戦協定を結んでいるそうです」
「はあぁ?!
なんじゃそりゃ?」
「噂では聞いていましたが、王都で暴動があったのはご存じで?」
あ~、そういやそんなことをナリアが言ってたな。
すぐに鎮圧したから大したこと無いと思ってたが。
「その暴動は王都の強盗ギルドが引き起こしたそうです
鎮圧したのがとある兄弟だそうです。
そして、その弟が今回の暗殺対象だそうです。
つまり、オピエ様たちは二人で強盗ギルドを壊滅できる輩。
そんな奴を暗殺することになります」
なんだよ、その化け物は?!
ガキに言うこと聞かせるための戯言じゃねえのか?
「そして、この不戦協定には王都のギルドの大半が参加しているそうです。
娼館・商業・生産・暗殺者・強盗の一部。
この状態で対象を狙ったら確実にオピエ様は王都で殺されます。
いや、既に監視されてても驚きませんがね」
俺が驚く!
というか冗談だろ、なんだよそれ。
「お気づきかと思いますが、オピエ様は竜の顎の中に入ろうとされてます。
このままでは咀嚼されて消えゆくのみ。
それはナリア様が喜ぶでしょうか? 違いますよね?
悲しむと思いますよ?」
ぐっ、妙に嫌な所でナリアの名前を出してきやがった……。
「どれだけの金があっても命と比べれば安いものです。
二度と会えなくなることより確実に次に繋がる行動を取りましょう?
ナリア様もそれを望んでいるからこそ事前に私どもを派遣したのですから。
それとも……ナリア様への想いはそんな程度だったので?」
「そ、そんな訳無いだろ!」
くっ、こっちの弱点をチクチク狙ってきやがって!
「なら、ナリア様を悲しませることの無きようお願い致します」
話し合いは終わったが……冗談だろ?
いくら何でも出来過ぎな話じゃねえのか?
とは言え、この情報無視して死地に向かう気は起こらねえしなぁ。
……そうだ!
王都の暗殺者ギルドにこの件一緒にやらねえか相談して……あ、ダメだ。
あいつら不戦協定とやらを結んでいるんだっけ。
え、これ、何とか回避して金だけ掠めるのは……無理か?
その後三日間、どうやったら金だけ貰えるか考えながら王都に向かった。
ちなみに、部下たちは……ナリアの部下から情報を聞いちまったようだ。
皆行くのを嫌がりやがった。
はぁ、こんなところで足止めされても困るんだがなぁ。
一応王都までは向かいババアに手紙を渡す必要があると伝えて進ませたが……。
この調子だと王都についても状況は変わらんか?
◇◇◇◇
「ふむ、暗殺者の長に強盗の長よ。
東部は話に乗ったか」
「ええ、娼館の長は不信感だらけでしたが、暗殺者の長が軽い奴だったんで」
わし、オステオ・テュモラーの問いに暗殺者の長ヘリンが答える。
多分、東部の長の頭の中が軽いのだろうな。
あの程度の情報でやる気になるとは余程だな。
「であれば、こちらは予定通りに王都に向かおうかのぅ。
それと、そなたらからも人を出せ。
東部の輩が単純に動くとは限らんからな」
「ちょ、ちょっとお待ちを!
侯爵様、以前申し上げましたが我々は王都に向かうことができません」
はぁ?
以前ということは、こいつらが犯罪者間の義理欠いたための罰じゃろ?
まだ許されんかったのか?
「一応娼館ギルドに圧力かけておいたのじゃが、未だに解除されぬか。
……娼館ギルド潰すかのぅ?」
そういうと、大慌てで止めようとする二人の長。
「いけません!
それをやったら各地域の暗殺者が貴方を狙います!」
なんだと?!
「一応申し上げますが、冗談とかじゃありませんよ?
本来娼館ギルドは力はありません。
腕力に期待できませんしね。
ですが、絶対に土地を移動しないということから各地域の代表となってます」
まぁそりゃそうだろう。
「ですが、その分各地域のギルドが娼館ギルドを守ることになってます。
そして、娼館ギルドを何者かが潰そうとしたら……。
他ギルド、もしくは他地域が協力してその原因を潰します。
それは平民、貴族、国王でも変わりません」
……本気か? 本気なのか?
とは言え、結構真面目な表情で説得しているし事実なのだろう。
「となると、娼館を締め上げても許可は下りんというわけか」
「その通りです。
それ故、我らが向かうことは不可能とご理解ください。
最低でも我ら二名はこの場で大人しくしているように見せかけないと」
ふむ……なら。
「であれば、そなたらの部下を派遣は出来んか?
もっと言うと、部下でも消していい類の輩だな。
あぁ、前回王都で捕まった奴らは除いてだ。
流石にそいつらは目立つからな」
「……我らの指示を無視して勝手に動いたと?
それにしてもそのような条件を満たす者がほぼおりません。
前回の王都に向かわせた者たちが条件を満たす者たちだったのですが……。
残るは使える者たちだけなので、これで消費するのは勘弁して頂きたい」
……ついてないのぅ。
「となると、派遣は出来んか……」
「目的にもよりますが……暗殺以外の希望があればまた考えられます。
具体的に言うと、毒使いとか?
基本補佐の為の派遣なら可能かと」
「……強盗の長よ、そちらは派遣は可能か?
暗殺をせよとは言わん。
軽く王都で暴れることは?」
「暗殺者側と同じですな。
切りたい者たちは前回既に使いました。
生き残った者たちは目立つので無理です。
ちなみに、東部だけでは足りないとお思いでしょうか?」
「いや、今回の建国祭パーティで可能な限り目的を遂げたい。
それ故にそなたらの最精鋭を派遣したかったのだ。
だが、それができぬと言うから東部まで頼らざるを得んかった。
とは言え、一切使ったことのない者たち。
実力が足りん可能性を否定できん。
だからこそ王都内で暴れさせて王宮の力を削いでおきたかったのだ。
パーティ会場の騎士共が減れば狙い易かろうと思ってな」
この手口はまだバレておらんから使えるはずだ。
「ちなみに、既に騎士共は一部動けないように準備を済ませておる。
我ら北部の者には他出身者に休暇を取らせて邪魔者がいないようにしてある。
故に、王宮への侵入は容易くなるはずだ。
加えて王都で火の手でも上がったらより騎士が減ると思っておる」
「……であれば、我らでは無く侯爵様の子飼いの方々でやった方がいいのでは?
他のギルドも王都で何かするのであれば向こうへの確認が必要です。
どれだけ手を考えても王都のギルドが邪魔なのですよ。
なら犯罪者を使わずに動いた方が早いと思いますよ?
第一、そのパーティまでの日数って間に合うんです?」
ふむ……確かにそれはあるな。
別に燃え広がり難い所に僅かな火を放つ位ならうちの下男でもできるだろう。
加えて、残り時間は僅かだし、こやつの提案に乗るしかないか。
人員が不足してたら……他の北部貴族の侍従や下男を集めて動けばよかろう。
「ふむ、それで行くか。
ではそろそろわしらも王都に出発する。
こちらにはメシロマがいるから、何かあればアイツに言うがいい」
大体準備完了か?
後は王都でどうなるかか。
わしの移動中に面倒なことが起きなきゃいいが……。




