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◇◇◇◇


「よぅ、ポズ」


「ティッキィ……お前、暇なのか?」


「んなわけねえだろ!」



 人を何だと思ってやがる!

 仕事しないプータローと一緒にすんな!



「単純に様子見だ。

 まぁ、街の中で何か情報無いか調査もしているがな」


「……お前が積極的に動くほどなのか?」


「そりゃあ、最悪の可能性を考えたらこれでも足りないかもしれないな」



 王家壊滅なんてなったらこの国大騒ぎだろうよ。



「面倒事関わりたくねえんだがなぁ」


「諦めろ、俺たちが望まなくてもスキップしながら近づいてくんだよ。

 追い払ってもやってくるってオプション付きでな」


「なんだよ、そのストーカー気質は!」



 知るかよ、俺たちだってウザったいと思ってるのに。



「そういや、薬師としてはどうなんだ?

 胃薬は売れてるのかもしれないが……」


「あぁ、こちらもちょいと偉そうな家の侍従が買ってるな」



 ジャーヴィン侯爵家かチアゼム侯爵家か……。

 騎士たちかもしれないな。

 やっぱりこいつニフェール様が欲しがられるわ。



「それと、気になる薬を作れてな。

 骨折した際に早く治ってくれそうだ。

 ヒビが入ったくらいまでなら、ただ固定するより確実に早く治る」


「はぁ?

 それ、無茶苦茶重要な薬じゃないのか?」



 骨折れても明日には治ってるなんて言ったら皆買うだろ?

 特に力仕事関連の奴ら。

 あ、騎士とかもそうか。



「勘違いしていそうだが、劇的に早く治るとかじゃないぞ?

 一日で骨折完治なんて無いからな?

 それを使うことで骨を直そうとする力が加速するって感じだな。

 普通なら三ヶ月かかりそうなら一月半程度になるとかだな」


「いや、それでも(すげ)えよ!

 え、どうやって見つけたんだ?」



 そう聞くと……おい、なんだ、その反応は?



「いや、実は……幾つか薬草と毒草を混ぜたら偶然……」



 ポズらしいと言うべきなのか?



「ちょッと待て、偶然できた毒か薬か分からんものをどうやって確認したんだよ」


「元々、馬車にひき殺されかけた犬がいてな。

 ついでにちょっと実験体として使ってみたんだ。

 そしたら、想定以上に骨が折れたりヒビ入ったりしてたのが早く治ってな。

 正直俺も驚いているんだ」



 ……え?

 もしかして死にかけた犬を実験に使って、運良く生きてたってことか?

 確かに有効かもしれないが、怖えなコイツ。



「ちなみに、早く治るのを把握した後に骨にヒビ入って苦しんでるガキがいてな。

 そいつにも試してやったら予想通り早く治って喜ばれてるよ。

 なぜか薬を使用中は怯えられたがな」



 は? 何言ってやがる?

 あぁ、怪しい薬だと怖がられたのか?



「……ちなみに、骨の治療を早める以外の影響は?」


「現時点では無いな。

 ……あぁ、毒草が入ってるからビビってんのか。

 毒草は少量だけ、ほぼ薬草だよ。

 普通に使われてる薬でも量を間違えたら毒になるしな」



 ……使える薬ではある。

 とてつもなく有効だ。

 これ、後日ニフェール様に教えるか。



「ちなみに一日どのくらい服用するんだ?」


「服用? あぁ、違うぞ?

 これは塗り薬だ。

 ヒビ入った骨に直接塗ってやるんだ」




 え゛?

 ちょ、ちょっと待て?




「まさか、犬もガキも骨にヒビ入ったり折れたりしたところをナイフで()(さば)く?

 そして手を突っ込んでその薬を塗る?」


「そうそう、その通り。

 怖いかもしれんが、実績はそれなりにあるからな!」



 その実績って二人……一人と一匹だけじゃねえのか?



「……ニフェール様に伝えるのは止めとくか」


「おいおい、むしろ伝えておいてくれよ。

 噂通りなら戦う可能性高そうなんだろ?

 なら治療時間が短くなるのはむしろありがたがられるんじゃねえの?」


「骨に直接塗るのは誰も想定して無かったろうよ!

 というか、試してみたガキがビビり倒したのも使い方だろ?!

 ……ちなみに偶然できたと言ってたな。

 本来の目的はどんな薬を想定してたんだ?」



 そう聞くと、モジモジしながら小声で答えて来た。



「元は関節が痛む奴らに売りつける薬ができないか考えてたんだ。

 年寄共が大喜びで買うだろうしな」



 あぁ、年取ると痛むらしいな。

 俺はまだだがね。



「だが、うまくいかなくてな。

 で、先程の犬の話で適当に骨に塗ってみたら関節どころか骨折に効いちまった。

 正直、笑うしかなかったよ」


「まぁ、なぁ。

 だが、どちらにしてもその薬は売れねえだろ。

 どうせ、関節の薬として期待通りだったとしても、骨に直接塗るんだろ?

 ジジババ共がそんなの喜んで買うはずねえだろうが!」



 そんなの使いそうな奴なんて……まさか大旦那様に大奥様?

 いや、まさかだよなぁ……なぁ?



 取りあえず患者側の常識をコンコンと説明していく。

 身体を切るのは常人には受け入れられないこと。

 やるなら皮膚に塗るなり飲み薬にするなりしないと怖がられること。


 理解できたかは不明だがな。



◇◇◇◇


「ニフェール様、東部の暗殺者が到着しました。

 暗殺者ギルドと合同で顔合わせするとピロヘース様がおっしゃってたそうです」



 カリムの連絡をジャーヴィン侯爵家で受けた僕は急ぎチアゼム家へ。

 そこで化粧して傷を消しカルと一緒に娼館ギルドへ。



「カル、基本はお前が話してくれ。

 僕が積極的に話すのはおかしいからな」


「まぁ、そこは任せろ。

 基本は東部の奴らが止まるように説得するって感じだろ?

 後は相手がどこまで愚かかだしな」


「こちらを舐めてたら説得なんか耳に入らないだろ。

 その時は消すしかないけどな」



 二人で今後の対策を話し合っていると到着。

 黒服に案内されたところは応接室。



「ババア、こいつが東部の奴か?」


「ああ、で、改めてオピエ。

 説明してくれるかい?

 ちなみにナリアから報告は貰っているが、それを踏まえた上で説明しておくれ。

 それによって話し合いか処刑か決まるから」



 は?……え、もしかして?

 チラッとオピエの方を見ると、物凄い視線があちこちに動きまくっている。

 これ、かなりろくでもないこと考えてたな?

 それと、ナリアとやらに弱み握られて……違うな、うちのカルとルーシー?

 いや、それならもう少し……。


 長々と悩んだ後、一通り北部からの情報を吐いた。

 あぁ、やっぱり北部に踊らされてるんだなぁ。



「正直に言ったぞ、ババア。

 後は王都で動いていいんだろ?」


「んなわけあるかい!

 そこまで理解しておいてなぜ許可が出ると思った?」


「何言ってやがる!

 客の依頼に答えない暗殺者なんて価値ねえだろうがよ!」


「ギルドの約束事も守れない暗殺者も存在価値無いねぇ……」



 あぁあぁ、二人で罵声の浴びせ合いしてるけど……。

 トレマ殿にシフィル嬢、フォローしないの?

 チラッと見ると、二人とも微かに首を振る。


 諦めてるのか、面倒だから関わりたくないのか。

 半々かなぁ。



「まず、どこが理解できんのじゃ?

 ギルドの規則上、今回のような依頼方法は認められない。

 やるなら北部が自分で来るのが筋だろうに」


「それは知ってる!

 だが、あいつ等が動けないから協力を――」


「――動けない理由は東部のメッセンジャーから聞いているんじゃないのかい?

 北部に騙されているだけだよ。

 アイツらの長、ヘリンと強盗の長、モリー。

 その二人が部下に説明もせずに王都で暴れてこいと指示したからだ。

 そんな馬鹿なことをした奴らに協力する?

 東部のギルドが規則を破るのに賛成と言ってると受け取るがいいのかえ?」


「……」



 黙ってしまった。

 まぁ、自分の発言で東部のギルドが他地域から襲われると考えたらなぁ。

 普通は否定するだろ?



「お主にも理解できるように言ってやろう。

 今回の依頼について王都での行動を禁ずる。

 とは言え、流石に今日これから東部に帰るのは無理だろう。

 明日中に王都から出ていくがいい。

 明後日以降、居残っているのを見つけたら……処刑する」


「はっ!

 俺たちを消すって?

 どうやって?

 俺たちを追うことすらできんだろうが!」



 チラッと婆さんとカルと見ると頷かれてしまった。



「お前等じゃ俺たちを捕ま――」




 ス ッ




 ト ン ッ




 ガ ク ッ !



 音も無く傍に移動し、首筋を手刀で叩き気絶させる。

 何故だろう、カルが怯えているのは。

 お前にはやらんぞ?

 仮にやるとしたら……ルーシーからヤるから落とせと頼まれた時くらいだ。



「ニフェール様、殺したのか?」


「いや、気絶させただけ。

 多分、誰が何やったかも理解できてないはずだよ」


「これだけでも危険すぎだねぇ。

 こんなの見せつけられて敵対する気にはならんよ」


「でも、結構いるんですよ?

 蛮勇としか言いようのない人物って」


「そう言うのとはあんまり友達にはなりたくないねぇ」



 とりあえず、こいつ落としたけどどうしようかねぇ。

 あ、そうだ!



「婆さん、こいつの部下っているんでしょ?

 まともに話通じそう?」


「どうだろうねぇ、

 オピエしか話して無いから判断付かないよ」


「なら、脅しておこうか?

 ここで話した内容一通り説明してこいつを止めてもらいましょう。

 また、こいつを止める努力をしてくれるのなら命は取らないとも」



 呆れるカル、婆さんは……思考中か?



「ニフェール、もしかして部下たちを味方にするつもりかい?」


「ええ、正直オピエの面倒見るのが大変なので、部下たちに任せたいなと。

 こちらに協力させて、大人しく東部に帰ってもらった方がお互いの為ですし」


「……やってみるかね。

 そいつはそこに置いておきな。

 こっちだ」



 案内されて向かったところは待合室的な感じ?

 応接室からすると家具とかのランクが落ちてる感じがする。


 ノックして扉を開けるとだらけていたのが一瞬で戦闘態勢に変わる。

 ほぅ、まともな部下じゃないか。



「失礼、僕は王都の暗殺者ギルドの者でニフィと申します。

 東部の暗殺者の方々で合ってますか?」



 自己紹介すると、少し落ち着いたのか戦闘態勢を解除していく。

 まぁ、あの長が何言い出すか不安だったのかもしれないな。



「あぁ、その通りだ。

 お前さんが来たのは何故だい?」


「別に僕だけが来たわけじゃないんですけどね。

 あ、こちら王都の娼館ギルドの長、ピロヘース様。

 それと暗殺者ギルドの長、カル様です」




 ザ ワ ッ !




 まぁ、長を放置しておいて王都の長たちが来たんだから驚いて当然だな。

 落ち着かせるためにもこちらで説明しておくか。



「驚くのは分かります。

 なぜこちらに長の方々が来られたのかこれから説明します」



 そう言って、先ほどの長同士の話し合いでオピエがやらかしたことを説明する。

 一斉に頭抱え始めたのを見る限り、こいつらはまともそうだな。



「えっと、今のリアクションからするとオピエ殿がやらかすのは想定範囲内?」


「範囲内というか……もしかしてやらかすかもとは思ってたがな。

 正直、マジでやらかすとは思ってなかった。

 一応自分たちとしては、北部の依頼には裏があると思っていた。

 東部娼館ギルドのナリア様も同じ判断をしていたことは伝令から聞いた」



 あ、あの伝令は殺されなかったんだ。

 それはよかった。



「ということは、オピエ殿以外は東部に帰るのは賛成?」


「あぁ。

 どう考えても怪しすぎる依頼だから手を引きたいんだよ。

 とは言え、長が乗り気なんでな……」


「……なんでそんなに乗り気なのか分かる?」


「推測だが、ナリア様にいいとこ見せたいんだろうな。

 怪しい行動をしている際の指針がそれに集約されるんだよ」



 はぁ……。



「ちなみに、過去にナリア様が喜んだ率は?」


「知ってる限りでは全く無い。

 多分、異性として見られてない可能性が高いな。

 人の言うこと聞かないクソガキ扱いされてる気がするぜ」



 そういうタイプね。

 でもなぁ、そうなると



「もしかしてナリア様が嫌がったり否定したりしても捻じ曲げて考える?」


「……そうだな、優先順位が間違ってるんだろう。

 本来ナリア様が喜ぶことを最優先にすればいいんだがなぁ。

 ナリア様に喜んでもらう為に自分が考えた手段を推し進めるんだ。

 それが相手が喜んでないことに気づいてないのか知ったこっちゃないのか。

 どっちかは分からんがね」


「うっわぁ、メンドクセェ」



 え~、これどうしよう。

 説得かなり難しいんだけど?



「確認ですが、大人しく東部に帰ろうと説得できる自信あります?」


「既に説得したが、ピロヘース様に手紙を渡す必要があるとか言い出した。

 次は依頼主に合わないのは筋が通らないとかか?

 そして報酬額を聞いて残るとか言い出すんだろうなぁ……」


「あぁ、ありえそう……」



 どうしようかなぁ……。

 この人たちにどのような形で協力してもらおうか。



「ちょっと確認だけど、皆さんは王都と戦いたく無いということで合ってる?」


「そりゃそうだ。

 生き延びれるかは分からんが、わざわざ死にに行きたくはねえよ」


「でも、あちらはそれに従いそうにない。

 なら選択肢は

 一、オピエ殿置いて皆で即刻東部に帰る。

 二、タイミングをずらして、暗殺直前の日に東部に帰る。

 三、オピエ殿と共に玉砕。

 こんなところかなぁ」


「はぁ?!」



 いや、そこまで驚かなくても……。



「……とりあえず言いたいことは分かる。

 三番は最悪の未来ってことだろ?

 一番と二番は俺たちが危険を回避するパターン。

 だが……長を連れて帰るのは出来ないか?」


「そちらで説得できるのなら可能だよ?

 こちらは既に説得して、一切納得してなかったけど?」



 そう言うと頭を抱える部下たち。

 それ出来るのならこちらだってやってるって。



「……今、気絶させてるんだろ?

 その状態で縛って連れて行くとかできないか?」


「縛るだけならできるよ?

 連れて行くって、どうやって王都を出るの?

 多分こっち来るのに馬車使ってないんでしょ?

 目立ち過ぎて仕方ないと思うんだけど?

 馬に縛りつけた状態で城門越える方法教えて?」


「出来ねえよ、そんなの!!

 なんかないのか? 城門通らずに王都から外に出る方法は!」



 チラッとカルを見るが、首を横に振られた。

 そりゃ無いか。



「まぁ、夜中に城門に登って城壁駆け下りれば行けるとは思うけど……。

 馬置いて行くことになるだろうし、止めた方がいいと思うよ?」



 僕は出来るけど?

 あ、マーニ兄も出来るね。



「そういう人外の行動を期待すんなっての!

 つまり、長を気絶させて東部に連れ帰る手段は無いと」


「そうだね、なのでやるとしたら置いて行くくらいしかないかと。

 もしくは、皆で一斉に腹痛になる?」


「なんだよそのガキが嫌な仕事したくない時の言い訳みたいなのは!

 ……あんな長でも見捨てる気はねえよ。

 アンタたちとは争いたくないけどな」



 忠義に厚いと言うべきなのか?

 でも、選択肢としてはアウトなんだがなぁ。

 個人的には殺したくない……東部の暗殺者ギルドが弱体化しそうだし。



「ねぇ、確認なんだけど?

 オピエ殿と一緒に死にたい訳ではないよね?

 留まって欲しいと思ってるんだよね?」


「そうだ、死んでほしくはないな。

 そして、俺たちも死にたくない」


「でも、王都側の言い分は理解できるよね?」


「まぁなぁ、だからこそ留まらせたいんだけどなぁ」


「最後、本当に最悪の場合、いくら説得してもオピエ殿が話を聞かなかった場合。

 この時、あなたたちはどうするの?

 一緒に死にたい?

 それとも生き延びたい?」


「……」



 どっち選んでもいいよ?

 処刑は担当してあげる。

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